第17話 細胞の追憶
そうして話し合いは進み夜も遅くなって報告会は終了しそれぞれ部屋へと戻った
薄暗い部屋の中には机の上にランタンが一つある
そのランタンの灯りを消してリアとフィオラは今夜も同じベッドで眠る、ただなにかをするわけでもなく2人は深い眠りについた
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リアは眠っていたはずだった、ただ目を覚ますと目の前には見たことのないような木々が生い茂る森の中に居た
「ここは・・?」
辺りを見渡すもやはり知らない場所
しかし周りを見たことで木々の間をを飛んでいる何かを見つける
一瞬しか見えなかったがそれは小さな精霊だった
「精霊・・!?」
「いや、そんなの空想の生物じゃなかったのか!?」
リアは突然のことに驚きつつもそのあとを走って追っていく
「ハァハァ、!、」
どれだけ走ったかわからない、それは5分くらいの短い時間にも思えたが何時間も走っていたかのようにも思えた
「どこ、いった、!」
そのときリアの体を風が包む
それは暖かくもあり、冷たくも感じた
すると辺りに声が響き渡る
なにか長文で伝えようとしているわけでもなくただ同じ言葉を繰り返していた
「私を見つけて・・」
「私を見つけて・・」
その言葉には怒り、憎悪
「私を見つけて・・」
「私を見つけて・・」
そして悲しみ、懇願
「私を見つけて・・」
最後には消えるように・・
すると突然耳元で囁かれたかのように感じ、後ろを振り返る、そこには目は黒く淀み、血涙が流れ、肌は青白く、髪と思われるものもボサボサで妖精というより怨霊のようななんとも悍ましい顔をし、
薄い緑色の羽はズタズタに引き裂かれ、体には治療不可能だとひと目でわかる大火傷が広がって顔にも到達していた小さな小さな手のひらサイズの女の子だった
「ワタシヲ、ミツケテ・・」
一筋の血涙が頬からこぼれ落ち
ゴリュ、と鈍い音をたてながらその子は頭がありえない方向へと曲がり塵となって消えていく
それと同時に空が灰色の雲に覆われ森に風が吹き荒れる、しかし動物などの他の音は聞こえない
静かで、騒々しい森は冷たく、冷たく、ただ冷たい風がリアの体を包み、突如リアの体が吹き飛ばされるほどの突風が襲いかかり木々の枝に突っ切りながらも、目を開けるととある場所にたどり着いた
そこは古い遺跡のようだった、見た目はとても小さく、見える部分は入り口のみ、近づいて入り口の奥を見ると、下へと続く階段が闇の向こうまで続いていた
周りを見渡して火の魔法であたりを照らし、唾を飲み恐る恐る、一段、また一段と降りていく、
遺跡の中は湿っぽく、足元や壁には苔が生い茂っている
降り続けてどれくらい経ったかもわからなくなったころ、階段を降り切ると今度は長い通路が続いている
その通路を壁をつたいながら進んでいく
「あなたは、◼️◼️◼️じゃない、」
「なのに、なんで◼️◼️◼️を感じるの?」
突如薄暗い通路内に先程と同じ声が悲しそうに響き渡った
【響いた声のせいか少し聞き取り辛いな】
【声のした方向は・・、奥からか】
リアはさらに奥に進んでいく
すると突然リアは激しい頭痛に襲われる
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痛みが治って顔を見上げるとそこには緑髪で薄い緑色の羽をした小さな女の子の妖精がこちらの顔を覗いていた
辺りを見渡すと野原が広がっていた、服も着ていた服と違うものだった
女の子の妖精は心配そうに◼️◼️◼️に呼びかける
「◼️◼️◼️、大丈夫?」
リアはその名前を聞き取れなかった、いや、理解できなかった
そしてその女の子は先ほど遺跡でみた妖精と似ていた
「本当に大丈夫?顔色悪いよ?」
他の言葉は聞こえないが◼️◼️◼️
この単語だけはなぜだか受け付けることができずに理解できなかった
リアはなにか言葉を発そうとしたが話すことができなかった、しかし口は自然と動いた
まるで誰かの視点を見ているだけかのように
「大丈夫、ちょっと頭痛がしただけ、」
「そう?でも念のために少し休もう?」
「うん、」
