第5話 この星空の下で
僕はもう12歳になった、フィオラに何歳か聞いたんだけど僕の1つ上で今13歳だった。
本来ならもう1人でも冒険者になれたんだ、そんなに僕と一緒が良いのかと喜んでいた。
それにしても、意外とサバイバル生活もできるものだ、あれから色々あって土地を借りて自分たちで少し大きな木の上に小さなツリーハウスを作って川で洗濯をし、狩りをして、町で孤児としてお金を集めて、
あれ?意外と冒険者にならなくても生きていける?
いやいや、狩りはうまくいかなくてなにもとれなかったことはたまにあるし、家だって3回は壊れた、
それにもっと人間らしい暮らしがしたい、
そう思っているとフィオラが冒険者になる前に冒険者ギルドに行って雰囲気を見てみようと言ってきた
確かにギルドには酒場兼食堂がある、子供でもご飯を食べる体で様子も見れるだろう
ということで早速行ってみることにした
お金は集めたお金が残っていたので1人前くらいは注文できるだろう
ギルドに到着して中に入ってみると、色々なものがあった
受付、昼間から酒に呑まれている酔っ払い、依頼掲示板、食堂(酒場)、そして見覚えのある人がいた、確か、あれはそう、初めてこの町に来た時にチンピラから僕を助けてくれた、、誰だっけ?
まぁ、いい今日は様子見で来たんだご飯でも食べて帰ろう
そうして席についてご飯が来るまでくつろいでいると気になる会話が隣のテーブルから聞こえてきた
そこには2人の冒険者と思わしき人たちが料理を食べながら話し合っていた
「知ってるか?王都の吸血鬼の噂?」
「なんだそれ?」
「なんだよ知らないのか?いいだろう教えてやるぜ、」
「最近王都で2匹の吸血鬼が出たらしいぞ。」
「なんだそりゃ、吸血鬼だぁ?」
「あぁそうさ、なんでもそのうちの1匹は血を飲んだことがないなんて言ってたらしい」
「?血を飲まないのに吸血鬼だなんてわかるのか?」
「吸血鬼の目立つ所といえばなんだ?」
「?、、牙か!」
「そうだ」
そんな会話を聞いたフィオラは口をムー!ってやって牙を見せないようにしている
【なにしてるんだか、】
再び話していた二人組に目を向けるともう食べ終わったのか、その場にはもういなかった
【血を飲んだことのない吸血鬼か、】
【その秘密を探ればフィオラの衝動を抑えることができるかもしれない】
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帰宅後
「フィオラは血を飲み続けたい?」
リアはフィオラに向かって言った
あの事があってから僕は彼女にたまに血を吸わせている
「私は、もう吸いたくない。」
「リアの血が不味いってわけじゃないよ?」
「ただ、リアを傷つけている気がして嫌なんだ、」
彼女は少しうつむきながら言った
そんなフィオラの両肩に手を置くとフィオラはリアを少し見上げる
「王都に行こう!そこで吸血鬼について調べて、もうフィオラが血を吸わなくてもいいようにしてみせる!」
「、うん!」
夜中
【とは言ったものの実際どうしよう、】
リアは薄い布の布団の中で考えた
【王都の血を吸わない吸血鬼を調べれば血を吸わなくてもいい方法が見つかるかもしれない】
【その吸血鬼がまだ生きているかはわからないけど今はこれしか手掛かりがない、】
【そもそも王都まで行くのにここからどれくらいかかることか、ギルドで見た地図によるとここからかなり離れている、歩いて行くにしても何ヶ月かかるかわからない上に子ども2人で無事に辿り着けるとも思えない、】
しばらく考えた末答えが出た
【仲間が必要だ!】
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翌朝
【とりあえずギルドに来たけど依頼って形になるのかな、お金もそんなにないし受けてくれる人なんていないだろうなぁ、お金で仲間を雇うとしたらとんでもない額の依頼料を払うことになるし道中で無一文になるのは勘弁だ。】
そう考えていると後ろから人がぶつかってきた
「邪魔だ!ガキ!」
いかにも悪人って感じの人がそこにはいた
「すみません、」
その悪人面はニヤリと笑い
「坊や、お父さんかお母さんはどこかな?」
【この展開、どこかで見たことあるな、】
そうしてどうしたものかと考えていると後ろのテーブルの席から金髪の男が立ち上がり、悪人面の肩を掴んだ
「お前、ガキ相手になにしてんだ?」
悪人面は焦ったように
「いや、なんでもねぇよ」
といい早々にその場から立ち去った
それよりも僕はこの人に見覚えがある
そして向こうも僕に見覚えがあるようだ
「お前はたしか一年くらい前に路地裏で絡まれてたガキじゃねぇか、お前、また変なのに絡まれてたのか?まぁドンマイ。」
そうだ、初めてこの町に来た時に助けてくれた人だ
「で、ギルドでガキがなんの用だ?」
「えー、と」
あれ?そういえばフィオラ以外の人とまともに話すなんていつぶりだ?
