第22話 未来の信徒'悲哀'襲撃
目を覚ますと元の部屋に戻っていた、そして目の前には銀髪の魔女が手を後ろに組んで立っていた
「どうだったかな?君の、リアの始まりは」
「私も見たけどまさかバルバトスが絡んでいたとは、あの時の赤ん坊とは君のことだったということね」
「あなたに聞きたいことがあります・・」
「どうせなら親しみを込めてソロモンと呼んでほしいわね」
「まぁよろしい、なにが聞きたいのでしょう?」
リアは俯きながら質問する
「僕はr-711なんでしょう?」
「えぇそうなります。あなたはあの両親の本当の子ではなく、ただの過去の人間のホムンクルス、人工生命体。」
「それでも君の両親は君にリアという名前を与えて、感情さえも与えてみせた、それをみると君は幸せ者ですよ」
「僕もそう思います・・・」
「それで全部ですか?」
「あと2つお願いします」
「r-682はどこにいるのか、そして・・」
「バルバトスさんに会いたいです」
「君と一緒にいたもう片方の実験体は既に君と会っているはずよ」
「確かノースと呼ばれている男の子ね」
「ノース!?」
それはまさに最近、両親と再会した時に青髪の魔法使いと一緒にいたリアとそう年の変わらない男の子だった
「そしてもう片方のことだけど、それはできません」
「どうしてですか!?」
「彼女はお茶会に呼び出された後、すぐに戻ったんだけど既にあなたたちはその場から離れてしまっていたからすぐに探したの」
「そして彼女はノースの方を先に見つけたけれのだけれど、ワタシよりも他の人の方があの赤ん坊たちにとって良いかもしれない・・・。そう思ってあなたの方も確認した後、1人でまた自然に戻って行ったわ」
「今のあなたが彼女に会ってみたいと思う気持ちはわかる、だけど彼女はもう定期的なお茶会以外で私の呼びかけに応じる事はないわ・・」
「じゃあ、どこに行けばバルバトスさんに会えますか!?」
リアが立ち上がってソロモンに詰め寄る
「そうね、居場所はわかるけどあなたが行くにはここからはあまりにも遠すぎるわ」
「ちなみに今どこに?」
「うーん、リーナスとグーシチナの国境沿いの山脈で走り回ってるわね…。相変わらず自然の中で暮らしてるみたいね」
「それってここから・・」
「ざっと1500km以上はあるわね、今から行ったとしても彼女は自由奔放だからもう他の場所に行ってるでしょうね・・・」
すると突然部屋の扉が開かれる
「みんな居る!?」
そしてサイラが息を切らしながら入ってきた
「今、私がお喋りしているの、邪魔しないでくれないかしら?礼儀のない人はお呼びじゃないわ・・・」
するとソロモンは指を鳴らそうと指を重ねる
それが良い結果を生まないことを一同は容易に想像できた
コーティスとロノアは仲間のために恐怖を無理矢理押さえつけて剣を抜く
【やっぱりこういうことになるか!?最初から話が通じるなんて思わないさ!】
そして有無を言わさずソロモンに斬りかかった
「はぁ、残念ね。」
パチンッ!
