第77話「ピアノアレルギー事件」
私は弱気だった。
最近、ピアノが苦手になった人が増えていて、それがあまりにも急に増えすぎていたから、、私とラフマのピアノ作曲と演奏の「エキスパートピアノ音楽学校」が
「霊界最大最高の音楽学校」になるという夢を果たせないではないかと。
私はとても心配していた。
現にエキスパートピアノでは生徒が100人ほど、、ピアノの音が急に嫌いになって、退学届を出してしまったからだ。
ラフマはおかしいと嘆いていた。
原因が全くわからない。急にピアノが嫌いになったりするか?100人近くが急に。
絶対にありえない。
何か裏があるんではないか。
私は疑ったから、
地球圏霊界最高責任者の「シナメルド様」に相談してみたら、
「ピアノ嫌悪調査委員会」というものを設置してくれることになった。
探偵を10名集め、調査するというものだが、その委員会が設置されてからというもの、
今日で1か月になるが、全くこれといった収穫がない。
どうしたものか。
私はこの摩訶不思議な出来事に頭をかしげるばかりだった。
ラフマとの共演コンサートも中止になった。
まずはピアノ嫌悪事件の解決が最優先だからだ。
なので、いきなりピアノの音が嫌いになり、退学した生徒を全員集めて、
私とラフマで調査することにした。
100人ほど聞き取り調査をした。
「最近、ピアノが嫌いになる前に変わったことをしませんでしたか?ピアノが嫌いになったのは何が原因だと思いますか?ピアノが嫌いになる直前にしたことを教えてください!」
この調査をした結果、
「生命データ更新プログラム」
を受けた直後にピアノが嫌いになり始めていた。
ほぼ全員が。
「生命データ更新に原因が必ずあるに違いない!これを調査委員会に報告するぞ!」
ラフマは強気でそういった。
確かに。
しかし、うかつにこの結論を私たちが手にしたことを知って、それを仕掛けたやつ?がいたら?証拠隠滅とかしそうだよな……
とか疑ってしまって、この結論を公にすることは控えた。
「シナメルド様」にのみ、生命データ更新プログラムが怪しいとと伝え、その更新の手続きの過程を調査してほしいと密かに頼んだ。
「つまり、これはわしの失態ということか?」
「いえ、そういうわけでは……」
シナメルドの怖そうな顔つきで私はひるみながら答える。
「ピアノを急に嫌いになった人の100人全員がこの霊界役所で行う生命更新プログラムを受けた直後に、ピアノを嫌いになっています。ほぼ、確実に、プログラムにより、ピアノ嫌悪事件が起きたのだと推測されます」
「そんなことはない。わしの生命更新プログラムについてはしっかりと管理している。ショパンは誤解をしている!」
「シナメルド様!いくらなんでもプログラムを受けた直後から、全員がピアノを嫌いになっているんです。音を聞くと、気分が悪くなる!このままでは俺たちはピアノで生きていくことができなくなってしまう。どうか、協力して、調査してください!お願いします!」
「しかし、ショパンは生命更新プログラムを受けても、ピアノを嫌いにならなかったじゃないか。ラフマニノフもだ。全員というわけではないみたいじゃないか。生命更新プログラムを受けないと、この霊界に住むことができなくなってしまう。全員が受けなくてはならない。それはわかっているね?たとえ、プログラムに問題があったとしても、受けることを辞めることは許されない!」
シナメルドはなかなか頑固だった。
「保身のためですか?」
ラフマがついにキレて、爆弾発言した。
「生命更新プログラムが原因で、ピアノの音が嫌いになるようなことが起きていたとすれば、自分の身が危ない。霊界最高責任者として顔が立たない。だからこそ、調査を渋るんですね?」