なんて考えながら返す言葉に悩んでいると
「依頼でもしに来たのか?」
「えぇ、はい、そんなところです」
「なんの依頼をしに来たんだ?ちなみに俺は超凄腕の冒険者だからな!パーティメンバーだってたくさんいる!」
「そうなんですか、えーと、実は王都まで行きたくてその護衛を頼みたかったんですけれど、お金が無くて、」
そう言うと金髪の男は少し考えて口を開いた
「わかった、俺たちについて来い」
「?」
「俺たちのパーティに入れってことだよ!」
いきなりこんなことを言われるもんだからボーっとしてしまった
それでも男は続けた
「俺たちのパーティもまぁまぁな規模になってきたしそろそろ王都に行ってそっちで活動しようと思ってたんだ」
「お前がよければ一緒に行ってやってもいい、ただし!ちゃんと働いてもらうけどな!」
これはいい提案だ、僕は迷う余地なしでその場で快諾した
もちろんもう1人お世話になる人がいると言うことを話して
帰宅後
リアはまだ日が傾く前に家に帰り、フィオラに事情を説明した
「フィオラ、明後日の朝、この町を出て王都に行きます」
「わかった!」
【?、驚かないのかな、?】
「驚かないの?」
「べつに、リアの言うことならなんだって聞くよ?」
【これは教育を間違えたかもしれない、今度また授業を開こう、】
そしてリアとフィオラは町に行って必要な荷物を残りの所持金のほとんどを使って買い、その家の土地を貸してくれたおじさんにお礼を言いに行った所、どうせならということでご飯も食べさせてもらった。
とても、とても暖かいシチューにフィオラは感極まって一筋の涙を流した。
「ありがとう、すごくおいしいっ、!」
「フィオラちゃん、泣かなくてもまた会えるさ。」
おばさんはフィオラの肩をポンと叩いて励ます
「なぁに、近くに寄った時に来てくれればそれでいいじゃないか。」
「そうですね。オンセーンに来た時はまた立ち寄りますね」
「あぁぜひともそうしてくれ。妻も喜ぶからな」
そうしてご飯を食べ終わったリアとフィオラは改めて別れの挨拶を終えて自分たちの家へと帰ってきた
「リア、これでこの家ともさよならだね。」
「うん、だけどこの一年、無駄じゃなかった、ってそう思えるよ、僕は。」
「うん、私も。明日からは私たち2人きりじゃないんだね。」
フィオラが少しもの寂しそうに言った
「そう、明日からはこの街を出て王都を目指す。」
「村を出て行った時はどうなることかと思ったけど、」
リアとフィオラは梯子を登り終えて縁に並んで座り、空を眺めた
丸い月が地上を照らして夜でも辺りが見えるほど明るい。そしてその空には雲一つない、満天の美しい星空が映っていた。
「きれい。、」
フィオラは目を輝かせながら呟いた。リアはフィオラの方を見る。フィオラの目には空の星空が反射しており、フィオラの赤い目が、宝石のように見えた
その目に見とれていると戸惑いながらフィオラが口を開く
「?、どうしてこっち見てるの、?」
「ごめん、フィオラの目に星が反射してて、綺麗だな、って。、」
「え?///」
フィオラは頬を赤らめて焦り散らかす。
そして縁であたふたしていたので滑って身を乗り出して高台から落ちてしまった
「あ、危ない!」
リアは落ちるフィオラを助けるために自らも身を乗り出して高台から飛び出す。