指が鳴らされたのと同時、その場にいたソロモンとリア、そしてフィオラ以外の全員が消えた
「大丈夫よ遺跡の外に出てもらっただけだから」
「どうして私たちだけ?」
フィオラが少し震えながら聞く
「そうね、あなたたちからは面白い未来が見えたわ」
「あなたたちはこれからとてつもないことを経験するわ」
「そんなあなたたちに私からのプレゼントよ」
「おいで・・」
そういうと2人を目の前に来させてリアとフィオラの額に手のひらを当てる
「ホムンクルスと吸血鬼、あなたたちがどんな道を歩むのか、私は楽しみにしてるわ」
と屈託のない笑みを浮かべて手を離す
そして再び手を後ろに組んで話し始める
「今、外では未来の信徒と呼ばれる人たちによって先程の人たちとこの遺跡に入って来なかった人たちが襲撃されているわ」
「目的はリア、君とフィオラ、そうまさに彼らが欲しがっているのは君たちの大量の血だ」
「もちろん私はフィオラ、君の過去についても知っている、君の知らないところまでね」
「急になにを!?」
フィオラが驚いてソロモンに近づこうとするとソロモンは指をパチンと鳴らして透明な膜にリアとフィオラを閉じ込める
「これからこの遺跡は別の場所に移動させるからここから出ていってもらいます、それじゃあ機会があればまた会いましょう」
再びソロモンが指を鳴らすとリアとフィオラは遺跡の外に出ていて、再び遺跡に入ろうとする前に遺跡が白く輝いて光が晴れるころには既に遺跡は消えてなくなっていてただの森になっていた
「これは・・どういう・・・」
リアが顎に手を当てて考えていると遠くから悲鳴が聞こえてきた
「リア!そういえば襲撃されてるって!」
「うん、行こう!」
そして2人は悲鳴の聞こえた方へ走り出した
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ヘイスやコーティスたちが外へ追い出されると目の前には血の惨劇が広がっていた、そこらじゅうに兵士の死体や怪我で動かない人々が散らばっており、中にはコティーズのメンバーのエヴァンやテイル、ハスミが含まれていた。テイルの血濡れた右手には一枚の布が握られていた。その3人は既に事切れているようで、その光景を見た他のメンバーは受け入れられない現実に吐き気を催した。そして兵士を含むそれらの死体はどれもこれも防御をする暇がなかったのように一方的な傷跡であり。切られた跡、焼かれた跡・・・
その中、生き残った兵士は顔を隠すマスクに謎の装束の剣士や魔法使いと交戦しているようだった
「これは、どうなって・・・」
コーティスが目の前の光景を信じることができず、膝をついて胃から込み上げてくる何かを必死に押さえていると
「コーティスさん!」
マヤとマルタが何者かから逃げるように泣きながら駆け寄ってきた
そしてその後ろには青紫色の髪をした目を閉じている男性がどこのものかわからないが教会の装束を着て歩いてきた
「あれ?君たち突然出てきましたね?」
「まぁいいです、はやく吸血鬼とその近くにいる子供を連れて来て渡しなさい。」
その姿を見たヘイスが怒りに声を震わせて問いかける
「誰だ貴様、貴様がこれをやったのか?」
「すみません申し遅れましたね私は未来と信徒、悲哀のオロバス・ペコハーと申します」
「この方々は悲しいかな、私のお願いを聞いてくれないので、せめて楽に終着点へと送って差し上げました・・」
「あぁ、なんと私は慈愛に満ち溢れているのでしょう!」
そう言いながら彼の目は開かれて涙がこぼれ落ちる
その目は全く見えていない、彼は盲目を患っているように見えた
「お前、目が見えないんだな?」
コーティスが剣を抜きながら問いかける
すると彼は顔に手を当てながら
「えぇ、これは神からの贈り物なのです、私にこの穢らわしい世界を見せないように神が!与えてくださった祝福なのです!世界を見なくて良い私はこの世界で苦しむ方々を終わりへ導く義務があるのです!」
と指と指の隙間から目を覗かせる
「貴様の戯言は聞くに堪えないな・・・」
ヘイスが剣を抜いて水の領域を張る
"水源領域"
「あぁ悲しいかな、あなたたちまでも私のお願いを聞いてくださらないとは、いいでしょう。」
「あなた方も神の待つ終わりへと導いてあげましょう!」
すると彼のうしろから独特の装束を着た剣士や魔法使いたちがヘイスたちへと襲いかかる
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ガラガラガラガラ
「そろそろ着くわね」
とある馬車の中、ソウタとクリスは馬車に乗って元いた村へと帰っていた
「そうだな、リアならきっとやり遂げられる、俺たちの自慢の息子なんだからな!」
「ええ!そうね!」
そう2人が談笑していると御者が大きく声を上げた
「なんだありぁ!」
その声にソウタは咄嗟に窓から身を乗り出して村の方を見る
