幸せな…
「あー、昨日の猫ちゃん。」
雨に濡れたのか何なのか理由はわからないが、昨日から見たらきれいになっている気がする。
「雨がやんだから出ていけばいいのになぁ」
「きっと家が気にいったのよ。」
「俺は、気に入らないけどね。」
(嫌味だな、そんなの知ってますよ。)
愛子が猫に近づくと…
猫は、ニャーと言って頭を下げた。
よく見てみると猫は赤地に白い水玉の首輪をしていた。
「この猫、誰かに飼われていたんだ。」
「どうしてだ?」
愛子は、赤と白の首輪を指差した。
それを見た達は
「そうかもな。じゃぁ飼い主が探しに来るかもしれないな。」
と言う。
「残念」
達が
「でも」
と言いかけたときに庭に神出鬼没に宗一が現れた。
宗一は達の弟で、いつもいきなりやってきては達と出かけていく金魚のフンみたいな存在だ。
「たまには散歩でも行かないかと思ってきた。」
愛子は名案を思いついた。
「行ってきなよ。」
「そうだな。」
愛子に促されるようにして、達は宗一と散歩に出ていった。
これでここから1時間位は達がいないはずだった。
愛子は猫と遊んでみようかと思ったのだ。
野良猫や人に飼われていない猫は、人が近づいただけで逃げてしまうものだが、この庭に現れた猫はしゃがんでおいでと言うと、トコトコと愛子の前に歩いてきた。
とてもひとなつっこくて好ましい猫だと思った。
試しに猫をつかんでみたら猫は抵抗もせずに、簡単に抱き上げることができた。
(珍しい猫。)
猫は暖かだった。
そう思った時、ポツポツと雨が降り始めてきた。雨か…洗濯物入れなきゃと愛子が思った時に庭に達が入ってきた。
(もう帰ってきちゃうのか…。)
愛子は猫を抱っこしたまま軒下に入った。
猫を抱っこしている愛子を見て、夫は明らかにギョッとした。




