第9話:蘇我氏本家、ログアウト。~炎上する屋敷と、約束の答え~
「……うわ、マジ燃えてんじゃん」
入鹿の死から一夜明け、飛鳥の空は黒い煙に包まれていた。
入鹿の親父さんである蘇我蝦夷が、自分の屋敷に火を放ったんだ。
現代風に言えば、「親会社が倒産(本家滅亡)して、社長が自ら全データをシュレッダー(自害)にかけてる」状態。
「……あの煙の中に、日本の歴史書(天皇記・国記)が全部入ってるんだよな」
軍師・鎌足が、苦い顔でその炎を見つめていた。
「貴重なバックアップ(歴史資料)まで燃えちゃうなんて、歴史オタクの俺としては「もったいねー!」としか言いようがない。」
鎌足がジダンダを踏んで悔しがる。
「ま、なんとかなる……っつーか、これで本当に蘇我氏の時代は終わったんだな」
俺が呆然としていると、背後から足音がした。
「海斗さん……! ご無事で、本当によかった……!」
振り返ると、そこには謎の美少女がいた。
彼女の瞳には涙が浮かんでいる。俺が無事だったのが、そんなに嬉しかったのかよ。反則だろ、その顔。
「あ、これ。お守りのおかげで、なんとかなったわ。ありがとな」
俺が組紐を差し出すと、彼女はそれを優しく握り直し、少しだけ顔を赤らめた。
「約束……でしたね。私の名前は、車持娘と申します」
「……クラモチノイラツメ?」
聞いたことない名前だけど、なんだか気品があって、それでいて響きが可愛い。
「海斗さん。これからこの国は、新しく生まれ変わる(アプデされる)のですね。中大兄様や鎌足様が作ろうとしている『新しい日本』。私、それを見てみたいです。あなたと一緒に」
「……あー、もう。そんなこと言われたら、現代に帰りたくなくなっちゃうじゃん」
16歳の夏。
クーデター(乙巳の変)は成功し、俺には守るべきヒロインができた。
でも、ここからが本当の「大化の改新」の始まりなんだ。
【今回の学習ポイント:蘇我本家の滅亡】
蘇我蝦夷の自害: 入鹿の父・蝦夷は、息子が殺されたことを知り、自分の屋敷に火を放って亡くなった。
焼失した歴史書: この時、聖徳太子たちが編纂した『天皇記』や『国記』という超重要資料がほとんど燃えてしまった。まさに日本史上最大の「データ消失事故」なんだ。
蘇我氏のその後: 全滅したわけではなく、今回味方した石川麻呂などの分家は、新政府の重役として生き残ったぞ。




