第1話:運命の出会いは、だいたい飛んできたクツのせい。
「……あー、詰んだ。これマジで詰んだわ」
俺、高木海斗。16歳の高校生。
昨日までスマホで動画見てたはずなのに、目が覚めたらここ、西暦644年の飛鳥だった。
目の前にはバカでかい寺。周りは変な帽子被ったコスプレ集団。
「ま、なんとかなるんじゃね?」
とりあえず、一番盛り上がってる場所に混ざってみた。そこでは当時の超メジャー・スポーツ、サッカー(蹴鞠)の大会が開かれていた。
「うお、あのアゴのシュッとしたイケメン、めっちゃ上手くね?」
観客のJK……いや、身分の高い姫君(采女)たちが黄色い声を上げている。その中心にいたのが、この国の超エリート、中大兄皇子。
将来の天皇候補筆頭。今で言うところの「超・意識高い系御曹司」だ。
皇子が気合を入れてボールを蹴り上げた、その時だった。
「あ」
スポーン! と、景気よく皇子のスニーカー(沓)が脱げた。
それが放物線を描いて、俺のすぐ隣にいたガリ勉風の男の前にポトッ……と落ちた。
男の名は、中臣鎌足。
後に日本最強のプロデューサー(内臣)になる男だが、今はまだパッとしない中堅官僚だ。
鎌足は、落ちてきたクツをうやうやしく拾い上げ、膝をついて皇子に差し出した。
「お、落としましたよ、プリンス」
「……あ、あぁ。サンキュ」
この時、二人の間に走ったビビッとした電流。
これが後に、独裁者・蘇我入鹿をぶっ飛ばす「大化の改新」という名の国家プロジェクト(政変)の始まりだなんて、今の俺には知る由もなかった。
「……てか、あのクツ拾った人、めっちゃ手震えてね?」
俺がボソッと呟くと、隣にいた清楚な女の子が「ふふっ」と笑った。
……え、待って、今の誰? めっちゃ可愛いんですけど。
「あ、俺の運命もここから始まっちゃう感じ?」
楽天家・海斗の飛鳥ライフ、波乱の予感しかない。
【今回の学習ポイント:乙巳の変への序章】
法興寺の蹴鞠会(644年): 中大兄皇子と中臣鎌足が初めて接触した運命のイベント。
中臣鎌足: 当時は蘇我氏の独裁に不満を持つ勢力を探していた。皇子のクツを拾ったのは、実は「こいつ、見込みあるかも」というスカウト目的の確信犯だったという説も!




