第25話:炎上(エンジョウ)の飛鳥 ~旧勢力の逆襲(リプライ)~
「……あれ、なんか空気重くね?」
都中に貼り出した「劇画プリンス・ポスター」の効果は絶大だった。民は「皇子様カッケー!」と盛り上がっているが、その一方で、一部の区画から刺すような視線を感じる。
「海斗殿、当然の結果です。蘇我の残党や、旧来の権益にしがみつく豪族たちが、この『派手な宣伝』を苦々しく思っています」
不比等が木簡を削りながら、冷淡に告げた。
そこへ、慌てた様子の鎌足さんが飛び込んでくる。
「海斗! 不比等! 街に貼ったポスターが、次々と剥がされ、汚されている! さらには『皇子は妖術使いと組んで、民をたぶらかしている』という怪文書まで出回っておるぞ!」
「げっ、それってネット掲示板のアンチスレ(誹謗中傷)じゃん。……マジかよ、せっかくバズったのに」
俺は頭を抱えた。どうやら、俺が持ち込んだ「現代の広報術」が、古臭いじいちゃんたちの逆鱗に触れたらしい。
「奴ら、ポスターを剥がすだけじゃ飽き足らず、『海斗という異端者を差し出せ』と門前でデモ……いや、抗議活動を始めています」
不比等の言う通り、外からは「異国の妖術師を追放せよ!」という怒号が聞こえてくる。
やべぇ、これ放置(放置)してたら、俺、物理的にデリート(処刑)されるんじゃね?
「……プリンス! こうなったら、さらに強気な『謝罪風・反論会見』やりましょうよ! 炎上は燃料を投下して鎮火させるのが……」
「海斗、待て。今回は貴様のノリでは通用せぬ」
奥から現れた中大兄プリンスの顔は、これまでになくガチ(真剣)だった。
「奴らは単にポスターが嫌いなわけではない。俺が進める『大化の改新(システム変更)』そのものを、貴様という生贄を使って潰そうとしているのだ」
「え、俺、生贄……? ちょっと待って、なんとかなるっしょ、で済まないレベル?」
俺の背中に嫌な汗が流れる。
改革を面白くないと思う奴らの「反発」は、俺が思っていたよりずっと、深く、重いデータだった。
【今回の学習ポイント:蘇我氏の残党と反対派】
乙巳の変のその後: 蘇我入鹿を倒した後も、蘇我一族が全滅したわけではない。彼らや、自分たちの土地を守りたい豪族にとって、中大兄皇子の改革(公地公民)は、自分たちの資産を奪う「改悪」でしかなかったんだ。
怪文書と流言: 当時の政治は「噂」が大きな力を持っていた。海斗のような正体不明の人物は、反対派にとって最高の攻撃材料になったはずだぞ。




