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第三十二話

「まず、皆さんは外様の大名で、どこが対象としてふさわしいと思われますか?」

各々口々に言われたが、幾つかの藩に限られていた。

「成程。皆さんが考えられるのは、伊達、上杉、前田、毛利、黒田、島津といったところでしょうか。これらの藩を三つに分類したい、と思います。一つ目がこちらが誠意を尽くせば豊臣方についてくれる藩、二つ目が調略活動が発覚した際に幕府が不審に思うであろう藩、最後が調略に乗らぬであろうし、幕府に発覚しても疑われない藩です。皆さん、いかがでしょうか?」

侃々諤々議論の末、意見は集約された。

「一つ目、豊臣方についてくれる藩、該当なし。二つ目、幕府が不審に思う藩、伊達、上杉、前田、黒田の4藩。三つ目、調略の意味はない藩、毛利、島津の2藩というところですね。僕もほぼ同じ認識です。皆さんが豊臣に厳しい認識を持たれていて、安心致しました。・・・実際の調略活動としては、最早各藩主に会える機会もありませんし、密書によるものが主となります。ここで、それぞれ2通りの調略活動を進めたいと思います。一つは確実に藩主へ届ける密書、もう一つは幕府方に奪われる事を前提にした密書です。理想で言えば、伊達・上杉は大坂に出兵せず、前田・黒田については出兵するものの、その動向を徳川は目を光らせている、という状態まで持っていきたいです。この状況に持っていけば、大御所と幕府は江戸への守りに兵を割くことになるので、大坂の戦力を大幅に削る事になります」

「・・・そうか。将軍も大御所もいない江戸を襲う可能性がある、という事ですね」

「そういう事です。我々は伊達と上杉の野心に火を点ければ、もう一つの戦場を作り出す事が出来ます。徳川にとって、我等を攻め滅ぼすのと、江戸を守る事、どちらが大切かと言えば圧倒的に後者です。知らせを受けて大御所と将軍が江戸へ引き返そうとした時、前田・黒田がどう動くか・・・そう徳川に思わせるだけでも我等には十分です。こうした状況を作り出すには、伊達・上杉をその気にさせる程の計画が必要です。我等で考えてみませんか?『幕府転覆計画』を。我等自身が信じられるような計画が出来れば、それを元に伊達・上杉を調略します。また、徳川にどの程度まで情報を流すか、彼等が大坂に出兵する場合に我等と連携が取れるのか、残存兵力で江戸攻略が可能か、について考える必要があります。前田と黒田に関しては条件交渉になるかと思います。大坂に出兵するものの、我等と剣を合わせなければ本領安堵、我等が優勢の時に裏切ってくれたら加増という条件ではどうでしょうか?この条件で妥協できれば御の字、もし妥結にまで行かなくとも緒戦において様子見となれば十分でしょう。徳川に情報が流れた場合においては、不信感を醸成し、大阪城より遠く、将軍の目の届く位置で監視しよう、と思わせる必要があります。これらについて、浮田英以江さんを中心にまとめていただきたいと思います」

「それは構わぬが・・・どうして儂なんじゃ?」

「浮田さんは四人の藩主にも面識があり、その人となりはわかっておられるだろう、と思っています。それに大坂に来る前に仙台藩にも入られたので、藩の空気を肌で感じられたと思いますので」

「そういう事なら、心得た」

「それから、島津・毛利への調略は長宗我部さんが担当して下さい。島津にお願いしたいのは、日向・肥後へ侵攻するそぶりを見せて欲しい、という事です。毛利にお願いしたいのは、瀬戸内の船舶の管理です。できるだけ多くの船舶を借り受けて、利用したい九州の大名に高い費用を請求して下さい。それから山陽道を出来るだけ進軍しにくくして下さい。西から来る軍勢が少しでも減る事を期待します。成功報酬として肥後及び安芸をほのめかせば、幕府の命令を聞くふりをしながら、我等の要求に応える、という両面作戦を採るかもしれません」

「浮田殿と同じく貴殿に問うが、何故某が?」

「それは関ヶ原で煮え湯を飲まされたお三方ですので、徳川に一泡吹かせてやろう、という気持ちは共通してあると思うからです」

「わかった。全力を尽くそう」

「お願い致します。それから豊臣方の味方を増やす為に畿内の地方豪族や職能集団への声かけ、掘り起こしについては、大野治長さん、大野治房さん、御二方でお願い致します。理由は簡単です。我等の殆どが大坂で生まれ育った者ではないからです。近隣の状況に関してわかっていない事も多いと思いますから、この役目に就いた場合、抜け漏れも多いでしょうし、成果が出るのも遅くなるでしょう。お二人はずっと大坂城で仕事をなされていた訳ですので、近隣の情勢に関しても知見がおありだと思った次第です。お二人には地方豪族、職能集団に声をかけ我等に味方する者を生み出す事、同時に彼等との連絡網を確立する事、ついでに兵糧や武器弾薬の確保もお願いいたします」

「わかりました」

「浪人衆の中には、豪族出身の方もおられるでしょう。その方々に豪族の長を説得していただく事も考えて下さい。それから出入りの商人達に、職能集団への伝手があるかを尋ねて下さい。これらにより我等の策は早く、効率的に出来るでしょう」

二人が頷いたので、僕は話を続ける。

「ここまでの話で、何か言いたい事はありませんか?」

僕は出席者全員の様子を確認したが、発言したそうな者はいなかった。

「それでは軍議を続けます。次の議題は、ここ大坂城の防衛力強化についてです」





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