「そういうわけでは……」
シナメルドもとぼけてしまった。
「わしにも訳がわからんのだ。なぜ、プログラムを受けた直後にピアノアレルギーが発病するか。なにか陰謀を感じる。しかし、私の立場では、プログラムが原因でそうなったとすれば、私の失態として、管理不足として、責任を取らされる。それがつらいのだ!」
「誠実を大事にするシナメルドがなんということだ!! 私たちはお互い何があっても、、力を合わせて乗り越える友達になろうって言ったじゃないか!! あれは口だけだったのか??」
シナメルドにラフマニノフが嘆く。
「生命更新プログラムを管理し、細工できる立場にある人は誰ですか?まず、プログラムを更新するために使う装置を調べましょう!そこに何かウイルスとか、なにか痕跡があるはず!その証拠を押さえたいのです!」
私はどうしても犯人を許せなかった。
「お願いします!! 協力してください!! 俺らはシナメルドが協力するというまで、、ずっとしつこくつきまとうからな!! 頼む!! シナメルド!!」
ラフマはプライドを捨てて頭を下げてシナメルドに頼み込んだ。。
「わかった!! そうだな。わしとしたことが、自分の保身のために、道を誤っていたような気がする。口だけ野郎には絶対になりたくない!! すまなかった。。よし、では、全力で調査に協力しよう!わしの権限をすべて使ってな!」
霊界役所の「生命更新プログラム課」を予告なしに、いきなり訪れた。
私、ラフマニノフ、シナメルドの3人は、
いきなり「更新装置」を調査した。
また、シナメルドの権限で、この更新装置を細工できる立場にある全員を強制的に拘束し、取り調べた。
しかし、結果は……
「くそ!! どういうこと!! !更新装置も正常だったし、細工できる立場にある者も全く不審なところがない!」
ラフマニノフが憤った。
「完全にお手上げ状態だ。シナメルド様、申し訳ございませんでした!」
私は頭を下げ、謝罪した。
「わしの責任ではなかったのだから、お前たちには悪いが、ホッとしている」
「じゃあ、なんでいきなりたくさんの人がピアノを嫌いになったんだろう!」
謎は深まるばかりだった。
しかし、ひょんなことから事件は解決に向かう。
私とラフマのもとに一枚の投書が送られてきた。
そこには
「ピアノアレルギーをこれ以上、増やしたくなければ、エキスパートピアノを閉校しろ!」
と書かれていた。
最近、エキスパートピアノを強制的に退学させられた一人の生徒がいた。
「スクレル・バキージュ」
学校内でいじめを行った主犯格だ。
彼は注意してもいじめをやめなかったために、私が退学させたのだ。
彼は字が下手くそで、特徴的な筆跡をしていて、すぐに彼のだと分かった。
私はスクレル・バキージュに会った。
連絡先は在校時から変わってなかった。
「お前だな?? ピアノアレルギー事件の犯人は?」
「なんでわかった??」
「筆跡が下手な字で特徴的ですぐにお前だとわかったよ!」
「そうだよね。まあ、それはあなたの記憶力とひらめきを試した、わざとしたことだけどね!」
なんとあっさりと白状した。
「どうやってみんなをピアノアレルギーにしたんだ?どういう手段で?」
「簡単だよ!学校にあるひとつのピアノに呪いをかけたんだ。そのピアノを弾くだけで、呪いがかかるんだよ!」
「呪い?どうやったらそんなもの生み出せるんだ?」
「教えてやってもいいけど条件がある。エキスパートピアノを閉校することだ!これ以上、ピアノを嫌いになる未来ある人たちを増やしたくないならね!」
「おい!お前!なぜ、そんなひどいことをするんだ?俺たちがどれだけピアノの発展と貢献に魂をかけているかわかっているくせに!!!」
ラフマが叫んだ!
