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第三十七話

さて、豊臣家全体で推進している調略活動である。全体として、どこまで進捗しているのかを確認してみたい。

担当者曰く、調略活動を既に終わっている、との事だった。

後は第三者の観点で確認して、問題点があるかどうかを検討するだけである。

豊臣家の基本戦略は簡単である。相手は当方の約3倍の兵を配備してくる。これは城を落とす際の常識的な戦力である。幕府としては常識内の戦力で落城させないと、各大名に❝与しやすい❞と思われるだろう。戦後の事を考えても、四倍、五倍の兵力差にはならない。ただでさえ外堀・内堀を埋めて、大坂城の防衛機能は著しく低下しているのだから。この3倍の兵力差を少しでも削ればいい。雄藩の軍勢が、合戦に参加しない様な場所に配備されるとか、寝返るとかで一対三が一対二とか二対二になるのが理想である。

伊達・上杉に関しては、合戦時に江戸を急襲する計画を記した密書を幕府に渡している。これで幕府としては江戸防衛にある程度の兵力を割かねばならず、長期戦になった際の兵力追加が困難になるだろう。また疑念を持たれる事になった二藩は最前線に位置されるであろう。これは、幕府の手に渡った密書をわざわざ届けてくれた事からも明らかである。『疑念を持っている。潔白を証明したければ、戦え』という脅しをかけてくる訳だ。ここまでは想定内。

当然ながら、実際の二藩との交渉内容は異なる。勿論、幕府に偽の密書を渡す事についても連絡済みである。江戸攻略の作戦については、幕府に流した作戦とは別の作戦について提案している。第一案として各大名の人質として集められる妻子を奪取し、大坂にいる幕府・大御所軍に反旗を翻す案、第二案として大坂での戦いが膠着状態となり、増援を求められた時に江戸を占拠してしまう案である。どちらを採用してもいいし、採用しなくても構わない、としている。後は彼等の決断次第である。全てが幕府に明かされお取り潰しとなる危険性と、豊臣方が勝利し加増される可能性を天秤にかけて、判断して欲しい。そして、伊達政宗公への唯一の依頼があった。松平忠輝公を参戦させない様に縛りをかけるのだ。松平忠輝の姪である千姫は現在、幽閉状態に置かれている。幕府軍及び親藩が大坂城を攻めた場合、豊臣は彼女を殺す事を躊躇わない。幕府・大御所の軍は大坂城より遠くに位置するだろうから、緒戦において彼等が動く事はない。当初は豊臣と外様の雄藩との戦いになるだろうから、戦の経験の乏しい彼に親藩は戦わない事が正解だと思わせるのだ。これで幕府の戦力を削る事が出来る筈だ。

東側の備えはこれくらいで、西側の備えとしては毛利への調略が主となる。要は瀬戸内海の制海権を確保しておきたいのだ。まず、九州から派兵される軍の減員・遅参が期待される。関ヶ原の前例から戦う意志さえ見せれば、数日の遅参は許される、と九州の各大名も考えるだろう。この戦は徳川が勝って当たり前の戦で、徳川が新たに得る領地は豊臣の領地のみ。よって大名に分け与えられる領地など、無いに等しいのだ。加増の機会の無い戦に振り分けられる兵など少ない方がいい。改易・減封されなければいい、という厭戦気分が高まっても無理からぬ話である。それから、いざと言う時の脱出路にもなる。秀頼公と千姫様さえ脱出できれば再興の機会もあるだろう。それに千姫はある程度、自分が生き残る為の選択はできる筈だ。何故なら彼女は僕がこれから書き換える歴史の流れを全て承知の上で、自分が生き延びた上で、歴史の更なる上書きを試みるだろうから。千姫の側にいれば、秀頼公が助かる可能性も高まるだろう。

瀬戸内海における船代の変化を日々確認している。じわじわと運賃は上がっているようだ。これについては幕府も大坂での戦いが近い事を織り込んでのものと黙認出来るだろう。この先、戦いが不可避となり、幕府が九州の大名に号令をかける直前に更に高騰させるのだ。この機会を見逃さない様にして欲しい。何なら豊臣が二、三隻購入してその切っ掛けを作ってもいいだろう。

黒田に関しては、地理的な背景もあり、毛利の補助的な役割となる。九州の各大名に対する牽制である。それに黒田が厄介なのは、何を餌にすればこちらの駒として動くのか解りかねるのだ。黒田が利で動くのは明らか。では黒田の求めるものが何か、九州全土なのか、天下なのか、それがわかればもっといい駒として使えるのだが。

島津については、じっとしていて欲しい。それ以上は不要だろう。戦闘力は高いのだが、いかんせん大坂にも江戸にも遠すぎる。

前田については、ひたすら情に訴える調略を継続して行った。石高からして幕府は警戒の目を緩める事は無いだろう。それならば、豊臣の世の重鎮として天下に睨みを利かせて欲しい。それが、亡き太閤殿下だけではなく、前田利家公の願いであった筈だ。この考えは、必ず藩主の頭の中に残る。戦いが膠着状態に陥ったら、前田はどう動くのか。楽しみでもあり、不安でもある。

その他、五十人程度の武力集団、寺社勢力に至るまで声を掛けている。色よい答えをもらっているところは少ない。緒戦を優位に進めることで、続々と我等になびくのではないかと思う。彼等も一族の命運を賭けた選択となるのである。旗幟鮮明にするのは、我々に逆転の目が出た時あるいは助力する価値無しと見放した時である。

つまり考えるべきは、緒戦でいかに敵の出鼻をくじき、彼我の差を縮めることである。

その為には今の豊臣でできることを見極め、早めに手を打たねばならぬ。その気になれば、幕府は来月にでも戦を始める事ができるのだから。



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