そして空中でフィオラをキャッチして地面に向かって思いっきりの魔法を放つ
"風破"
リアが叫びながら魔法を地面に向かって放ち、加速度を上手く殺して無事にフィオラをお姫様抱っこで抱えながら着地した。あたりには魔法の影響で飛び散った草々が吹き荒れる。
フィオラは目を見開くと丸い月を背景に、これまでにないほどにかっこよく見えたリアがいた。
「大丈夫!?怪我はない?」
「え、あぁ。うん。大丈夫。なんともないよ」
「よかったー。」
「やっぱり柵はつけておくべきだったね。、」
とリアが頭をポリポリとかいているとふと頬に柔らかくて温かい感触を覚えた
「え?」
「ありがとう。リア!」
フィオラは頬を赤らめながらも守りたくなるような笑顔でそう言ってまた梯子を登って家の中へとそそくさと入って行ってしまった
「え、今のって。」
リアはだんだんと何が起きたのか理解し始めて、その場で転がりまわって悶絶する
「もしかして、フィオラって。、」
リアは転がりまわって仰向けになった後に空に映る星々をみながらふと呟くのだった
出発の日
僕たちはまとめていた荷物を持って、金髪の冒険者が言っていた集合場所に着いた
「ちょっと早かったかな、」
そこにはまだリアとフィオラの2人以外誰もいなかった
「リア、寒い」
フィオラが突然言ってきた
「うん、わかったじゃあ上着貸すよ、」
上着を脱いで渡そうとすると
彼女は頭を横にふり小動物のような目で見てきた
「ぎゅーってして欲しい、」
「はいはい、」
最近フィオラは僕にすごい甘えてくる、いや、もっと前からその予兆はあったかもしれない、
どちらにしても内心は昨日の件もあってニコニコだ
そうしてベンチに腰掛けて後ろからフィオラを温めていると金髪の冒険者とその一団がやってきた
「ふゅー!ガキのくせしてお熱いねー」
「!、」
2人は一斉に声のする方をみて、フィオラに関しては顔が恥ずかしいのか赤くなっている
「あら?お熱いのは私たちもでしょ?コーティス?」
金髪の男の後ろから出てきた女の人が言った
「サイラ!余計なことは言わなくていいんだよ!」
「あら?本当のことじゃない?昨日だって、」
話を遮るようにコーティスは叫んだ
「わー!!、そういう話はまだガキにははやいから、な?」
「わかったわよ、改めて、このパーティの魔法使いサイラよ、よろしくね♪」
「あ、はいよろしくおねがいします。」
フィオラはぺこぺこと頭を下げている
ため息をついてからコーティスも挨拶を始めた
「俺からも自己紹介を、このパーティのリーダーで剣士をやっている、コーティス•サルベルトだ、呼び方はコーティスでいいからな」
「はいわかりましたコーティスさん!」
「別に さん はつけなくていいぞ、仲間なんだからな」
「なるほど、ではコーティスで」
「よし、それでいい、そっちの嬢ちゃんの名前は?」
「えーと、私はフィオラといいます」
サイラがフィオラの髪を触って話しかけてきた
「フィオラちゃんね、あなたローブのフードで隠れてるけどいい髪色ね、白ってとても綺麗だわ」
「、!ありがとうございます」
フィオラは照れたように言った
「それじゃあ雑談はこのくらいにして出発するか、まだ自己紹介してないやつは道中しておけよー!」
そうしてリア一行は王都に向けて長い旅路に出るのだった