護衛を拒む男・4
若い。
それだけで舐められる。ギルドのランクも制限される。
ライちゃんの実力は、宮廷魔術師たちにも劣らない。寧ろ勝っているというのに、年がいっていないだけで下に見られる。
「(あぁ。そういう人って沢山いるよね)」
でも、ドランツ殿の意見には納得だ。
私もBランクだが、Aランクには実力が足りずにBランクに収まっている、と思われているのだろう。まぁ、私やライちゃんが規格外で、Aランクになるには年齢制限が足りずに、というよりも、ギルド側も予想外だったのだろう。
まさか、この年でAランクの称号を与える存在がいるとは。
けれどこれはギルド側の意見であって、それを態々表に出すような事はしない。私やライちゃんが舐められて絡まれるのも、その程度の事は自力で解決してほしい。
解決出来ないなら、それだけの存在だと値踏みされるだけ。
だからBランクであろうとAランクであろうと、ギルドからの評価は変わらない。私達の実力を正しく評価が出来ている、とは言えないけど。
なんといっても、私は全てのカードを見せていない。それはライちゃんも同じだ。私とライちゃんの間には何の隠し事もないけどね。幼い頃から、2人で肩を寄せ合って生きてきたのだ。
そんな私とライちゃんだからこそ、隠し事なんて何もない。
だからこそなのか。ライちゃんへの評価にはちょっと不満だったりもする。言っても仕方ない事だけど。
そしてドランツ殿も、他の人間と変わらずにライちゃんに対して、全うな評価を下していない。それにはちょっと腹がたつ。若いから。ランクが低いから。
魔術師や召喚師はお金を使うだけで、たいした成果はあげられない。
他のと同類だと、ドランツ殿が言う。
それには、腹がたつのだ。その気持ちはわからなくもないけど、ライちゃんまで同類扱いされてにっこりと笑える程私の心は広くない。
まぁ、Aランクであろうとも、ドランツ殿には関係ないのかもしれないけど。
なんといっても、ギルドというものが分かっていない。
だからこその発言なのだ。
やはり若いというのはネックになっている。頭を悩ませると同時に、冷えていく。冷静になりながらドランツ殿を見上げた。
真っ直ぐな瞳。
強い光を宿し、強烈な意志を放っている。
仮にJランクの証明書を作ってもらった所で、ドランツ殿には通用しないだろう。彼は、魔術師や召喚師というものを全く信用していない。
ランクの最高位はJだが、表向きはSになっている。だから、Jの意味はわからないだろうし、それ以前の話だ。Jは切り札だが、それはギルドが把握する事であって、国に対しての把握は求めていない。
ギルドの切り札。
それがJランクだ。
私とライちゃんはJ候補。
というか、Jランク決定。ギルドからは手放してなるものか、という必死な思いを感じ取るが、それに縛られるつもりはない。
さて。
ランクも魔法も何も知らないドランツ殿にどう信用してもらおうか。
手っ取り早いのは、タイマンで瞬殺する事だが、護衛相手を瞬殺するのは些か問題があるだろう。しかし、人を全く見ていない猪突猛進なドランツ殿。
エィちゃんの存在に気付くなら良かったが、それすらもわからないらしい。
エィちゃんは小さいドラゴンパピーだから、簡単に捕獲出来ると思われているのかもしれないけど。元々持っていたカードに宿っていたドラゴンの子供で、その実力はとりあえずドランツ殿を瞬殺出来るレベルには余裕で達しているのだけど、小さいからそうは思われていないし、擬態をしているから見抜け、という方が無理なのだ。
ディリィエットが旦那さんを見つけてきて、エィちゃんが生まれた。今は旦那も私と契約をして、異空間で家族仲良く暮らしている。子供には激甘だけど、ちゃんと訓練はつけている。
そんじょそこらの人間如きに指一本触れさせてなるものか。そんなディリィエットの思惑は召喚師としての意志の疎通でわかっている。エィちゃんは遊びのつもりで修行しているのだが、高レベルなディリィエットの子供だからなのか。如何なく親を超える勢いでレベルが上がっていってるのだ。
遺伝子って凄い。
まぁ、あそこの家庭はディリィエットを中心に回っているが。嫁さんが一番の権力者。夫婦仲は良いようなので、私から言う事はない。
「信用を得るのは難しいみたいですね」
色々と思考が脱線したが、そんな言葉を口にしてみる。
「自分1人で帰った方がいい──と思っていますか?」
召喚獣を護衛につけて帰っても、余裕で帰宅は出来るけど言わないでおく。
「勿論だ!」
何も知らないドランツ殿は、迷わず頷く。うん。この手のタイプは、実際実力を見せないと納得をしてくれない。そう判断をくだし、私は次の言葉を考える。
「……わかりました。王国までは私達も一緒に行きますが、使えないと思った時点でドーファ殿に伝えて下さい。その時点でクビという事で、依頼料はいりません」
私の言葉に思う事があったのか、右手の拳を口元に当てて考え込むドランツ殿。それは瞬くほどの時間で、次の瞬間には口角を上げて笑いだした。
「そこまでの自信があるのか」
どうやら、そっちに思考がいったらしい。
どれだけがめついと思われているのだろうか。ギルドは。
「自信がなければ、護衛の仕事は請けません。
そしてギルドが個人に話を持っていく事もありません。
けれど、その仕事ぶりがドランツ殿から見て未熟であったのなら、そう仰ってください。ただ、それだけの事です」
ここで時間を潰すのは勿体無い。
早くに出て、城まで送っていきたい。リラから話が回ってきた時点で、厄介な依頼である事は間違いないのだから。
そこまで言って、漸くドランツ殿は納得したらしい。
「わかった。行こう。だが、俺は勝手にいくだけで守るつもりはない。自分の身ぐらいは守れるのだろうな?」
それだけ言うのならば。
そう、ドランツ殿の眼差しが言っていた。
随分と自分に自信のある人だ。
ライちゃんとつい比べてしまう程度には、ブラコンの自覚がある。これは正当な評価でもあるけど。
そして納得してくれて良かった。
これ以上渋るようなら、お互いのレベルを見せ合って精神的に瞬殺するつもりだったし。そしたら有無を言わさずにつれていけるしね。
短気を見せる前に納得してくれて良かった。
私の心情がわかったのか、リラは苦笑し、ライちゃんは微笑ましげな眼差しをドランツ殿に向けていた。
……どういう意味の微笑ましい眼差しなのか。
とりあえず考えるのは止めておこう。なんといっても、私がブラコンであるように、ライちゃんはシスコンなのだ。私と同じような事を考えるのは仕方ないのだ。




