第21話 リアの始まり
リアは箱の中のネックレスを手に取り、首からかけた
そして無意識に目から涙を流していた
「妖精の子のやりたいことは終わったみたいだね・・」
リアは涙を拭って後ろを振り向く
「こんにちは。私は魔女ソロモン・ロスヴァイセ・リーナス」
「君と妖精の子の感動の再会を作り出した魔女だ」
と言いながらお辞儀をする
その彼女の後ろには不安そうにこちらを見るフィオラとコーティス、左腕のないロノアが立っており、騎士団の人たちも立っていた
「もういいよ。水の君」
ソロモンはパチンと指を鳴らす
「頭は冷えたかな?君では私には勝てない、それが事実だ」
「あぁそうだな、だからといって部下を殺した貴様を許すつもりはない、そしてここで戦ってもなにかが変わるわけでもない・・・」
「私のことは許さなくて構わない、私は魔女なのだから」
「さて、君は私にたくさん聞きたいことがあるだろう、だけども私も暇ではないからね」
「ライアとしての君の記憶は彼女が教えてくれた、あとはリアとしての君のことについて・・・知りたいだろう、それにそこで怪我をしている君の仲間のこと、そこに置いてある2人の死体もね・・・」
「まわりを見てごらん?君以外の生きている人は私を見て怯えて震えている、完全な感情があるからだ」
「それに比べて君はどうだい?私を前にしても恐怖を感じず、震えすら起こさない、これがなにを意味するのか・・」
「それは君には完全な感情がないからだ、つまり、君は感情に欠けている、まぁ言うなれば心だ。今の君には人と並々変わらない感情はあるだろう、しかしそれは後付けのものにすぎない、根本は変わらず'無'だなにもない」
「君は君の、リア・クリエイトの始まりをなにも知らない」
「見てくるといい、君の、始まりを・・」
そう言うとソロモンは人差し指でリアの額を突いた
「おっとと、危ない」
ソロモンは倒れるリアの体を支えて壁に寄り掛からせる
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「r-659はもう駄目だな第二段階で生命反応が消えた」
そんな研究員の声が聞こえる薄暗い部屋の中、謎の液体に満たされたカプセルの中でそれは目を開けた
「r-711、生命反応出ました!」
1人の研究員が手元にある機械にいじりながら他の研究員を呼ぶ
「r-682以来だな一年ぶりくらいか・・」
「そのまま観察して栄養を与えろ、絶対に使い物にするなよ」
その研究員は目の前の研究員に圧をかけて部屋を出ていく
「はぁー・・、どうして俺こんな仕事やってんだろ、」
研究員はため息をついてボタンを押す
するとカプセル内に新たな液体が注ぎ込まれ、それをただ吸収していく
「今回は頭から精製されたか、これで今あるまともな個体は3体か・・・」
「この実験もいつになれば終わるんだろうな・・・」
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それからどれほどの月日が経ったのかわからない、ただ数時間おきに注がれる液体を吸収する日々が永遠と続き、目の前の研究員からはついに頬にほうれい線が浮かんできた
「あれから、何十年だ、?ようやく第四段階まできたか、」
それの体はもう手足や髪の毛まで生えてきており、見た目はもう、赤ちゃんほどのくらいになった
すると部屋のドアが開かれて1人の研究員と武装した人が3人、そして1人の一歳ほどの赤ん坊が歩いて入ってきた
「なにかようですか?r-682も連れてきているようですが、許可は、とっているようですね、」
その赤ん坊は10数秒部屋を見回った後、部屋を出ていった
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ドゴォーーン!!
