天ちゃんの目
でもとりあえず今日は外もぐちゃぐちゃでいいでしょうからここでいいやと思い、愛子は天ちゃんのご飯茶碗に天ちゃんのご飯を入れて端のマットの上に置いた。
天ちゃんは待ってましたとばかりにご飯を食べ始めた。
さて、次は人間のご飯…。
愛子は、朝ご飯の支度をしながらご飯を食べる天ちゃんを見ていた。
この子のおかげで、こういった家事も苦ではなくなると思った。
ご飯ができたころ達が起きて今に入ってきた。
居間に入った途端に達は天ちゃんの足を踏みそうになった。
「危ない。」
愛子が大きな声を出すと
「猫が家の中をウロウロするからだ。いつも言ってるだろう」
「猫は家に入れるな」
愛子は達の言葉を遮るように言った。
「ここはあなただけの家じゃないの。外がぬかるんでるからちょっと家にいるぐらい文句言われる筋はないわ。」
達は驚いた顔をしている。
そう、愛子は今まであまり達に返しことをしたことはなかった。
昨日に引き続き今日も外は激しく雨が降っている。
「ぬかるんだ足でたたきがドロドロになったら、その足とたたきをあなたは掃除をするの?」
達は庭の整備は少しはすることがあったが、玄関を含む掃除をしたことは無かった。
天ちゃんは達の横にいき、ニャーと鳴いた。
「悪かった」
ここ20年ぐらい彼の謝罪なんて聞いたことがなかった。
(これも天ちゃんの効果かしら)
これ以上揉める必要はないので愛子はご飯を運んで、
「さあ、食べましょう」
と言った。
「いただきます。」
いつも通りご飯を食べ終わると、待ってましたというように、天ちゃんが愛子のところにきて、「ニャー〜」と言った。
天ちゃんは愛子の目をじーっと見ている。
愛子もその真剣な天ちゃんの眼をじーっと見返して見るが、黄色い澄んだ目には愛子が映るだけだ。




