昔のキオク
天ちゃんに関するものを全部揃えた夕方、愛子がご飯の準備を始めると、達は暇つぶしのためだけに新聞を読んでいるようだった。
すると、チャイムが鳴った。
(あ、そういえば正子達が来るって言ってた。)
愛子は天ちゃんにすっかり夢中で、そんなこともすっかり忘れていた。
愛子は、台所につるしてあるタオルで手を拭き、インターホンを覗くと妹の正子の顔が映った。
「あなた、正子たちが来た。」
「そうか。」
達はもそもそと立ち上がり、2人で玄関へ向かった。
ドアを開けるとそこには愛子の妹の正子と娘の梨沙、そしてその夫が新生児を抱いて立っている。
「おばちゃん、こんにちは、やっと帰ってきたので、寄らせて貰いました。」
と梨沙が言うと
「お祝いいただきありがとうございました。」
と横にいた梨沙の夫が言って、2人で頭を下げた。
新生児の顔を見たら笑顔になった。
「かわいいねー。」
正子にとっての初孫だ。
「昔はサルみたいだったけど、今の赤ちゃんはびっくりする程きれいなのね。」
愛子はなんだか嬉しくなった。
(家にも孫がいたらいいのに…。)
愛子は率直にそう思った。
達は、あまり赤ちゃんをしっかり見るでもなく、なんとなく所在なさげに立っている。
(そう、この人はそういう人。猫を飼っていいと言っただけ、まだマシなだけで…。)
愛子は、仲良しの娘と孫を手に入れた正子をとてもうらやましく思った。
みんなで話をしていると、足元に、天ちゃんが歩いてやってきた。
普段と違う様子だからか、天ちゃんはニャーと言って不思議そうに一同見た。