さらに約一年後、突然研究所が騒然な爆発音と悲鳴に包まれた、その日は1ヶ月に一回、赤ん坊がこの部屋にやってくる日で、しっかりとその赤ん坊もその場にいた
「何事だ!?」
武装した3人のもとにその場にいた研究員があつまり、研究員は怯えて震えていた
その時、部屋の扉が開かれて1人の赤髪の魔女が入ってきた
「この部屋であってるかぁ?」
その女を見たのと同時に武装した人たちが剣を抜き盾を構える、そしてその人たちの後ろにたちながら研究員の1人が声を上げる
「なんだね君は!?」
「なんだよおっさん、そんなとこで隠れてないで出てきて話せよ!」
「まぁいいや、アタシかぁ?アタシは魔女バルバトス・スタールだ!」
「気持ちの悪ぃケンキュウ?をぶっ壊しにきたぜ!」
そう言うと彼女は腕を組んで仁王立ちする決めポーズをとる
「魔女だと!?聞いてないぞ!?なぜ魔女が未来の信徒である我々に敵対する!?協力関係じゃないのか!?」
もっとも年配な研究員がそう錯乱したように叫ぶとバルバトスは見に覚えがないように首を傾げていう
「アタシはそんなの知らねーぞ?まぁどーせガミジンあたりとつるんでんだろ?だってこんなケンキュウなんてするのアイツくらいだしな」
再び年配の研究員が問いかける
「仲間じゃないのか・・?」
「仲間じゃねーよ」
「魔女会ってのはたまに集まって茶飲むだけだ」
「アタシたちはお互い結束したりしねぇし何か一つの目標目指して進むわけでもねぇ」
「お前らが魔女の誰かと組んだからって魔女会が味方になるわけじゃねぇってことだよ!」
そう言うと彼女は右手を握りしめてその手が赤く輝く
「だからアタシは誰かのことなんて知ったこっちゃねぇ!」
「気に食わないやつはぶっ壊すだけだ!」
「アタシは・・・自由だからな!」
そして彼女は地面に拳を叩き込み地面に亀裂が入りそれは壁全体、そして部屋全体にヒビが入る
「なんだ!?これは!?」
研究員たちは錯乱状態になり、武装した3人は拳を地面に叩き込んだバルバトスにむかって剣を振りかざす
「アタシの邪魔をするヤツは誰でもあろうと容赦しねぇよ!」
バルバトスは2人の頭を鷲掴みにしてその2つの頭で残りの1人の頭を思い切り挟み込む、あまりの力に3人の頭は砕け飛び、バルバトスは返り血で真っ赤になる
次の瞬間、部屋全体が崩落してその場にいた研究員は瓦礫に押しつぶされて肉塊になり死亡した
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目を覚ますと外は夕方で何物かの脇腹と腕に挟み込まれていた
まわりを見ると山道をありえないほどの速さで走っているようだった
「お?こっちのガキも起きたか?」
もう片方にと赤ん坊が抱えられており、それはあの部屋にいたr-628だった
「勘違いすんじゃねぇぞガキども!アタシは別に助けたいから助けたんじゃねぇからな!」
「お前ら以外のやつらは瓦礫に潰されて死んだだろうよ」
「お前らはたまたま目の前にいたから助けただけだ!」
夕日に向かってさらに数分走ると
「そろそろ休むか・・・」
バルバトスは山の中にある湖の近くで止まり、焚き火を作って夜に備えた
彼女は上着を脱ぎ下着になって湖に潜ったそしてすぐに湖から飛び出してきて大きな魚を両手に持って帰ってきた
「よし!夕飯にするか!」
そうして彼女が魚を焼いていると
「あうー、」
r-628はお腹が空いたと言わんばかりに手をバタバタとさせてぐずり出した
「あ?なに言ってんだ?」
すると鳥が彼女の近くに飛んでくる
彼女のことだから鳥も食べるのかと思いきや、指を差し出して鳥を指の上に乗せて鳥と会話し出した、鳥はチュチュチュと泣いているのに対して彼女は普通の人間の言葉で話していた
「お腹が空いたんじゃないかって?」
「なるほどありがとな!お前にも少し分けてやるよ」
