第16話:レガシー豪族の逆襲 ~仕様変更に納得しないユーザーたち~
「いい加減にしろ! 我らの一族が代々守ってきた土地を、なぜいきなり『国のもの(公地)』にする必要があるのだ!」
難波のオフィス……もとい大極殿の前に、武装した地方豪族(レガシー勢力)たちが押し寄せていた。
彼らにとって、大化の改新(大規模アプデ)は、自分たちの資産を一方的に没収する「クソ運営による改悪」にしか見えないらしい。
「海斗、奴らは相当キレているぞ。このままだと物理サーバー(宮殿)ごと破壊されかねん」
鎌足が冷静に、しかし剣の柄に手をかけながら呟く。
「要するに、『説明書』が読まれてないってことですよね。自分の取り分が減ることへの不安(不具合報告)が限界突破してる……」
俺は、怒号を飛ばす豪族の一人――額に青筋を立てた大男の前に歩み出た。
「おい、そこの若造! 中大兄を出せ! 土地を返さないなら、ここを血の海にしてやる!」
「ま、なんとかなるんじゃね?……と言いたいとこだけど、おっさん、少し話を聞けよ。土地を国に返すのは、君たちの『権限』を奪うためじゃないんだ」
俺はあえて現代のプレゼンターのような軽い調子で切り出した。
「これからは国が土地を管理する代わりに、君たちには『郡司』っていう役職(管理者権限)を与える。つまり、自分の一族だけを養うブラック企業の社長から、国公認の支店長にランクアップ(昇進)するってことだ。給料(食封)も国が保証するぞ」
「……支店長? ランクアップだと?」
男の動きが一瞬止まった。
今までは土地を守るために隣の部族と「戦争(リアル対人戦)」を繰り返していたが、国が守ってくれるならそのコストもリスクもゼロ(無料)になる。
「戦争にリソースを割くより、国のシステムに乗っかった方が、長期的な期待値は高いんだ。賢い君ならわかるだろ?」
俺の「コンサル的説得」に、豪族たちは顔を見合わせた。
力でねじ伏せる(BANする)だけでなく、メリットを提示して「納得」を得る。これも現代知識の活用法だ。
「……ふん。口の減らないガキだ。だが、その『支店長』という響き、悪くないな」
殺気立っていた空気が、少しずつ緩和(パッチ適用)されていく。
しかし、その様子を遠くから冷ややかな目で見つめる鎌足がいた。
「甘いな、海斗。理屈で動かぬ者も、この世には存在するのだぞ……」
鎌足の視線の先には、まだ納得していない「ラスボス候補」の不気味な気配が漂っていた。
【今回の学習ポイント:郡司の誕生と懐柔策】
郡司: 大化の改新後、地方の有力豪族たちは「郡司」という役人に任命された。土地の所有権は国に返したが、その土地を実際に管理する権限(実務)は彼らに任せ、給与を与えることで懐柔したんだ。
中央集権のグラデーション: いきなりすべてを奪うのではなく、旧勢力に「役職」という新しい地位を与えることで、反乱を抑えつつ国家システムに取り込んでいったんだ。これが大化の改新を成功させた高度な政治テクニックだぞ。
食封: 土地を返した豪族たちへの「給料」に相当する仕組みだ。特定の戸数から上がる税をそのまま自分の収入にできる権利を与えることで、彼らの生活レベル(QOL)を落とさないよう配慮したんだ。実利をセットで提示するのは、いつの時代も交渉の基本だね。




