第22話:出現、パーフェクト・ジュニア ~そのスペック、チートにつき~
「……おわった。マジで終わった……。脳みそがオーバーヒートして煙出そう……」
朝日が昇る飛鳥の政庁。俺は墨で汚れた手のまま、縁側に転がった。
結局、一晩中プリンスと鎌足さんに「ここ、計算ミスってますよ」「この数字、盛りすぎ(水増し)じゃないっすか?」とツッコミを入れ続け、ようやく「初期設定(税制の基礎)」が完了したのだ。
「海斗、大儀であった。貴様の『カケザン』とやらは、我が国のOS(基盤)を刷新する力があるな」
プリンスは満足げに木簡を眺めている。こっちは寝不足で視界がバグってるっていうのに、この人はなんでこんなに元気なんだよ。
「……あー、もう無理。俺、シャットダウン(就寝)します……。あとの運用(細かい修正)は、鎌足さんにパスで……」
「そう言うな。我が息子が、貴様の仕事ぶりを学びたいと申しておる」
鎌足さんがそう言って、一人の少年を招き入れた。
「――父上。この御方が、例の『九九』なる術を操る海斗殿ですか」
……誰だ、このキラキラしたやつ。
現れたのは、俺と同じくらいの年齢の少年。でも、寝癖全開の俺とは正反対に、着物の着こなしも完璧、肌もツヤツヤ、おまけに顔が「超絶イケメン(SSR級)」だった。
「初めまして、海斗殿。父、鎌足より話を伺っております。私は不比等。以後、お見知りおきを」
不比等は、爽やかな笑顔で俺に頭を下げた。……うわ、何この「デキる後輩」感。女子が見たら一発で落ちるやつじゃん。
「あ、どーも。俺は海斗……。不比等くんね、よろしく。……え、君もこのデスマーチに参加すんの?」
「はい。私は海斗殿と違い、地道な作業(ログの精査)が得意でして。……おや、この木簡の計算。ここ、端数の処理が甘い(バグがある)ようですが、私が修正しておきましょうか?」
不比等は、俺が苦労して出した数字を一瞬でスキャンすると、サラサラと木簡を削り、完璧な修正案を書き込んだ。
……なんだこいつ。計算速度、俺の暗算より早くね?
「(……ヤバい。こいつ、現代でいう『東大現役合格のハイスペ美少年』だ。俺の適当キャラが食われる……!)」
嫌な予感が走る。
さらに追い打ちをかけるように、そこへ車持娘が朝食の差し入れを持ってやってきた。
「海斗様、お疲れ様で……。あら、不比等様? お戻りになられていたのですか?」
車持娘の顔が、パッと明るくなる。……おい、ちょっと待て。その「再会を喜ぶヒロイン」みたいな反応、俺の時はもっと控えめだったじゃん!
「はい、ただいま戻りました。……お久しぶりです、姫。相変わらず、朝霧のように美しい」
「まぁ、不比等様ったら……」
不比等は、自然な動作で車持娘の手を取り、サラッと甘いセリフを吐きやがった。
俺が徹夜で目を血走らせて計算してた横で、こいつは何を「ログインボーナス」受け取ってんだ!
「……あ、あのー。俺、一応ここで一晩中国のために働いてたんですけど。俺の分の朝食(差し入れ)は?」
「あ、海斗様。不比等様の分と合わせて、こちらに……」
車持娘はそう言ったけど、彼女の視線は明らかに不比等の方を向いている。
なんとかなるっしょ、で乗り切ってきた俺の人生(タイムスリップ生活)に、最大級の「強力なライバル(競合他社)」が現れた瞬間だった。
【今回の学習ポイント:藤原不比等】
藤原不比等: 中臣鎌足の息子。後に「大宝律令」を完成させ、藤原氏の繁栄を決定づけた、日本史上の超重要人物。歴史上では車持娘(車持氏の娘)との間に子供をもうけている。海斗、これマジで「歴史の強制力」に負けそうな展開だぞ!
不比等の能力: 彼は非常に頭がキレ、実務能力がズバ抜けていたと言われている。海斗が持ってきた「現代のノリ」を、冷徹な「法律」に変換していくのは、実は不比等のようなタイプなんだ。
三角関係の予感: 海斗は「直感とノリ」の高校生。不比等は「論理と計算」の天才。対極的な二人の間で、車持娘の心はどこへ向かうのか……?




