第24話:バズれ飛鳥! ~プリンス、看板背負って広報担当(インフルエンサー)になる~
「……海斗、これは何だ」
地獄の徹夜明け、海斗が描き上げた「劇画風ヒーロー・プリンス」のポスターを前に、中大兄皇子が腕組みをして立っていた。
横では不比等が「皇子、申し訳ございません。すぐに撤去させます、このような不謹慎な……」と、珍しく焦ってフォローを入れている。
俺は生きた心地がしなかった。……あ、ヤベ。ちょっと盛りすぎた(美化しすぎた)かな? 処刑とかされないよね?
「……これ、俺っす。中大兄様をイメージして、こう、『新時代のリーダー感』を爆盛りしてみたんですけど……。やっぱマズかったっすよね、サーセン!」
俺が頭を下げようとした、その時。
「…………これ、よくね?」
「えっ?」
「はい?」
俺と不比等の声が重なった。
プリンスはポスターに顔を近づけ、自分の顔がキラキラのアルミで縁取られているのを、まじまじと見つめている。
「この力強い眼光、そしてこの『新時代』という謎の文字……。ふむ、悪くない。むしろ、これまでの木っ端役人が書いてきた退屈な木簡より、よほど俺の志が伝わるではないか!」
「さ、さすがプリンス! 話がわかる!」
俺は一気にテンションが上がって、プリンスの肩に手を回しかけた(鎌足さんの鋭い視線で即座に引っ込めたけど)。
「そうなんですよ! 今の時代、文字が読めない人だって多いじゃないですか。でもこれなら、見た瞬間に『あ、この人についていけばなんか凄そう』って直感でインストール(理解)できる。これこそが広報(PR)の極意っす!」
「いんすとーる……。よくわからぬが、面白い。不比等、これと同じものをあと百枚作れ。都の至る所に貼り出すのだ」
「ええっ!? わ、私がですか……? この……この『バズり』とやらを再現しろと?」
あの天才・不比等が、筆を持ったままフリーズしている。ざまぁみろ、ロジックだけじゃこのクリエイティブな世界は渡り歩けないんだよ!
「海斗、貴様も不比等を手伝え。不比等の正確な写本能力と、貴様の……その、デタラメな発想力。この二つが合わされば、我が国の改革は加速する!」
「……え、俺も? 結局また仕事増えるんすか……?」
俺は天を仰いだ。せっかく不比等にマウントを取ったのに、結局二人で「広報部」としてタッグを組まされる羽目になるとは。
「ほら、海斗殿。皇子のお言葉です。……さっさとその『きらきら』を私に渡しなさい。色を塗る順番、効率化(最適化)しますから」
「……はいはい。不比等くん、君って意外と仕事に厳しいよね……」
結局、俺たちは並んでポスターの量産作業に入ることに。
横では、車持娘が「海斗様と不比等様、まるで本当のご兄弟のようですわ!」なんて、呑気にキャッキャしている。
「(……いや、兄弟っていうか、これ完全に『ブラック企画会社の同期』だわ……)」
俺の飛鳥ライフ、のんびりデートする暇がどんどん削られていくんですけど!
【今回の学習ポイント:中大兄皇子の自己プロデュース】
中大兄皇子のキャラクター: 彼は非常に意志が強く、目的のためには手段を選ばない性格だったと言われている。自分を「神聖なリーダー」として演出することの重要性を理解していたはずだから、海斗のポスター戦略にも意外とノリノリで乗っかったかもしれないね。
広報の効果: 実際、この時代の「改新の詔」は、非常に難しい言葉で書かれていた。それをいかにして民に浸透させるかは大きな課題。海斗が持ち込んだ「エンタメ要素」は、歴史の裏側で大きな役割を果たした……のかも?
不比等との共同作業: 天才・不比等(法と論理)と、高校生・海斗(ノリと現代知識)。この凸凹コンビが、日本の基礎を作っていくことになるんだ。




