砕け散った…
渉は出ていって、ドアがバタンとしまった。
美紀は、本当は今日は幸せな夜になるはずだったのに、やっと再びぬくもりを手に入れられると思ったのに…
そう思うと、とにかく泣けた。
砕けたままのスイカが散らばった床に座り込んで、ひたすら泣いた。
どれくらい泣いたのか顔を上げると、膝あたりでニャーという声がした
「みいちゃん」
「ニャー」
そういえば、さっきから何者かの気配を足元に感じていた。
みいちゃんは美紀に乗ってきた。
美紀はみいちゃんをぎゅっと抱きしめると
「ニャー」
みいちゃんはそのままじっとしていた。
猫はどんな時も気ままなはずだけど、悲しいときにはそばにいてくれる…。
そこから二日間、美紀は外へ出る気にも何をする気にもなれずにボーっと過ごしていた。
ものすごく暑いはずだけど、暑ささえも感じられずに抜け殻のようになっていた。
夕方になり、チャイムが鳴った。
美紀は出る気にもなれず、ボーっと座っていると「入るわね」と声がした。
そして居間に現れたのは、ここに引っ越してきて働き始めた時に職場で出会って、相談に乗ってくれたり世話をしてくれていた千佳さんだった。
暗い部屋で、汗びっしょりかいている美紀を見て
「どうしたの、大丈夫」
千佳さんは、美紀の顔を見ると
「なんか辛いことがあったんだね」
と言った。
美紀が答えずに放心状態でいると
「まぁそういう時もあるよね。
でもちょっとこの部屋暑すぎる。
1人だったらまだこれでもいいけど、その体にこんな温度はダメよ。」
千佳さんの足元にはみいちゃんがうろちょろしていた。
「退院するって聞いたから、2日前から連絡してたけど、何も返信も返ってこなかったから心配してやってきたら、みいちゃんが家の前でうろちょろしていて寄ってきたからどうしたかと思ってもっと心配になってきたらコレ…。」
美紀は千佳さんをとても勘が良い人だと思った。
千佳さんは、斜め上を見て思案顔をしていた。
「実はさぁ…」
「実は?」
困った顔をしている千佳さん。
「こんな時に言うべきじゃないと思うんだけど…。渉さんが女性と歩いてるのを見ちゃって…。」
(それは知ってる…。)
「それは入院中?」
千佳さんは俯いてしまった。
「ねぇ…」
美紀は少し強い口調で問い詰めた。
千佳は黙ったままだった。
「ねぇ、いつ、教えて」
千佳さんは大きく息を吸って
「…昨日。」
心の中で大きな壁がガシャンと音を立てて崩れた。




