NTR✕3の謎とマドンナ先輩の衝撃の提案
「ふむふむ……、せっかく告白してくれた同じ学科の娘をそんな風に振ってしまったと……。それであいつには近付かない方がいいって君達の同学年の女子達が噂していたのね……」
「槇村先輩も知るほど噂が広がってたんっすね……。わぁ、凹むなぁ……」
同じ科の娘を振ってしまった件を話すと、槇村先輩は、納得してウンウン頷き、俺は頭を抱えた。
「ま、まぁまぁ広樹、時間が経てばそのうち収まるよ。人の噂も3年っていうだろ?」
「いや、長すぎね? 収まる頃には俺、大学生活終わってんだけど。」
慰めようとして逆に打ちのめしてくる航に目を剥いていると、槇村先輩は顔を曇らせた。
「でも、こんな事を繰り返していると、君、猫田くんの大学生活は本当に台無しになりかねないわよ?
猫田くんとその親友とやらの間に何があったのか、よかったら聞かせてくれないかしら?」
「は、はい……」
真剣な目で俺に諭してくる槇村先輩に俺は頷いた。
「親友の鉄男とは、小学校以来の付き合いなんです。
鉄男、顔はそこそこイケメンぐらいなんですが、本当に面倒見が良くて、性格がいい奴で、顔は良くてもワガママで人を振り回してしまうところのある俺より、よっぽど女子にモテていました」
「顔は良くてもワガママで人を振り回す……。へ、へぇ〜」
「ったく、お前なぁ……。槇村先輩、こいつ時々こういう事言っちゃうんすよ」
ちょっと、ハッキリ言い過ぎてしまったせいか、槇村先輩はパチパチと目を瞬かせ、航は、呆れたように槇村先輩に耳打ちしていた。
「この時点で色々思うところはあるけど、まぁ今のところは置いといて。それで、何があったの?」
「はい。中学2年生の時に、クラスに刈野小鳥さんという可愛らしい女の子が転校してきて、面倒見のよい鉄男が、学校の案内とか色々してあげていて、友達の俺は時々関わりがあるくらいだったんですけど、告白されまして、付き合い始めたんです。
初カノという事になりますかね……」
「あら! あまり関わりがなかったのに、付き合う事になったの」
「はい。急に告白されて俺も驚きましたけど、顔が好みだったんすかね。
初めて彼女が出来て、浮かれていたんですが、まだガキだった俺は彼女とどう接していいか分からなくて、デートもぎこちないままで、1週間後には教室で、鉄男と刈野さんがキスしてるところを目撃してしまって、短い交際は終わりました」
「……! それは、切ないわね……。」
「その鉄男って奴も、ひどいよな!親友の彼女を取るなんて……」
親身になってそんな事を言ってくれる槇村先輩と航に俺は苦笑いを向けた。
「まぁ、でも、俺もあんまりその彼女と上手く付き合えなかったし、鉄男が刈野さんを気に入っているのは薄々気付いていたし、顔だけの俺よりよっぽどいい奴だし、しょうがないかなと思ってしまったんですよね。
だから、彼らの事を祝福する事にしました」
「猫田くん……」
「広樹……」
「それから、高校の時バイト先で知り合った相良千愛ちゃんも、付き合って3ヶ月後に鉄男と浮気している事が分かって別れた時も、彼らの事を祝福する事にしました」
「「??!」」
「大学1年の時、同じゼミで付き合い始めた如月実兎さんも、文化祭当日、姿が見えないと思ったら、遊びに来ていた鉄男とホテルに入ってくのを見かけたと他の友達から知らされ、それなりに辛かったですけど、最終的には、やっぱり彼らを祝福する事にしました」
「いや、ちょっと待ちなさい!!」
「いや、ちょっと待てよ!!」
神妙な顔で過去を語った俺に、槇村先輩と航から一斉に突っ込みが入った。
「しれっと言っているけど、何で3回も同じ人に彼女を取られているの! その人は、中学の時刈野さんとかいう子と付き合ってたんじゃ? 彼はハーレムでも築いているの!?」
「それに、何でそんな奴と今だに友達付き合い続いてんだよ! 1回目に彼女取られた時点で、普通そいつとは縁切るだろ!!」
「えっ。えっと、その…。」
二人に迫られて、俺はタジタジになった。
「い、いや、毎回一時的に気まずくはなるんですけど……。
3回とも鉄男が別れた彼女と付き合い始めて間もなく破局してしまって、「涙を飲んで祝福してくれたのに、本当にごめん」て、鉄男に謝られて、彼女のいいところとか、もっとこうしておけばみたいなのを語られると、同じ人を好きだっただけにすげー共感しちゃって、一緒に泣いてる内に毎回何となく仲直りしてしまって……」
「何じゃそりゃ! ナシよりのナシだろ!」
「はぁ……」
航を怒らせ、槇村先輩にはため息をつかせてしまった。
「そ、それで、破局した女子達とはその後どうなったの?」
「えーと、それが不思議な事に、3人共鉄男と破局した後淋しくなったのか、俺に「縒りを戻したい」って再び言い寄って来たんですよ。
俺が「親友の元カノと付き合ったら、奴に辛い思いさせるから、復縁は出来ない」って言ったら、1人目の刈野さんも2人目の千愛ちゃんも、辛そうに号泣しながら去って行きました」
「3人目の如月実兎さんはどうしたの?」
「それが、彼女はそれを聞いてもなかなか諦めてくれなくて、今でも折りに触れて復縁しようって言って来るんですよ……」
槇村先輩に問われ、そう答えると彼女は再び大きなため息をついて、ジト目で俺を見遣った。
「成る程ね……。大体の状況は分かったわ。
腐れ縁の親友に毎回親友に彼女を取られてしまうから、もういっそ、告ってきた女の子と付き合う前に親友に紹介する事にしたと……。
でも、根本的な謎
①どうして毎回親友に彼女を取られてしまうのか?
②どうして親友と彼女はすぐに破局してしまうのか?
③どうして彼女達はあなたに復縁を迫って来たのか?
が分かっていないのにそんな事をしていたら、不幸な女子が増え、猫田くんもいつまでも幸せになれない。違う?」
「そ、それはそうですけど……」
「もしかして、槇村先輩はその答えが分かったんすか?」
人差し指を突き付けて俺の問題を明確にする槇村先輩に、俺は気圧され、航は驚いて問い掛けた。
「ええ…。大体分かったと思うわ。猫田くん、知りたい?」
「し、知りたいです!」
槇原先輩に問われ、俺が一もなく二もなく頷くと、彼女はニヨニヨと小悪魔な笑みを浮かべて俺に手を差し伸べた。
「ふふ〜ん。じゃあ、その理由を教えてあげる代わりに猫田くん、私と付き合って?♡」
「「え、え〜〜〜っっ?!!」」
俺も、隣で状況を見守っていた航も、後で店員に注意される程の大声で叫んでしまったのだった。
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友人ファイル①
魚沼航(20)広樹と同じ学科、同じサークルに所属しているM大学2年生。
面倒見の良い性格で、天然で危なっかしいところがある広樹のフォローをしている。
年齢=彼女いない歴の彼だが、広樹の悲惨なNTR体験を聞き、周りのカップルを羨ましがりながらも、リアル彼女を作る事に及び腰になっており、ゲームアプリ『水着の彼女』の2次元彼女、浅倉入鹿ちゃんに着てもらう水着ガチャに課金する日々…。
水着ガチャで『スクール水着』を引き当てガッツポーズを取っているところを、密かに気になっていた同じサークルの女子に見られてしまい、ドン引きされた事を広樹は知らない。