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再会
愛子は、庭の落ち葉を片付けながら、いなくなってしまった訪問者の猫のことを思い出していた。
たった一度玄関にきただけの猫のはずなのに、どこか親しみが持てる猫だと思った。
でも、自分は猫というものに縁がないのかもしれない。
母は猫好きではあったが皮肉なことに猫アレルギーで猫は飼えなかったし、夫は猫が嫌いだ。
しかも愛子の願いを聞いてくれるような人ではない。
普通の話にさえ耳を傾けてくれない彼が猫を飼うのを許すはずがない。
(いても飼えなそうだから、いなくなってちょうどいいのか…。)
最近では諦めこそが平凡に生きていく最良の方法だとすら思う。
集めた枯れ葉を塵取りで片付けようとすると
「おーい」
達の呼ぶ声がした。
(私はおいではない。名前があるよ)
と苦々しく思った。
しかし呼ばれるなんて珍しいとは思ったけど、すぐに行く気にはなれなかったので
(いっそ聞こえなかったことにしよう。)
塵取りに枯れ葉をかき入れたところ
「おーい。」
また呼ばれた。
しかし、2度も呼ぶのは珍しいので、愛子は仕方なく声のする方へ行った。
呼ばれた方の庭に出ると、昨夜の虎猫が庭にちょこんと座っていた。




