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それでも、笑っていてほしい 花輪優羽の視点

この作品は、chatGPTのAIによって、作者のプロンプトを基に作成した物語です。

「空の色に似た想い」を、花輪優羽の視点から描いています。

転校なんて、もう慣れたはずだった。


親の仕事の都合で、小さいころから引っ越しばかりの人生。

どこかで仲良くなっても、また別れが来る。

だから、必要以上に踏み込まず、いつも少しだけ距離を置いて生きてきた。


でも、暁星高校は、どこか違った。

あの春の日、教室に入ったときに聞こえた明るい笑い声が、妙に心に残った。


そして、その声の主こそが──月島歩夢だった。



最初に彼女とちゃんと話したのは、図書室だった。

本を返そうとして、同じ棚の前で手がぶつかった。


「ごめんね。あ、花輪くん……だよね?」


笑顔でそう言われて、なぜかドキッとした。

こっちはただ本を返しに来ただけなのに、彼女はそれを小さな出会いに変えてくれた。


不思議な子だった。誰にでも優しく、でも媚びたところはなくて。

まっすぐで、裏表がない。

まるで、昔どこかで出会ったことがあるような、懐かしさを感じた。


そして気がついたときには、彼女のことを「好きだ」と思っていた。



でもその想いは、最初から届かないものだとも思っていた。


だって、彼女の隣にはいつも、雪野怜央がいた。


最初は気づかなかった。

あの無口でちょっとぶっきらぼうな彼が、歩夢のことをどんなふうに見ているのか。


でも、分かった。

歩夢が笑うと、彼の顔が少しだけやわらかくなる。

歩夢が困っていると、さりげなく手を貸している。


──ああ、この人は本気だ。


俺の中に生まれたのは、嫉妬じゃなかった。

ただ、静かで苦しい感情。

「勝てないな」と思った。


でも、なぜか彼とは仲良くなっていった。


性格は正反対なのに、話すリズムが心地よかった。

気を張らずにいられた。

だからこそ、ある日、思い切って聞いた。


「なあ、雪野くん。月島さんのこと、好きなんだろ?」


彼は黙った。

でもその沈黙が、すべてを語っていた。



文化祭の前日、歩夢が俺に聞いてきた。


「もし……もし、私が誰かに想われてるって知ってたら、花輪くんはどうする?」


答えを急がされていないのに、息が詰まりそうだった。

彼女の目が、まっすぐ俺を見ていた。


「その誰かが雪野くんなら、応援するかも。」


「……どうして?」


俺は空を見上げながら答えた。


「だって、あの人の目はまっすぐだから。月島さんを大事に想ってるの、すぐ分かる。そんな人が隣にいるって、すごく素敵だよ。」


言葉にした瞬間、胸が少しだけ痛んだ。

でも、それでよかった。


俺の役割は、たぶん、「歩夢の恋を後押しすること」じゃなくて、

「ふたりの気持ちを、ちゃんと信じて見届けること」だったんだと思う。



文化祭当日、劇の中で雪野くんが言った。


「好きな人の隣にいられるのが、一番の幸せだと思う。」


それを聞いた歩夢の顔が、ふっと綻んだのを、俺は見逃さなかった。


舞台の裏側から見ていたのに、なぜか、彼女のその表情だけが、はっきり見えた。

涙が出そうになって、ぐっとこらえた。


いいな、と思った。

こんなにも誰かを大切に思えることが、ただ、羨ましかった。



帰り道、校門の前でふたりを見かけた。

歩夢が雪野くんの手を握っていた。


それを見て、俺はポケットの中で拳を握って、深く息を吐いた。


そうか、それでいい。

それがいちばん、彼女が笑っていられるなら。


またいつか、別の場所で、誰かを好きになれるだろうか。

そんなことを思いながら、俺は一人で坂を下った。


夕焼けが、少しだけ滲んで見えた。

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