「なっ!どうして・・!」
そのには真っ赤に燃えている村と逃げ惑う人々を切り刻む全身装束の人物たちがいた
「お客さん!どうします!?」
ソウタはクリスの不安そうな顔を見て決断する
「妻を連れてオンセーンまで逃げてください!」
「ちょとソウタ!?」
クリスが席から立ち上がりソウタに詰め寄る
「大丈夫だから!クリスはオンセーンまで行ってギルドに緊急依頼を出して欲しい」
「そんなの、私、またなにもできないじゃない!」
「これはクリスにしかできない、助けを求める事だって立派に俺のためになる!」
「頼む!どうか俺を助けて欲しい!」
ソウタはクリスの両手を握って目を見つめる
数秒それを続けたあと根負けしたクリスが言う
「わかったわよ!やってやるわよ!」
「ありがとう!愛してる!」
ソウタはクリスにキスをして剣を取り窓から飛び出す
「なゃっ!」
突然の愛してるに顔を赤くしたクリスは'はぁー!'と顔を手で覆ってしまった
「オンセーンまで行ってください!」
「おう!わかった、気をつけてくだせぇお客さん!」
と御者はいうと馬を動かして来た道を戻ってオンセーンへの道を移動した
「はやく行かないと、1人でも多く!」
ソウタは全力で走り出して焼かれている村を目指した
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リアとフィオラは襲撃場所の少し開けた平原に到着した、そして目の前には緑よりも赤が多く目立つ戦場が飛び込んだ
そして目の前にはリーダーと思われる男が腕の長さほどのハンマーを二つ持ちながらヘイスと戦っており、全身装束の人たちとはコーティスや他の兵士が応戦し、隻腕となったロノアも戦わなくてはならないほどの状況だった
「悲しいかな、悲しいかな、あなたは神から権利を与えられたというのになぜ人を導くことへ使わないのか、到底理解できません!」
「貴様と一緒にしないでもらいたい!私は人を助けるためにこの力を与えられたのだから!この力は貴様のような下衆を野放しにしないための力だ!私の部下たちに死んで詫びよ!」
ヘイスの上段からの振り下ろしをオロバスはハンマーをクロスさせて防御する
「ふー、それでは見せてあげましょう、私の権利を!愚かな人々を終わりへ導く神からの授かりものを!」
「悲哀が持つ権利を!」
"悲哀の女神像"
オロバスの背後に白く美しく輝く女神像が現れた
「それがなんだってんだ!」
コーティスがヘイスの横から飛び出して女神像を砕くような勢いで剣で切り付けて破壊しようとした瞬間
「だっ、!」
コーティスは女神像を袈裟に切り付けたのと同時に攻撃をくらった、それはコーティスが女神像に与えた傷の場所と一致しており、傷ついた女神像は瞬きの一瞬で完治してしまった
コーティスはその場に仰向けで倒れ込んで傷口から大量の鮮血が吹き出した
「コーティスさん!」
「コーティス!」
サイラやマヤ、マルタと近くで見ていたリアとフィオラがそう叫んでコーティスに駆け寄っていく
「ちょっと待って!」
「今治すから!」
フィオラが指の腹を切り、コーティスの傷口に触れると傷口がだんだんと塞がっていく
その様子を見ていたオロバスは突然大声をあげる
「おや?耳の形的にもドワーフかエルフと思っていましたが、もしやあなたが吸血鬼ですか?ということはそちらの男の子が実験体でしたか、あぁ、そちらから来ていただけるとはなんたる幸福!さぁ私たちと共に来て真なる終わりに向かおうではありませんか!」
コーティスの簡易的な治癒が終わり、フィオラはフードを外しオロバスに向かって魔法を使おうとして左手を向ける
その様子を見たリアは急いでフィオラにしがみついて腕を下ろさせる、フィオラは顔を赤くしながらもしがみつくリアを引き剥がそうとする
「ちょっとリア!?」
「駄目だフィオラ!さっきのコーティスを見たでしょ?怒る気持ちはわかるけどまずはあの攻撃を跳ね返すカラクリをどうにかしなくちゃ!」
攻撃を跳ね返す、いや、攻撃された箇所に同じ攻撃を全く同じ箇所に与えている。それもほぼ同時で・・、どっちだ・・・?
「怒る気持ちはわかる?はっはっは!いやーなるほど。ホムンクルスであるあなたが言いますか?すみません。つい笑ってしまいました。」
「ホムンクルスが感情を語るとは、なにかを履き違えていませんか?」
「ちなみに私自身を攻撃しても同じことが起きるだけですよ。」
「僕の感情が偽物だなんて言わせない、それになんでそんなこと教えるんです?」
リアがオロバスに怒りの雰囲気を纏わせながら剣を向けて語りかける
「ほー。ホムンクルスでも怒るのですね」
「そこまで露わに怒りを向けられるとは、悲しくなりますねー。」
「でしたらどうぞ試してみてください。あなたがどうなっても知りませんがね?」
そうしてオロバスはハンマーを地面に突き立てて両手を広げてリアに煽りを入れた




