第71話「イチョウの木と少年」
ショパンは近くの公園にいた。
彼はベンチに座り、とても美しい黄色いイチョウの木を見ていた。
この辺りで一番大きな高さのイチョウの木で、公園の真ん中に生えている。
癒されるために定期的に通っていた公園だった。
ある少年がそのイチョウの木を両手で抱きしめて、話しかけていた。
ショパンは少年を後ろから同じように抱きしめ、
「イチョウの木に何を話してたの?」と聞いた。
少年はいきなりショパンに抱きしめられて、驚いて、ショパンをはねのけた。
「この木はただのイチョウの木じゃないんだよ!」
「わかった!何か事情があるんだね?僕が相談相手になってあげるから!!!」
ショパンは少年の話を聞いた。
少年の話によると、公園のすぐ隣の病院に入院している時に、夜、このイチョウの木が、少年を窓から覗いていたらしい。
目と鼻と口をつけて。
確かにイチョウの木なのに顔があったという。
少年は病院の5階に入院していたから、5階の高さのイチョウの木と言えば、この木しかなくて、それでこのイチョウの木の正体を暴こうとしていたのだ。
「いいかい、少年。イチョウの木だって、そこにただ立っているだけじゃなくて、動き回りたいときもあるんだよ」
「このイチョウの木は化け物なのかな?目も鼻も口もあったんだよ?おかしいなあ!」
「きっと君がいつもこの公園で遊んでいたから、何しているのか気になったんじゃないかな?君はいつもこのイチョウの木に祈りを毎日、捧げていたじゃないか!病院の入院している人たちの病気が、早く治りますようにって!」
「でも、なんで僕が入院しているのを知っているの?イチョウの木が?」
「君がいきなり公園に遊びに来なくなったのは、この公園で足を怪我したからだよね。僕も見ていたよ!ベンチに座りながら、君をいつも見ていたんだよ!だから、病院に入院しているんじゃないかって思ったんだよ。このイチョウ君が」
「このイチョウの木。夜、動いて回っているのかな?また会えるかな?」
「また、会いたいのかい?」
「ただの夢じゃなかった。確かに病室のベッドの上で、このイチョウの木が窓から覗いているのをこの目で見たんだ!でも、もう退院してしまったから……」
「きっと、このイチョウはみんなに夢を与えてるんだよ。動くイチョウが会いに来たってなんか夢がないかい?」
「確かに、僕はこのイチョウの木が会いに来てくれたような気がして、嬉しかったです!でも、もう会えないのかもしれません。夜に何度も隠れて、見張ってましたが、このイチョウの木は動きませんでした。カメラもつけて、確認しましたが、結局、何も起きませんでした!」
「あのイチョウの木が現れた夜は、ちょうどクリスマスだったよね」
「なんで、クリスマスの日って知ってるんですか?」
「イチョウの木に聞いたんだよ!僕はこの木と会話ができるんだ!心の中でね。テレパシーさ!」
「じゃあ、やっぱり、この木だったんだね。また、会いたいって伝えてよ!!!会いたいよ!!!」
「残念だけど、それは無理だと言ってるよ!このイチョウの木は一生に一度だけ、自由に歩ける時間が設けられるんだけど、その機会は、君が寂しそうにしていたから、、わざわざ君にクリスマスプレゼントとして、その一生に一度の、動く機会を君に会いに来るために使ったと言ってるよ!」
「そんな!そんな大事なチャンスを僕のために使ったくれたなんて!!!とても大事な瞬間だったはずなのに!!!」
「それは、君がこのイチョウの木にずっとみんなのことを祈っていたから、その祈りは全てこのイチョウの木に通じていて、君を喜ばせたいと心から思えたからなんだって!君がみんなのために祈ったその力で、いつもより早く病気が治った人がたくさんいたんだって!」
「イチョウさん!!!ありがとう。つらい病院生活、イチョウさんが会いに来てくれたあの夜の日から、僕は魔法にかかって、苦しみが和らいだんだ。ありがとう。イチョウさん!」
少年は涙を流して、イチョウの木を抱きしめて離さなかった!