「どうする?ピアノの呪いをかけた方法を教えてやるから、エキスパートピアノを閉校しな!閉校してくれたら、もう、呪いはかけない。お前らの大好きなピアノという生きがいを奪い取ってやるよ!閉校しないなら、今度は、さらにたくさんの人たちに呪いをかけてやるよ!」
「呪い?本当にそんなものがあるはずがない!私はだまされないよ!」
私はそういって笑顔を見せた。
「なに?」
「本当のことを言ったらどうだ?実はもう調査は済んでいるんだ!」
「なんのことだ?」
「ショパン!どういうことだ?」
ラフマが不思議そうな顔してる。
「スクレル・バキージュ!お前はエキスパートピアノを退学した100人全員をすでに初めから買収していたんだよな!その100人を入学前からな。そして、買収した彼らをエキスパートピアノに入学させて、いきなりピアノの音が嫌いになったからって嘘の理由を故意に作り、退学させた。すべて、お前の演出だったんだ。その理由は、エキスパートピアノの評判を悪くして、潰すためだったんだろ?」
「よく調べられたな!! 褒めてやろう!! 俺様はピアノが下手だった。才能がなかった。だから、お前ら天才たちが憎いんだよ!だから、そんな天才たちの学校なんて消えてなくなってしまってほしかったんだよ!!!」
「バキージュ!!!」
ラフマが彼を思い切り殴って、スクレル・バキージュは転倒した。
「お前!ただの逆恨みじゃないか!!!最低だな!!!」
ラフマは発狂した。
「天才で何もかも与えられているお前らに、、俺の報われない悔しい気持ちが分かる訳ねえだろ!!」
スクレル・バキージュも発狂し、、叫んだ。
「ラフマ!! 落ち着けよ!! もう、バキージュの好きなようにはならない!!!」
「なんだと?」
バキージュは動揺の表情を見せた。
「エキスパートピアノは潰れない!100人も買収できたのは、その100人は全員、バキージュの部下だったからだ!だから、音楽的素養のない素人ばかり100人がいきなり同時期に入学してきた理由が今、やっとわかったんだよ。エキスパートピアノはピアノを愛する人ならできるかぎり誰でも入学を許している、始まって数年の学校だからね。でも、それがうまく利用されたんだよ!それに、生命データ更新プログラムをした直前にピアノが嫌いになったように見せかけて、プロブラム自体に原因があるように仕向けたのもわかっている」
「そうか、バレていたのか。そこまでバレていたなら、もうしょうがない!! でも、法には触れてないから、逮捕させることはできない!ただの嫌がらせだからね」
「そうか、ではどうするんだ?ショパン?この大バカ者は!」
「これからエキスパートピアノに入学してくる全員が、バキージュの部下じゃないかって調べたり、証明することは至難の業だ。それに、エキスパートピアノの評判はこのままでは落ちまくる一方で、大変なことになる!」
「そうだよ!俺様は法には触れてないよ。ただの嫌がらせだからね。厳重注意くらいで済みそうだ!ハハハ!」
「だから、私は今から、こいつをこの霊界から強制追放させることにする!」
「なんだと?そんなことお前ごときにできるわけないだろ?これからも嫌がらせしてやるからな!」
「いや、それは無理だ!スクレル・バキージュ!」
いきなりドアから出てきたのは、シナメルドだった。
「これから君は火星に強制追放し、30年間、、この地球圏霊界に足を踏み入れてはならない!!
30年後、、また同じ事したら、、更に30年追加だ。。」
「何様だお前!そんな法律どこにあるんだ?お前が王様じゃあるまいし!!!」
「私は霊界最高責任者のシナメルドという者だ。法律は私が決める。たった今、私がこの嫌がらせ防止条例を施行する!」
シナメルド様はスクレル・バキージュに新しい法律が書いてある紙を見せた。
「なにーー!! こんなじじいがあの霊界トップのシナメルドだとーー!!」
スクレルは一気に絶望の叫びを上げた。
「シナメルド様。いらしていたんですか?聞いていたんですか?」
ラフマが驚いた様子を見せた。
「当たり前だ!わしはいつまでたってもこの霊界の責任者だからな!お前たちが心配だったのだ。それより、、『様』はつけないでくれ。。『シナメルド』でいい。呼び捨てのタメ口がいい。敬語では距離を感じて嫌なんだ!!」
「シナメルド!! ありがとな!!」
ラフマニノフはタメ口で言った。
「反則だーー!! ズルいぞ!! シナメルドと知り合いだったなんてーー!!」
こうして、スクレル・バキージュとその部下100人たちは火星へと強制追放された。
「ショパン!お前、いつの間にスクレル・バキージュの調査を済ませていたんだ?」
ラフマが私に質問してきた。
「それは秘密だよ!君のご想像にお任せするよ!私だってピアノを守るためならなんだってやるさ!!!」
「頼もしくなったな!ショパン!!! それより表宇宙の神のミヤザワトモヒデや、裏宇宙の神のアイザム・メトロン、、地球圏霊界のトップのシナメルド、、こんな超大物と通じていた俺たちはスケールがデカいバディだな!!」
こうして、ピアノ嫌悪事件は解決した。




