はんぶんこ
ねぇ、半分こって言葉、知ってる?
アイスを食べる私を見ながら、彼はテーブルに肘をつき、手に顎をのせた『ぶりっこポーズ』で問う。『ぶりっこ』ってもう死語だっけ、なんて考えながら「知ってるよ」と返せば、彼は嬉しそうに口角を上げた。
「そういえば、半分この『こ』ってどこから来たんだろうね?」
問うて、アイスを口に含む。うん、美味しい。濃厚なバニラの味わいが口いっぱいに広がって、余韻を残しながら溶けていく。乾燥している時期のアイスは、夏場に食べるものとはまた別格。ほんの少しの肌寒さを無視して、もう一口。
「うーん、正解は知らないけどさ、きっと『一緒に』ってことなんじゃないかな」
「一緒に?」
「うん。順番ことか、比べっことか、誰かと一緒じゃないとできないことだと思わない?」
「なるほど」
アイスを食べながら、彼の説明に頷く。確かにそうかもしれない。かけっこも取り換えっこも、全ては『一』では成り立たない言葉だ。
物知りだね、と感嘆の声をあげれば、彼はほんのり頬を赤くして嬉しそうに笑う。そんな彼を見て、私も笑みが零れた。それからアイスを口に運び、空になったカップをゴミ箱へ。
「ところで、半分こって何の話……、あぁ、」
ねぇ、半分こって言葉、知ってるよね?
(250614)