ダンジョンでの出会い
やって来たのは、暗い空の広がる沈黙に包まれた灰色の星だった。
「本当にここなの?」
飛行する宇宙艇をゆっくりと操縦しながら運転席の窓からノースは地上を見下ろしていた。見渡す限り住んでいる者や動いている者の姿は見えなかった。灰色の岩と砂の荒地が広がるだけの世界だ。
ゲトーはちらしを見ながら地上を見下ろす。
「この辺りで受付をやっているはずなんだがな。お、あそこのようだぞ」
ゲトーはそこへ降りていく。ノースも後を追って宇宙艇を下していった。
そこにはテントとのぼりが立っていた。のぼりにはらくらくレベルアップが出来るダンジョン入場受付はこちらと書いてある。なるほどここで間違いないようだ。
宇宙艇を適当な所で降ろしたノースはゲトーの後をついて歩いていく。
テントの下には横長のテーブルが一つあり、そこにパイプ椅子に座ってゆったりとしたローブをまとった占い師風の格好の少女が待っていた。少女はまだ若いと推測出来る。口元を薄いヴェールで隠し、帽子の下から覗く瞳でゲトーとノースを見つめた。
「よくぞこの地を訪れた。さらなる高みを目指す者達よ」
受付の少女は厳かさを演出したような声で話しかけてくる。ゲトーは気さくに応じた。
「楽々レベルアップ出来るダンジョンがあると聞いたんだが、ここかい?」
「いかにもだ。だが、ダンジョンはここにはあってここにはない場所にある」
「? どういう意味だ?」
「この鍵を受け取るがよい」
少女が差し出してきた二本の鍵をゲトーとノースはそれぞれに受け取った。一見したところ普通の鍵のように見える。少女は厳かに説明する。
「その鍵には次元を超える偉大なる神の力が宿っている。お前達が望めばいつどこからでもダンジョンに行くことが出来るだろう。ダンジョンでは神の意思によって4人で1組のパーティーが自動的に決定される。その4人でダンジョンを進み、最奥にある神秘の宝石を手に入れるのだ。さすればお前達は楽々レベルアップ出来るであろう」
「なるほど、そういうことなら早速行くか!」
ゲトーはその鍵を天にかざした。彼の体が光に包まれて消えていく。
「あ、わたしも。楽々レベルアップさせてください! お願いします!」
ノースも願い、その体は別の次元にあるダンジョンへと運ばれていった。
ノースは気が付くと石で造られたダンジョンの中にいた。壁も床も天井も綺麗な平面で四角く構成された一目で人工的に用意されたと分かるダンジョンだった。
壁に置かれた松明が辺りを照らし出している。先の方は暗くてよく見えない。
「ここで楽々レベルアップを……」
ダンジョンは静かでひんやりとしている。いきなり全く知らない場所に来て、ノースは緊張で体が震え出すのを止められなかった。
それでも意を決し、一歩を歩こうとしたその時。背後から肩に何者かの手が置かれた。
「うきゃああああああああ!!」
ノースは飛び上がって驚き、壁際まで走り寄って振り返った。そこに立っていたのはゲトーだった。手を止めたまま少し呆気に取られたような顔をしている。
「そう叫ぶなよ。お前ってそんな怖がりな性格だったか?」
「い、いきなり肩に手を置かれたら、だ、誰だってびっくりするわよう!」
「そうか。悪かったな」
言い合う二人の元にさらなる二人の足音が近づいてきて立ち止まった。ノースとゲトーはそちらを見る。暗がりから現れたのは一人の気の強そうな少女と一人の怪し気な黒づくめの呪術師だった。
「こんにちは。いえ、今はこんばんはなのかしら。あなた達がわたしと楽々レベルアップを伴にする残り二人ってことなのかしら」
茜色の制服を着、オレンジの長い髪をしたお嬢様風の少女が声を掛けてくる。もう一人の銀の仮面で顔を覆い隠した黒いローブの呪術師はただ黙ってその後ろに立っていた。
「わたしはエイリス。こちらはミレージアさんとおっしゃるそうです。あなた達の名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「ノ……ノースです!」
久しぶりに目にする他人を前にして、ノースは緊張して慌ててしまった。
「落ち着けよ、ノース。俺はゲトーだ」
「ふーん」
エイリスの瞳が何かを値踏みするかのように二人を見る。
「わたしの見たところ、あなた達はお友達なのでしょうか」
「ああ、そうだ」
「わたし達はカオスギャラクシアン様配下のレギオンなのよ」
ゲトーとノースの返事に、エイリスは興味無さそうに反応しただけだった。
「聞いたことありませんわね。ま、邪魔にならない程度の実力者ならば何でもいいですけれど」
「なっ」
反射的に食ってかかろうとするノースをゲトーが止める。そして、彼は代わりに言った。
「そっちこそ俺達の足を引っ張らないでくれよな」
「フッ、では、行きましょうか」
「行くって?」
ノースの質問にエイリスは不敵に笑って答えた。
「楽々レベルアップへ。わたし達はここへ無駄な話をしに来たわけではないのですからね」
そして、ダンジョンを奥へと進む冒険が始まった。




