第5話:政略結婚は突然に。~蘇我氏の専務を口説き落とせ!~
「……いや、ここ、敵の本拠地じゃん。ガードマン(衛士)の目、怖すぎなんだけど」
俺たちがやってきたのは、蘇我石川麻呂の屋敷。
中大兄のプリンスと鎌足は平然としてるけど、俺はビビりまくりだ。
「石川麻呂殿。単刀直入に言う。入鹿の独走を許せば、蘇我氏そのものが滅びる。俺たちと組んで、日本をリブランディング(新体制構築)しないか?」
鎌足のトークが冴えわたる。
対する石川麻呂は、強面の顔をさらに険しくして沈黙を守っている。現代で言えば、「ライバル社からの引き抜き交渉を、会議室でじっと受けている専務」の図だ。
「……話はわかった。だが、口約束だけでは信じられん。もし失敗すれば、俺の首もリアルに飛ぶのだからな」
石川麻呂の言葉に、鎌足はニヤリと笑って、中大兄皇子の背中をポンと叩いた。
「わかってますよ。だから、これはどうです?」
「えっ?」
俺と皇子の声が重なった。鎌足の提案はこうだ。
『石川麻呂の娘を、中大兄皇子の嫁にする』
「これで俺たちは身内、いわばパートナー(親戚)だ。裏切る理由、ないっしょ?(政略結婚)」
鎌足の強引なマッチング(縁談)に、皇子は顔を真っ赤にしている。
……あれ、この皇子、意外と純情だったのかよ!
「……ふむ。そこまでの覚悟があるなら、乗るしかないな、このビッグウェーブ(政変)に」
石川麻呂がついに折れた。
よっしゃ、スカウト成功! 蘇我氏の分家を味方につけたぞ。
帰り道、俺はもらった組紐を眺めながら、ふと思った。
「てか、皇子は結婚して仲間を増やすのか。……俺も、あの謎の美少女と仲良くなるために、何かこう、歴史に残るようなアピールが必要だったりする?」
楽天家な俺の悩みは、国家転覆よりも、謎の彼女と名前を教え合えるかどうかにシフトしつつあった。
【今回の学習ポイント:政略結婚と石川麻呂】
蘇我石川麻呂の寝返り: 石川麻呂は蘇我倉山田氏のリーダー。入鹿(本家)とは対立気味だった。
遠智娘: 石川麻呂の娘。実際に中大兄皇子の妃となり、後の持統天皇の母となる。
権力の固め方: 当時は、有力者同士が親戚になることで同盟を結ぶのが「鉄板のルール」だった。




