第15話:消えたデータと謎の不具合? ~飛鳥のサイバーセキュリティ事案~
「……おい海斗、大変だ。データベース(戸籍台帳)の一部が書き換えられているぞ!」
難波のオフィスに鎌足の怒号が響いた。
彼が手に持っているのは、昨日俺たちが必死にインデックス(見出し)を付けたばかりの最新の木簡だ。
「書き換えられてる? バグ(記入ミス)じゃないんですか?」
「違う。特定の地域の土地情報だけが、あからさまに古い設定(豪族の私有地)に戻されているんだ。これでは公地公民が反映されない!」
せっかく構築した国家システムに、外部からの不正アクセス(改ざん)……いや、内部犯によるデータの書き換え疑惑だ。
犯人は、土地を没収されることに不満を持つ保守派(抵抗勢力)の誰かに違いない。
「……海斗さん、これを見てください」
車持娘が、俺が昨日導入した『色分け管理』の棚から一枚の木簡を差し出した。
「あれ? この木簡、俺が指定した青色(一般データ)じゃなくて、赤色(要注意データ)の棚に混じってますね」
「そう。海斗さんが色分けをしてくれたおかげで、誰かが勝手に持ち出そうとしたり、入れ替えたりした跡がログ(履歴)として残ったんです」
現代のアクセスログに相当する仕組みが、まさかこんな形で役に立つとは。
犯人は、木簡の「色」の意味を理解していなかったらしい。
「よし、子麻呂! ログを辿って、昨日この赤い棚の近くをウロウロしていた奴をBAN(強制退場)しにいくぞ!」
「おう、任せろ! 俺の剣で物理的にシャットダウン(制圧)してやる!」
鎌足が冷徹な笑みを浮かべ、子麻呂が物騒な武器を持って飛び出していく。
どうやら難波のIT革命は、セキュリティ対策(防犯)の面でも大きな成果を上げたようだ。
「……海斗さん。あなたの考えることは、いつもこの国の『明日』を照らしてくれますね」
車持娘の言葉が、残業続きの俺の脳に優しく染み渡る。
……ま、なんとかなるんじゃね? この国のアプデも。
【今回の学習ポイント:古代の公文書管理】
戸籍と計帳: 大化の改新で最も重要だったのが、誰がどこに住んでいるかを把握する「戸籍」の作成だ。これによって初めて、国は一人一人から正しく税を取るための「ユーザーリスト」を手に入れたんだ。
偽籍: 当時も、税逃れのために性別や年齢を偽って報告する「データの改ざん」が社会問題になっていた。海斗が直面した「データの書き換え」は、当時の政府が実際に戦っていた課題でもあったぞ。
情報の機密性: 当時の役所では、重要な書類(木簡や経典)を納める蔵は厳重に管理されていた。情報を守ることは、いつの時代も国家運営の最優先事項だったんだ。




