表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/42

第三十三話

「大坂城の最大の欠点は、外堀はおろか内堀までも埋められ、守るにはあまりにも脆弱な城に成り果てた事です。通常、城攻めには3倍の兵が必要と言われますが、今の大坂城では同数の兵でも落とされるでしょう。至急、抜本的な対策が必要です。しかしながら、我等には築城に関する技術を持った者はおりません」

「そなたの父がおるではないか?」

「いいえ、真田丸の事を念頭にしておられると思いますが、あれは単なる出城ですし、堀がある城においての対騎馬用のものです。従って、あれは今回の裸城で、押し寄せる歩兵に対し有効なものではありません。天守自体、城全体の防衛力強化が求めらる今回は、別の発想・考え方が必要です」

「真田殿、息子があんな事を言っているが、間違いないか?」

「概ね間違ってはおらぬ。・・・付け加えておくと、信州上田城は父昌幸が建てたもので、儂が建てたものではない。即ち、儂には築城の経験は無い、という事だ」

「そこで、今回は築城の名人と呼ばれる人を大坂に来ていただきたい、と思います」

「しかし、黒田如水殿、加藤清正公は既にこの世に亡く、藤堂高虎殿に至っては徳川方だぞ」

「築城は一人で出来るものではありません。多くの人が関わってはじめて、城は建つのです。黒田如水殿、加藤清正殿は確かに築城の名人との誉れ高い人ではありますが、その名誉は必ずしも一人に与えられるべきものではありません。彼等の考えに従って、詳細な図面を描き、大工に伝えていた人が何人もいる筈です。彼等は築城の名人と同等の知識を持っている、と言えるでしょう。僕はそういった人材を大坂に集めて、仕事をして欲しいと思っております」

「・・・確かに、その様な人物なら存命の可能性はありますな」

「後藤さん。あなたは黒田を脱藩後、諸国を巡ったとお聞きしております。あなたの目で見て、最も守りに適していると思われる天守のある城の設計者を連れて来て欲しいのです」

僕の頼みに、後藤又兵衛さんは快諾した。

「わかった。時間が無いので、すぐに出発しよう。済まないが、金をいくらかいただけないだろうか?」

「旅の路銀でしょうか?それならすぐに用意しますが・・・」

「・・・それもある。腕はあるが、借金まみれの男を誘いたい、と思っている。そういう男なら、すぐに大坂へ来るだろう」

「成程。わかりました。すぐに用意させましょう」

こうして又兵衛さんは立ち上がり、軍議の場から去った。残りの十名で軍議は続く。

「まずは耐火能力の向上についてです。有効なのは鉄板を貼っていくことですが、何しろ重いですので貼りすぎると城の倒壊の危険性もあります。それから問題としてはいかに城内に持ち込むか、という点です。幕府の忍びもうようよいると思いますので、あからさまに運び込む事は出来ません」

「我等が日常運び入れるものの中に混ぜて運び込むより他に無いのではありませんか」

「やはりそうなりますか。例えば、一日に荷車が100台分物資を運び込んでいたとして、何台増えたら怪しいと幕府は思い始めるでしょうか?」

「そうですね。五、六台なら怪しまれないんじゃないでしょうか」

「一割は難しそうですね。・・・決めました。五分にしましょう。今から大坂城内への物資の搬入量を五分増やしましょう。毛利さん、申し訳ありませんが、鉄板を貼る場所の優先順位を決めて下さい。それから浪人衆の中から手先の器用な者を選び出し、鉄板を貼る作業に従事させて下さい。大野治長さん、仕事を増やして申し訳ないですが、鉄板と釘の買い付けをお願いします。板の大きさは統一して、厚さは出来るだけ薄くして下さい。大野治房さんは鉄板や釘等の合戦用の物資を、日常品の中に混ぜて搬入する仕組みを作って下さい」

二人が了承したので、話を進める事にした。

「他に防火対策として何かございませんか?」

「火事を起こさない対策も大事ですが、起きた際に素早く消す体制も大事なのではないでしょうか」

「確かにそうですね・・・。灯りや暖炉、火鉢・・・火を使っているところには必ず水を入れた桶を置いておくことにしましょう」

「そんなに桶ばっかり置いていたら、戦いの際に邪魔にならないか?」

「大丈夫ですよ。そこで戦いになったら、もう負けてますよ」

「・・・それもそうだな」

「次は騎馬兵対策です。内堀に代わる防御策が必要です。内堀が無い訳ですから門を破られたら、すぐ天守に殺到されてしまいます。騎馬隊が殺到する速度を遅くさせる為の仕掛けが必要です」

「要所要所に弩を配備するというのはどうでしょう?御存知とは思いますが、発射までに時間がかかりますし、命中率は低いですが、騎馬軍団の進行速度を遅くする効果はあるかと、思います」

「・・・確かに、見た目の恐怖感はありますし、集団の進行を遅くする効果はあるかもしれません。城内の武器庫に現物がありましたら、複製を作って配備していきましょう。もし、武器庫に弩が無ければ諦めましょう。・・・他に何かありますか」

「やはり正攻法で銃で狙撃するのがいいと思います」

「・・・銃ですよね。数千挺はあるかと思いますが、整備が間に合っておりません。また、弾丸が圧倒的に少ないので、今堺の商人と交渉しているところです。利休殿の件があり、堺との関係が微妙なままなんです。関係改善出来る様に、既に進めておりますので心配なさらないで下さい。合戦までに必ず銃の整備も致しますし、弾丸も調達します。ですから、安心して配備の計画を立案して下さい。出来れば狙撃の為だけでなく、銃声で馬を驚かせる為の兵の配備もお願い致します」

「単純ですが、落とし穴を仕掛けるのが有効だと思います」

「・・・そうですね。確かに有効だと思いますので、準備する事にしましょう。但し、問題があります。穴を掘る訳ですから、残土の処理の問題がつきまといます。城内に残土を積んでいれば忍びに見られ、徳川の知るところになります。物資を搬入させた荷車に載せて城外に捨てる事は出来ますが、あまりに多く載せると、空の筈の荷車なのに牛馬の様子がおかしいと忍びに疑念を抱かせます。即ち、残土の問題を解決しない限りは、落とし穴系の罠は規模が限定されるという事です。この件については父上に担当していただきます。最も効果のありそうな場所を選定して下さい。出来れば、残土の問題も解決していただけると、ありがたいです」

父上が了承した。かなり負担になると思うが、人手不足なのだから仕方無い。

「大坂城からの脱出経路については、・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