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coclea  作者: 国見炯
12/22

獣・1




 イアルさんの視線を振り切り、転送陣に足を踏み入れた。陣がひかれた場所はテントの中。予想通り安全地帯への転送だった。


 辺り一帯には結界を張っているのだろう。魔物の声は一切聞こえない。


「んー。結構距離があるね」


 


 リルクに送った召喚獣の気配を辿ると、10km程離れている。


 予想以上の距離がある。つまり、余程の魔物が出てきたのかもしれない。中型ぐらいなら、1Km程はなれた場所に結界を張る。


「どのぐらい?」


「10Kmぐらいかな」


「離れているね」


 ライちゃんが机の上に置いてあった書類を手に取る。後続隊が来た時の為に、ある程度の書類はテントの中に置いてある場合が多い。


 今回は私の召喚獣をリルクの影に潜ませたから、そこから探る事も可能だったけど…。


「うん。魔物はどんなの?」


 書類を手に取っているライちゃんに聞いてみる。


「黒の魔獣だって。大型」



「へぇ。大型なんだ。黒の魔獣って魔界でも稀少なんじゃなかったっけか」


 人界に出てくる魔物は、種類を問わずに退治しても良い事になっているけど、黒の魔獣は稀少過ぎる。


 強いし、捕獲は難しいから退治をするという選択を選ぶ冒険者が多い。とは思うんだけどね。


「召喚獣にすれば役立つんだろうけど」


「まぁ、大型のわんこだしね」


 ルルとリルは聖獣の部類に属する。


 大きさは随分と違うけど、純粋な強さだけでいうとルルとリルの方が強い。レベルの差もあるだろうけど。


「カードにも余裕があるから、なるべくなら生け捕りにしたいね」


「うん」


 ライちゃんの言葉に頷く。


 魔獣にとって、人界は毒素が強いらしく、稀に狂う事があるのだ。魔界で人界に行く事は禁止されているけど、その辺りは一部の人間や魔族によって、度々やぶられる。


 珍しくはないのだ。


 珍しい獣は、ペットとして飼われる事もある。


 そういう場合は狂わないように檻に結界を張り、毒素が入り込まないように細心の注意が払われる──らしい。そして魔獣と、人界に存在する魔物は全くの別物になる。


 魔獣は魔界に属し、魔物は人界で生まれる。毒素が溜まり、形を成すか、動物が変異するか。


 何パターンもの魔物がいるが、その殆どは毒素が命を持って形を成した魔物が多い。


 魔とついていても、それは魔界の生物ではないのだ。


 魔獣の魔物化は、ペットとして飼われていた魔獣が捨てられたり狂ったりする。今回の黒の魔獣は、ペットとして人界に持ち込まれた可能性が高い。


 元々魔獣は知識が高く、魔物化してしまった場合は退治するのに苦労する。召喚師が使役してしまえば、召喚師との繋がりにより、狂う事はない。仮に狂っていても、浄化されて理性を取り戻す。


 ただ、魔獣のレベルにもよるが、黒の魔獣クラスを使役出来る召喚師の数は減っているため、やはりギルドの総意で退治される事の方が多い。



「ライちゃん。繋がりがあった場合、どこからか読んでもらってもいい?」


 ペットとして魔獣を飼う事は基本禁止されている。


 それをやぶってペットとして飼っているなら、ただの違法者だ。飼う、という事が許可されるといえば、やはり召喚師になるか、召喚師を雇うか。それか国の許可を取るというパターンしかない。国の許可を取れれば、魔獣と契約を結ばせてくれるらしい。


 とは言っても、魔獣にも心を寄せてもらわなくてはいけないので、その許可がおりたという話は聞いた事がない。


 魔獣の方が人間よりも魔力が高く、優れている為、弱い人間に飼われる事を嫌がるのだ。



「わかった。探ってみるよ」


「うん。お願いね」


 仮に今回の魔獣が飼われていた場合、他の魔獣を飼っている可能性が高い。繋がりはただの気休め程度ではっきりは見えないけど、ライちゃんならどんなに細く切れそうな繋がりでも読んで、進入して元を辿る事が出来る。


 チートなライちゃん万歳だ。



「結構多きいね」


「どのぐらい?」


「3mぐらいかな」


「ふぅん……大きいんだね。違法の可能性の方が高いかな」


「そうだと思う」


 黒の魔獣は知能が高く、縄張りを魔界と決めているのか人界には出てこない。しかも今回の大きさは3m。黒の魔獣なら生まれてから100年は経っているんじゃないだろうか。


「自尊心を傷つけられているっぽいね」


 先に送った召喚獣と瞳を共有し、現場の様子を探る。こんなに強い黒の魔獣を捕まえられるという事は、魔界でもそれなりの存在が関わっているのかもしれない。


 大問題に発展しそう……。


 出来れば穏便に済むように。


 そう思わずにはいられない。





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