◼️◼️◼️は近くの木陰に入って木にもたれて座った
妖精は膝の上に座っている
「◼️◼️◼️、私と居たら駄目だよ」
「これ以上、あなたに迷惑をかけたくない、」
と言い妖精は泣き始める
「クレア、俺がやりたくてやってるんだから、」
「それに俺だって権者なんだから、負けないよ」
「だからと言って、!」
◼️◼️◼️はその妖精を優しく掴んだ
「俺がなんでクレアを守るのかわかる?」
「え、そんなの・・、」
「俺が、クレア、君のことが大好きだから」
妖精は手から抜け出して顔の目の前まで飛翔する
「もう///、そんな冗談、何回も聞いたわよ!」
クレアは赤面しながらも腕組みをした
「冗談なんかじゃないよ、」
「え?」
◼️◼️◼️がそう呟くとクレアが聞き返す
「今、なんで言ったの?」
「いや、なんでもないよ」
「俺のすることは変わらない、これだけは絶対に成し遂げなくちゃならないんだ、たとえクレアが嫌がっても、それでも俺は君を守るよ」
クレアは◼️◼️◼️の頬にそっとキスして
「その言葉、撤回したらぶっ飛ばしてやるんだからね!」
「うん!任せろ!」
「絶対に守ってやるから、」
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再び頭痛がリアを襲い再び薄暗い廊下に戻ってきた
「なんだったんだ、今の、」
リアは少しの疲労感に襲われながらも前に再び歩きだした
【あれは幻覚、だったのか?】
そうしていると通路を抜けて広い部屋へと出てきた
壁にはさまざまな彫刻や見たことのない文字が書かれていたり絵が描かれていたりしていた
そして部屋の中央には小さな木箱が台座の上に置かれていた
その箱に近づこうとすると火の光が奥まで届いて一枚の巨大な絵が浮かび上がってきた
「これは、!」
そこには大部分が剥がれ落ちている1人の人物が描かれていた
その絵が描かれている壁には見たことのない文字が所々劣化により読めないながらも刻まれていた
【?、なんでだ?】
【見たことないはずなのに、なんで、読めるんだ、!?】
【と、とりあえず読んでみるか、】
これを読ーーいる人へ
箱を開ける前に読ーーください。
そーーないとあなたが危ーです
私はもうこれ以上大切ーーーー失いたくない
このー界が嫌ーー私を拒む人たーーーーー大嫌い大嫌ー
だけどーまだやるーーーーが私にはあります。
それはこの壁ー描かれているーーーーーです、
コイツは私ーーーを滅ぼし、私の大切な人を奪ったーーーーーーーーーーです。そしてコイツは私のーー滅茶苦茶にしたーーーーーーーーー
すべての文字を読み終わり後ろの木箱を手に取ろうと手を伸ばす
すると視界がぼやけ始め聞き慣れた声が聞こえてきた
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「リア!そろそろ起きないとご飯食べられないよ!」
リアが目を覚ます木造の天井と体をゆするフィオラがいた
「あ、起きた」
「おはよう」
「先に行ってるから早く来てよ?」
「あぁ、うん、」
フィオラがフードを被って部屋を出ていき、リアだけが静かな部屋に残された
「あれは、夢、?」
「それにしてはやけにハッキリと覚えてるな、」
「ふぅ、今なにか考えてもしょうがない、ご飯、食べにいくかな」
リアは顔を洗って寝癖を直し服を着替え食堂へ向かった
食堂へ向かうともう全員揃っていた、しかしそこには見慣れない顔が1人、追加で座っていた
その人は昨日湖でワニの大群を討伐した青髪の騎士のヘイスだった
「おはようございます」
リアが全員に挨拶して席に座る
そして朝食のいただきますをしてご飯を食べ始める
ヘイスはコーティスと向かい合う形で食べており、こちらと話せるような位置にはなかった
コーティスとヘイスは今日の計画の確認をしているようで、ご飯はすぐに食べ終えていた
食事の時間が終了しコーティスが話し始める
「みんな聞いてくれ」
「これから1時間半後に森の入り口に集合ということになっているからそれまでに準備は終えて来てくれよ」
「時間厳守な!」
「詳しいことは向こうについてから追々伝えるから」
