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第35話 負傷退場によりデート終了?

「ていうか、!こんな包帯巻いてたらデートどころじゃないじゃん!」


包帯を巻かれ終わったところに彼女は口を出した


「仕方ないんじゃない?頭ぶつけてたから安静にしとかないと…」

「なんだったらこのまま家まで送るけど?」


「それだけはまだだめ!」


突拍子に大きな声をあげたヨルギスにソウタは目を見開いた


「どうしたんだ?急に…」


そんな風に少し引いていると彼女も無意識的にやってしまったことに、はっ!としていた


「な、なんでもない!」

【この人のことを巻き込むわけには…】

「そうだね…もし今はこうでも後々倒れたりしたら大変だもんね…」

【帰ったら…またママに…】


私は家のことを思い出すとそれと同時にお母さんの顔も思い浮かんでくる。別に嫌いってわけじゃない、昔はよく一緒に遊んでくれたし、ママの作る料理だって大好きだった。


そんな気持ちが顔に出ていたのか、彼は心配そうに私を気にかけてきた


「なにか悩みがあるなら聞くけど…?」


「ううん、なんでもない!それよりも今日はごめんなさい…せっかく誘ってくれたのに…」

「それじゃあ…たぶん迎えの人ならすぐ近くに居ると思うから。じゃあね…」


そう悲しそうに去っていくヨルギスの後ろ姿を見ていたソウタは反射的に彼女の手首を掴んでいた


もちろんなにか考えていたわけではなかったので、振り向いてきたヨルギスにかける言葉なんて用意していなかった


「なに…?」


今にも泣き出しそうな彼女の顔を見てソウタはヨルギスをその腕力で引き寄せた


「わっ!」と驚く彼女の目を見て彼はその目に決意を込めながら語り始めた


「出会ってまだほんの少ししか経っていなくても今こうしてデートまでしてるんだ!」

「悩んでいることがあるなら教えてくれ!」

「頼む!1人で抱え込まないでくれ!さっきまでの感じだときっと家になにかあるんだろ?」

「俺だって昔家族に束縛されてた…。それに誰か他の人に頼ることもできない、1人じゃどうしようもできないのに!」


グイグイとその羅列された言葉は彼女の頭に次々と流れ込み、あきらかに身体が震えているのが見てとれた


「だったら、どうすれば良いって言うの…!お母さんに勇気を出して抵抗してもあっけなく一蹴されて…」

「無駄なんだよ…」


ヨルギスは醜い泣き顔を晒しながら歯を食いしばるように、心の中のしがらみに苦しむようにガクッと膝をついて地面に泣き沈んだ


「俺を見ろ…」


そう呟くソウタの声が聞こえて地面にひたすら涙を溢していたそのうるうるとした目を頭からあげ、屈んで手を差し伸べるソウタを見上げた


「俺は下なんか見てないぞ。前を見てる。だけど俺も人間だから辛い時もあるし悲しい時もある、それは1人で解決出来るものもあればできないものもあると思う。」


そんな彼の言葉は少しずつ…ゆっくりとヨルギスの心を温めるように温もりを与えていった…


【なに…なんなの…この温かさは…。】


「そんなときは周りの人を頼れ。信頼できる家族の誰かでも使用人でも俺みたいな騎士でもいい…」

「だから今は俺に打ち明けてくれ、頼ってくれ、まだデートは終わってないんだ、!今は俺を頼ってくれ!一緒に悩ませてくれ!」


そんなソウタの言葉に応えるように彼女は彼の手を取った


「私の騎士になってくれますか…?」


彼女はまだ手を取っても不安を拭い切れないのかその手は自然に震えていた


「俺はヨルギスだけの騎士にはなれない…俺はみんなの騎士だから…でも、ソウタというたった1人の人間はヨルギスのための味方だよ!」


彼の返答にヨルギスは口角を上げて泣きっ面を無理矢理笑わせて反応した


「そこは嘘でも'はい!'って答えなきゃいけないところだよ?」


「自分、不器用ですから。」


「なに?急に?誰かのモノマネ?笑」

「あまりふざけてると味方解雇するよ?」


ソウタの作った渋い声につい表情も緩んでいき、遂に冗談まで言えるようにもなった


「それは困るな!助けられなくなる!」


彼もつられるように笑いながら、その場に張り詰めていた空気は和まされてヨルギスもさっきまてあった母親への気持ちも自然と落ち着いていた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


現在


夜になりヨルギスとノースは寝る準備を終えてそれぞれのベッドに入っていた


まだ寒い季節ではないが、一枚の薄い掛け布団じゃ足りないほどに夜は冷えるようになってきた


【おー…さむぅ…】

【ノースにはとりあえず私の上着追加で着させてるから大丈夫だと思うけど…】


そのままノースを見るとすぅすぅと寝息を立ててもう寝ているようだった


【大丈夫みたい…】

【明日はまた依頼を受けて、物件探して、って大変だなぁ…】

【ノースも段々依頼手伝えるようにもなってきたし、家出した時に比べたらだいぶ楽だよね…】


そのままヨルギスは薄い布団に包まりながら真っ暗な天井を見つめた、窓のカーテンの隙間からは月明かりが差していて次にその窓の方を見た


【ソウタたちは元気にしてるかな…】


彼女は昔のことを少し思い返したことでソウタへの気持ちがぶり返してきたように感じた


【まぁ…あの2人なら無事に家まで帰れるよね…】

【ふぁーーぁ…ねむ…】


今日一日の疲れがどっと押し寄せるようにヨルギスの意識は遠く真っ暗な暗闇の中へと沈んでいった…

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