第41話 2人を縛る鎖
「うっさいわねっ、!」
「何度でもやってやるわよ!」
「"クリムゾン…」
再び魔法を使おうとした途端、フィオラの視界がグラグラと揺らぎ始めた
「あれ?」
気づいた時には錆臭い冷たい石の地面に倒れ込んでいた
「まだ気づかないの?」
「なに…が…?」
目の前の女が見下しながらそう問いかけてきた
「自分の力も理解していない、呆れたことね。」
彼女はフィオラの頭をヒールで踏みつけた
「あなたの魔力と血はもうほとんど空っぽってこと」
「吸血鬼の魔法は確かに強力だけど弱点がある。そのうちの1つが消費が激しく、そのうえ消耗するものは魔力だけではないということ、血も同時に消費されるのよ」
【身体がビクともしない…】
指先にも力が入らず、身体が1ミリも動く気配がない
そして目の前が暗く暗転して、意識がぼんやりとし始めた
【意識が…いやだ…目の前が…暗く…】
「ごめんね…リア…」
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「行かなくちゃマズイ!」
一部始終を見たリアは急いでフィオラの元への空間の扉を開こうとした
「ここでなにをしているのかね?坊や。」
コツコツと階段を登ってきた男を見てみるとそれはボーゲン長官だった
「ここは職員以外は立ち入り禁止なんだ。君はクライン殿と一緒に待機させていたはずだが?」
その鋭い目つきは子供に向けるような優しさを含まない、冷酷さを象徴するかのようだった
【前にはこの人、後ろにはヘイスさん…】
「そうですね…実は…」
頭の中にはどうにか欺いて前に進む。そのことしか思い浮かばなかった。
"転送"
「ちょっと通してもらいます!」
目の前の彼に向かって走り出したリアは自分の目の前の空間に穴を作った。
「ほう。これは興味深い…」
ボーゲンは口角をあげながら振り返って再び地下への階段を降り始めた
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その穴に飛び込んだ先にはさっきまで見ていた2人が居た
フィオラの頭を踏みつける短い茶髪の女を勢いそのままに吹き飛ばした
"風破"
「ぐはぁっ、、!」
そして彼女は向かいの壁に鈍い音を立てて激突した
「大丈夫!?フィオラ!」
地面に倒れ込んでいる血塗れの少女に駆け寄る
「リ、ア…」
「足り…ない…」
フィオラは今にも消え入りそうな弱々しい小さな声を震わせながら絞り出した
「足りない?血か、!」
「いいよ吸って!」
リアは腕を捲ってフィオラの口元にあてる
彼女の歯が段々と伸びて牙の形へと変わり、目の前の肉へと弱く、優しくかぶりついた
「痛いじゃない、!この私、8番をこんな目に遭わせて…背中が痛いじゃない!」
彼女は壁に掛かっていた鞭を手に取り、リアとフィオラに向かってそれを打ち始めた
「ガキ2人が、!くらいなさい!」
「この子達の邪魔はさせない!」
"乱風"
高速で放たれた一撃はクレアのウィンドローテを容易く打ち消し、リアの背中の肉を熱く痛めつけた
パシィィッンと鋭い音を発しながらその後にはリアの苦痛の声が鳴り響いた
「っだぁ!」
「リア、駄目よ…あの武器、ウィンドローテじゃ相性が悪い!」
「まだまだこんなもんじゃないわよ!」
次の高速の一撃がフィオラ向かって放たれた
「自分で喰らっとけ!」
"空間ノ扉"
音速を超えるその鞭が当たった先はその鞭を手に持つ彼女だった
「っだぁ゛!」
背中に走る衝撃とその熱に思わず8番は膝から崩れ落ちた
「なにが…どうなって、!?」
状況を飲み込めない彼女にリアは言い放つ
「あなたの背後と攻撃の延長線上を繋ぐ空間を作っただけです。」
彼女を強く睨めつけながら話しているうちにフィオラも意識はまだ無いが、傷口も塞がって身体が治っていった
「なるほど、権者というわけね。」
「だけどねこの陣の中では無駄よ」
全ての壁に描かれた陣が一斉に光り始めた
そして壁からはどこか嗅いだことのある匂いがする無数の赤い鎖が伸びてリアとフィオラを宙吊りに拘束した
まばたき1つで行われたその速さに呆気に取られたが、リアはすぐに鎖を破壊しようと試みた
"火斬撃"
自らの身体に当たらないように細かく計算されたその一撃は鎖に触れた瞬間にフワッと消えて空気になってしまった
「は、?今、当たって…」
目の前で起きた光景に唖然としていると目の前の女がゆっくりと部屋に靴の音を鳴らしながら歩き寄ってきた
「無駄よ。そんな攻撃じゃこの鎖は断ち切れない」
「この魔法陣はね特別製なの」
「魔法を描くということを世界で初めて試みた彼女の作品なのだから…」
「あんたみたいなおチビさんに壊せるわけないでしょっ!」
彼女は目の前に吊るされたリアの鎖を引っ張ってその体を強く締め付けた
「がぁ゛ぅっぁ゛!」
全身を圧縮されるような痛みに思わず苦痛の声を上げた