そういうとみんなそれぞれの部屋に戻り始める
リアも自分の部屋へ戻ろうとした時、ヘイスに呼び止められる
「君は確か昨日の子、だよね」
「名前、リアっていうんだよね?」
「えぇ、はいそうです」
「まだまだ見習いですが足を引っ張らないよう頑張るのでこれからよろしくお願いします!」
「うん!大丈夫だよ私がいるから気を負わずにリラックスして頑張ろう」
とさわやかな笑顔でヘイスは返す
ヘイスは食堂の時計を見て
「それじゃあ私も部下たちと準備があるからこれで失礼するよ」
「はい!今日はよろしくお願いします」
とリアは返し、ヘイスは軽く手を振って宿から出ていった
【さて、僕も準備しなくちゃな、】
リアは自分の部屋へ戻り、支度を始めるのだった
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コティーズとヘイスとその部下たちの兵士が森の入り口に集まった
コーティスとヘイスが前に立ち今日の計画について話している
「・・・というわけなので、我々はお互いが常に見える位置に居ながら遺跡を捜索する」
「発見次第、まわりの人に伝え、全員を集める」
「以上がこれからの行動となる」
次にコーティスが口を開く
「もちろん森には魔物がいる、もし遭遇したらまわりの人間を集めて討伐すること、決して1人で戦おうとするなよ?あとそのことをちゃんとまわりの人に伝えること」
「そうすれば広い範囲を短時間で捜索できる」
「それじゃあ出発するぞ!」
コーティスの喝と同時に兵士が足をそろえて返事する
「おおー!」
コティーズの面々は少し遅れながらも
「おー!」
と返す
そして一行は森の中へと入ってとりあえず密林地帯を見つけるために歩き始める
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森に入ってしばらくした頃
「魔獣だ!二体!応援頼む!」
とマルタの近くの兵士が叫んだ
「よりにもよって僕の方!?」
と言いつつもその兵士の元へ走り交戦している狼型魔獣に魔法を放つ
"氷弾"
魔獣の一匹を氷の塊で貫き、完全に戦闘不能にさせる
【やった、!修行の成果!】
と喜ぶのも束の間、もう一匹の魔獣が標的を変えてマルタに鋭い牙を剥き出しにして襲いかかる
「近接は無理だってー!」
と噛みつきを紙一重で避けるも立て続けに鋭い爪がマルタの背中を掠める
「いっ、!!」
痛みを覚えたのも束の間、魔獣はマルタの肉を噛みちぎろうと飛びかかる
「わぁぁーー!ー!、」
マルタが叫んだのと同時、応援に駆けつけた茶髪の女騎士が魔獣の首を一刀両断する、辺りには魔獣の赤い血が飛散しマルタにもその一部がかかる
目の前で起きた光景に唖然としているマルタに向かって兵士が一枚のハンカチを差し出す
「血、かかっちゃったわね。背中の怪我は大丈夫?」
「え?僕は大丈夫。助けてくれてありがとう!」
「本当に、食べられちゃうかと思ったよ・・」
「まあ、傷口は浅いみたいだし・・」
「あ、でも処置はしないと駄目だから!」
と言い彼女は鞄の中に手を入れて何かを探している
しかし・・
「どうかました?えっと・・?」
「リンよリン・メイア」
「それより、あの、ごめんなさい!その、包帯忘れたみたいで・・えっと?」
「あぁ!マルタ・テンノンです!どうぞ気軽にマルタと呼んでくれれば」
「マルタね、それよりちょっと!そこのあなた!」
とリンは襲われていた兵士を呼ぶ
「はい!」
「先程は助けていただきありがとうございましたお二人とも!」
と兵士は2人にお辞儀をする
「お礼はいいの、それより包帯貸してくれないかしら?」
「もちろんです!予備の分もありますのでよろしければそのままどうぞ!」
「ありがとう。まわりももう先に行ってるから先に行ってていいわよ」
「ハッ!」
兵士は敬礼をして近くにいた兵士と合流し再び森の奥へと歩きだした
「ちょっと服脱いで」
「は!?」
と思わず大きな声を上げて顔を赤くしてしまった
「は?って服脱がないと包帯巻けないじゃない」
「え、あぁ!そうですよね!ありがとうございます!」
そうしてマルタは服を脱いでリンの処置を受けるのだった