そう言うと彼女は焼き終わった魚の一部を手で取って鳥に食わせた
鳥は満足そうにチュチュと鳴いて遠くの空へと消えていった
「お前らもお腹は空くよなぁ・・・」
「魚、食うか?」
と言いながら魚串をr-628へと差し出す
「んーんー!」
r-628はその魚を嫌がってペシっと叩く
「あ、こら!食べ物はたくんじゃねぇ!」
「食わねぇならお前の飯はねぇからな!」
「うー、」
r-628は大人しく魚串をかじりながら食べて赤ん坊なのですぐにお腹いっぱいになってすやすやと寝始めた
「お前もお腹空いたろ?」
そしてr-771もバルバトスに魚串を差し出される
食べようとすると彼女は突然串を遠ざける
「あ、う?」
「お前ちょっと口開けてみろ」
と言いながら片手で優しく口を開けさせて口の中を見る
「やっぱり、お前はまだ歯が生えてねぇな」
「ちょっと待ってろ」
というとバルバトスは魚を小さく手でちぎって爪ほどの大きさの魚の肉を食べさせた
「口開けろ」
「あー」
空いた口に彼女からは指で魚を食わせて食べさせる
「これで合ってんのかなぁ?」
それを数回繰り返すと満腹になり、r-771もうとうとして寝始めた
「お前も寝たのか・・・」
そう言うと彼女は上着を脱いでr-711とr-628を包んで岩に背中を寄り掛からせてあぐらをかいた彼女の足の中に置いた
「お前らはぐっすり寝ろよー」
と2人の頭を撫でる
そして彼女は顔を上げる
そこには湖に空の星々が反射し、彼女の瞳にもそれが反射する、バルバトスは背伸びをして目の前の景色を目に焼き付ける
「綺麗だな・・・」
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それから彼女は2人の子供を連れて山道を駆けては自然を楽しみ、狩りをしては食べ、人から見ぐるみを剥いでいた山賊をぶん殴って山賊の金を奪っては、町に降りて必要な品物を買っていた
ある日彼女がオンセーンという町に来た時に事は起きた
「は?今から魔女会?待て!今アタシの腕に赤ん坊が!・・・」
全てを言い終わる前に彼女は一瞬で消えた
彼女は消える前になんとか2人を小さな2つの木箱にそれぞれ入れて消えていった
その荷物のうちの片方にはなにかの道具が入っており、その箱は配達のお兄さんに持ってかれて行った
そしてもう片方の箱、近くで馬車が走っており、その一部が荷物の山にぶつかって箱が倒れる、r-711は運良く怪我もなく地面に降り、まわりを見まわして歩き始めようとする
すると1人の女性が自分を見つけて駆け寄ってくる
「なんでこんな所に赤ちゃんが!?」
「どうした?クリス?」
そしてその後ろから男性が顔を覗かせる
「うぉ!赤ん坊?」
「そうみたいなの、親はどこかしら・・・」
「そうだなぁ、とりあえず町のギルドに行ってこのことを伝えてみるよ」
「ありがとう、じゃあ私は先に宿に戻ってこの子と待ってるから」
「わかった気をつけろよ」
「はーい」
女性は男性に手を振って歩き始めた
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それから2日後
宿の部屋の一室で部屋の扉が開く
「駄目だな見つからねぇ」
クリスは思い切ったように男性に詰め寄って話し始める
「そう、だったらいっそ私たちで育てましょうよ!」
「は?」
突然の申し出に彼はは?としか言いようがなく混乱していた
「だって、その、私たち全然できないじゃない?、」
「いや、それは、その・・」
すると彼女は彼に上目遣いで詰め寄っておねがいする
「ね?いいでしょ?」
「し、仕方がないなぁ、」
そういうと彼女は赤ん坊を高らかと上げて喜ぶ
「やったぁー!」
「これからよろしくねリア!」
「もう名前つけたのか・・・」
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