第26話:ステルス(隠密)襲来 ~暗殺者には「閃光(フラッシュ)」を~
「……あー、お腹すいた。不比等くん、どっかにコンビニ……じゃない、炊き出しとかないの?」
「海斗殿、今は外出厳禁だと言ったはずです。外には貴様を狙う不穏な輩が……」
不比等の忠告を「はいはい」と聞き流し、俺は夜の政庁の廊下をフラフラと歩いていた。徹夜続きで思考回路はショート寸前。とにかく甘いものが食べたい。
その時、背後の闇が「揺れた」。
(……シュッ!)
風を切る音。俺の鼻先を、鋭い「何か」がかすめて柱に突き刺さる。
……え、これ、矢? 本物のやつ?
「異国の妖術師、海斗。その首、蘇我の怨念として頂戴する!」
闇から現れたのは、全身黒ずくめの男たち。
……うわ、ガチの刺客じゃん! しかも三人。これ、詰んだ? ログアウト案件?
「(……いや、待てよ。こいつら、俺のことを『妖術師』だと思い込んでるんだよな? だったら、それっぽい『エフェクト』見せてやれば、なんとかなんじゃね?)」
俺は腰が抜けるどころか、むしろ変なスイッチが入った。カバンを漁り、修学旅行の余りである「あるもの」を掴む。
「おーい、暗殺者の皆さん! 俺の首を取る前に、未来の『裁きの光』、拝んでみる?」
「何……? ぐわっ!?」
俺が取り出したのは、使い捨てカメラ。
暗闇の中、至近距離でシャッターを切ると、強烈なストロボ(閃光)が爆発した。
(――パシャッ!!)
「ぎゃああ! 目が、目があああっ!!」
「太陽を……奴は太陽を掌から出したぞ!」
現代のデジカメより強力な、あの白い閃光。暗闇に慣れた刺客たちの視界は、一瞬で「真っ白」だ。
「よっ、これぞ未来の封印術! ……おらっ、今のうちに退場しな!」
俺は目が見えずにもがく男たちの股間を、力いっぱい蹴り上げた。
「なんとかなる」の精神は、時に「なりふり構わない攻撃」に変わるのだ。
「海斗殿! 無事ですか……って、何ですかこの惨状は」
騒ぎを聞きつけた不比等と護衛が駆けつけた頃には、刺客たちは「太陽に焼かれた……」とうわ言を言いながら、情けなく転がっていた。
「いやー、なんとかなったわ。不比等くん、これからは俺のこと『光の魔術師』って呼んでいいよ」
俺は親指を立てたが、不比等は俺の手に持つ使い捨てカメラを、不気味なものを見るような目で凝視していた。
【今回の学習ポイント:古代の夜と光】
闇の深さ: 街灯なんてない飛鳥時代の夜は、現代とは比べ物にならないほど真っ暗。そこでいきなり「カメラのフラッシュ」を食らえば、マジで神の奇跡か妖術にしか見えなかったはずだぞ。
蘇我の怨念: 実際、改革の裏では常に暗殺の危機があった。中大兄皇子自身も、乙巳の変では自ら剣を振るったけど、海斗のような「物理(股間蹴り)と科学」で解決する奴は前代未聞だったろうね。




