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トラウマ
帰宅すると、渉はツカツカとソファーに歩いて行き座った。
美紀も斜めの位置に座った。
真昼の家の窓際で、みいちゃんは微睡んでいた。
美紀が座ると、渉は大きく頭を下げた。
「ごめん、仕事を辞めたって言えなかった…。」
「いつ?」
「2ヶ月くらい前」
そういえば、渉の作業服が最近は汚れていないと指摘した頃だ。
(そんなことか…。)
「でもこの前の給料日にお金持ってきたよね。あのお金どうしてたの?」
渉は瞳を逸した。
渉の目は茶色くて大きくて、いつも子供のようにランランと輝いてとても魅力的な目だ。
まさかこの目で嘘をついていたなんて。
しかも、どちらかと言えば言わなきゃいいことまで言ってしまう余計な口を持っていると思っていた。
そんな渉が嘘をついていたなんて、そのことはショックだった。
仕事を辞めたら、辞めたと言って欲しかった。
美紀は渉の目を覗き込んだ。
「それで、あの持ってきたお金は?」
渉は瞳をまた逸らした。
「…パチンコ」
「パチンコ?」
おそらく多分さっきよりも数オクターブ高い声で繰り返した。
「あぁ…どうにかあの位は手に入った。」
美紀は、パチンコには相当嫌な思い出があった。




