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キサエルとレギオン旅立ちの日  作者: けろよん
サトラ襲来

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14/18

宇宙の追跡者

「ノース、そろそろ楽々レベルアップの成果を見せてはくれませんか?」


 平穏な宇宙を飛ぶ白い巨大宇宙船の中の部屋。

 キサエルはたびたびノースのレベルアップした力を見たいと話しかけてきていた。

 しかし、ノースにはまだ自信が無かった。キサエルの大きな期待を感じると楽々レベルアップなんて無かったと言うわけにもいかず、多少強くなった気はしても期待に答えられるほどの大きな成果を見せられるかどうかも分からず、はぐらかす日々が続いていた。

 その日もノースははぐらかした。


「いえ、今はちょっと。敵もいませんし」

「誰か適当なものが住んでいる星を探して、そこに宇宙船を下ろしてもいいんですよ」

「いえ、わたしなんかのためにそこまでお手数をかけてもらうわけにはいきません!」

「そうですか? では、その気になったら言ってください」

「はい……」


 キサエルと別れ、ノースは窓の外に広がる宇宙を見つめた。


「いっそ、本当に敵が攻めてこないかしら」


 そう思い。すぐにそう思ったことを恥じた。

 

「キサエル様を危険にさらすようなことを望むなんてどうかしている。力かあ。本当にそんな物があればなあ」


 そして、呟いていた。



 クトロアフは召喚に成功した。ダンジョンに来ていた者が恐れていた人物、六魔将の一人サトラ。それはどれほど強く恐ろしい人物なのだろうか。

 次元の門が閉じて光が収まり、現れた人物は開口一番こう言った。


「地底帝国六魔将の一人サトラで~す。今日はお招きくださりありがとうございました。きゃる~ん」


 可愛いポーズを決めた妙に明るいノリのちびっこい少女だった。大きなパッチリとした目が印象的な可愛らしい彼女は頭をなでて愛でるにはいいかもしれないが、強いという印象とは全くかけ離れた存在だった。

 クトロアフは自分が間違った人物を召喚したのかと思ってしまった。

 そんなことを思っているとサトラの顔から笑みが消え、可愛いポーズを解いて真顔になった。


「こういうノリ駄目な人だったんだ。いや、人でなく神様か。神様はわたしの力をお疑いなのでしょうか」


 一転して不遜な態度となったサトラにクトロアフは息を飲んでいた。彼女に底の知れない何かを感じていた。これが人の強さというものなのだろうか。サトラは何かを納得したようだった。


「人の強さか。そうびびんなくてもいいですよ、神様。あなたはわたしを招いてくださった主催なのですから。エイリスがわたしを強い奴だと紹介してくださったのですね」

「あ……ああ」


 なぜそのことが分かったのだろうか。サトラはこちらが説明するまでもなくすぐに状況を掴んでくる。彼女の目に見つめられるとまるで心の奥が見透かされるようだった。サトラは花のある笑顔になって微笑んだ。


「では、エイリスと一緒にいたそいつらをぶちのめしに行きましょう。それが神様の屈辱を晴らし、人の強さを知るための一番の近道というものですわ。宇宙を飛ぶ能力を手に入れられたのですね。羨ましい力です。それを使えばきっとひとっとびですわ」

「うむ、では行くぞ!」


 クトロアフは翼を作り、その能力をサトラにも与えた。

 宇宙へと飛び立つ。次元と空間に働きかける能力に長けた次元の神は、一度戦った近くにいる敵の姿ならすぐに捉えられる。

 宇宙を並んで飛びながらサトラは喜びの表情を見せていた。


「わたし感激です。地上のさらに上にこんな世界があったなんて初めて知りました。連れてきてくださりありがとうございます、神様」

 

 礼を言われて悪い気はしない。クトロアフは自分が良い奴を召喚したと思った。

 


 敵の接近をキサエルは船の装置から察知していた。

 手元に表示させたパネルを操作し、スクリーンに外の景色を映し出す。知らない二人組が宇宙を飛んで近づいてきていた。キサエルは都合のいい相手が来たと思った。

 船のレーザーを発射することはせず、近くの手頃な星に船を降ろすことを選択する。あれと戦う者はここにいる。レーザーで焼き払う選択は始めから無かった。


「ノース、ゲトー、来てください」


 呼び出すと忠実な部下の二人はすぐに来てくれた。


「キサエル様、お呼びでしょうか」

「はい、あれを見てください。敵が攻めてきたんです」


 キサエルがスクリーンを示す。ノースとゲトーもそれを見た。宇宙を二つの人影が追いかけてきていた。片方は知らない人間だったが、もう片方はこの前倒したはずの次元の神だった。

 クトロアフは冷気を放って宇宙船にぶつけてきた。それはバリアで簡単に防がれる。


「ノースの技に似ていますね」


 キサエルが呟く。ノースは身の縮む思いだった。よりによって自分の技でキサエルの宇宙船が攻撃を受けるなんてあまりにも恐れおおい事態だった。

 ゲトーは二人が使っている宇宙を飛ぶ能力がこの前ダンジョンで見たクトロアフがゲトーの能力を映しとって使っているものだと気が付いた。ならばその相手は自分がするしかありえなかった。


「俺が宇宙へ行ってあいつらを片づけてきましょう。この前行ったダンジョンで倒した相手です。造作もありません!」


 そんなゲトーの力強い言葉をキサエルはあっさりと断った。


「いいえ、これから近くの星に宇宙船を降ろしますからあなた達はそこで戦ってください。ノース、戦えますよね?」

「は……はい!」

 

 そう言われてはノースには断るわけにはいかなくなった。ゲトーはノースとキサエルの間の不思議な空気を訝しんだが、


「船のカメラで録画をしておきますから、ばっちりとかっこいい戦いをしてきてくださいね」


 と敬愛するキサエルににこやかに言われては、戦いに全力で気合いを入れるしかなくなってしまった。



 星に降りていく宇宙船を見て、サトラはクトロアフにそれ以上の攻撃を止めさせた。


「なぜ止める?」

「奴らは地上で戦うつもりなのでしょう。神様はこれ以上手を下す必要はありませんわ。人より偉い神様はどうか高みより人の強さをご覧になっていてください」

「そうか。では、この戦いお前に任せよう」

「はいっ」


 クトロアフは傍観を決め込んだ。サトラは離れて星に向かっていった。

 サトラにとっては神の都合などどうでもよかった。エイリスと仲良くしていた連中をいじめてやるのが何よりの楽しみだった。

 ダンジョンでともに戦って良い気分になっているあいつにその仲間達をめっためたにしてやったと報告してやったらどんな顔を見せてくれるだろうか。いっそ黙ってあいつを観察して一人で笑ってやるのもいいかもしれない。サトラは笑いがこみあげてくるのを抑え切れなかった。

 神などという余計な邪魔はいらない。状況が自分の望むように動いていることを確信して、サトラは地上に降りて行った。

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