眠れない雨の夜
それからしばらくして布団に入ってからも愛子は時折強弱をつけて雨戸に叩きつける雨音に、なかなか眠りにつくことができなかった。
猫を傘で追い払おうとした達もまた、少し心に動揺があったのか、何度も何度も寝返りをパタパタと打つ姿が見えた。
翌朝、雨戸を開けると、すべてのものはきれいさっぱり洗い流されたかのように澄んできれいな風景になっていて、朝の渉がまばゆくまぶたに突き刺さるようだった。
普段なら雨戸を開けると、次は台所へ行く愛子だったが、昨夜の猫が気になって仕方がなく、足は玄関へと向かい、玄関へと行くとドアを鍵を勢いよく開けた。
ドア開けたところに猫はいなかった。
玄関にあったつっかけサンダルを履いて愛子は外へ出て、左右をキョロキョロ見回してみたが、それらしい影はなくちょっと落胆した。
(もっと暖かい所へ行けていたならそれでいいんだけど…。)
玄関の中へと戻ると達がやってきて、自分の目で確かめたかったのかやはり同じように外へ出ていった。
愛子が台所で朝ごはん支度をしていると、達は新聞を持ち戻ってきて
「厄介な猫はいなくなったな。」
と椅子に座りながらつぶやいた。
相変わらずカチンとくる物言いだ。
「そうね。あなたは何でも自分の気に食わないものは、自分の前からいなくなればいいと思ってるんでしょ。」
「そんな事は無いさ…。」
愛子は生き物の心配もできないような気持ちを持つこの人とこれからずっと一緒に生活していくのかと思うと、なんとなく暗い気持ちになった。
近頃では話すこともめっきりと減った。
もっとも、話そうと思っても印を押したような単調な生活を送る老夫婦に話題がある様にも感じられない。




