第16話 次の目的地ウィンパラへ
そうして僕たちは席に着いた
そしていつも通りにいただきますをした
そこまではいつも通り、しかしこの後から違った
「リア食べさせて」
隣に座っているフィオラがまた昨夜と同様に今度は食べさせてと迫ってきた
仕方ないなと思いつつも心のどこかであたたかい気持ちになりながらご飯を食べさせる
「おいしい?」
フィオラはもぐもぐして飲み込み
「リアがしてくれたんだから美味しいに決まってるじゃん!」
と満面の笑みを浮かべる
その破壊力は恐ろしいもので身体中の疲れだとかストレスだとか色々マイナスなものが全て吹き飛んだかのように思った、いや実際に飛んでいたかもしれない、
そんな仲睦まじい2人に他のみんなも癒され、普段は顔が固まっているように動かないロノアも少し口角を上げている、マルタはこれがてぇてぇというもの!と感動しエヴァンは両目を顔で覆って深呼吸をしている
テイルとマヤは天使たちだと言葉をこぼしながら天井を見上げて、ハスミは私もいつか素敵な男性と、と羨望の眼差しで見ている
そしてサイラもコーティスに同じことをし始めた
「私も食べさせて欲しいなー?」
とチラチラとコーティスのほうをサイラは見る
「あ、?」
コーティスはフォークから肉を皿に落として口をポカンとあけている
「わ・た・し!も!食べさせて欲しいなぁー?」
再びサイラはコーティスに頼むがコーティスは
「俺たちもう24になるんだぞ?」
サイラは反対の席にいるコーティスの肩を掴みながら
「歳なんか関係ないしまだまだ若いわよ?」
と張り付けたような笑顔で返す
コーティスはそんなサイラに少しビビリつつも渋々承諾した
コーティスはポテトを1つ取って食べさせる
「ほら、あーん」
サイラは身を前に乗り出してパクっとたべる
「これでいいか?」
「ちょっと待って、!」
サイラはコーティスのポテトを掴んでいた指先を手首から捕まえて少し塩のついた指先を艶やかにぺろっと舐め取り、フッと笑った
「っ、!」
コーティスはサイラの顔を一瞬見るとそのあと直視出来ずに大きく深呼吸する
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十数日後
いつものように夕飯をみんなで食べている時
テイルがコーティスの肩を叩いて呼びかける
「コーティス、そろそろ、」
その言葉でコーティスは席を立ち上がって全員に向かって話し始める
コーティスは咳払いをして話し始める
「コホン!えー、これから次に行く目的地について話していこうと思う!」
「このナーラにしばらく滞在して金も貯まったからそろそろ王都へ行くためにもこの町から出て次の目的地に向かって行く」
「これからは馬車を使って行動するから一気に王都へ近づく、ぶっちゃけいうとこのまま王都まで行くまでの金は足りるんだが、仕事で安定して金を得られるまでの滞在費がまだ足りない」
「向こうについて仕事も他の冒険者に取られて宿なしなんて嫌だろ?」
「それに伴ってさらにパーティランクも1つ上げようと思う」
そこでリアが挙手して質問する
「あの、この前パーティランクが上がったって言ってませんでした?」
コーティスは頭を掻きながら答える
「まぁ確かにそうなんだが、向こうでやってく上で、もう一つくらい上げておいた方が仕事を取りやすくなるんだ」
「なんせ王都なんて腕利きの冒険者なんてごまんといるからな、」
「なるほど」
「今、俺たちコティーズのランクはB1ランクだ次のA3ランクになるには遺跡をクリアしなければならない」
「これまでは依頼の達成数や魔物の討伐数だったがBから Aに上がるためには遺跡のクリアが条件なんだ、まぁ冒険者としての一種のボーダーラインだな、」
次はマルタが質問する
「はい!コーティスさん!遺跡のクリアってどれくらい難しいんですか?」
「まぁ遺跡にも難易度はあるがそれ自体は入ってみないとわからない、既にクリアしてある遺跡に行っても大した功績にはならない、もちろんそれで上がることもできるがかなり時間がかかるからどうせなら未開拓の遺跡に行ってついでに資金も宝物を回収して売って調達すればすぐにでも王都に行ける!」
サイラが挙手して質問する
「でも、そんな未開拓の遺跡なんてあるの?」
「それについてなんだが情報屋からもうリサーチ済みだ」
コーティスは地図を取り出して机に広げる
「ここから北北西に30キロ」
「この森の中に古い遺跡を近くの村の猟師が見つけたらしい」
「これ以上の情報はないが誰かに先を越される前に行くべきだと思わないか?」
「まぁいいんじゃないか?こんな機会そうそうないだろうし」
とエヴァンが言ったことで周りもそれに同意し頭を縦に振った
「それじゃあ、早速明日にでも荷造りして馬車で移動だ!」
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次の日
コティーズ一行は二手に分かれて馬車に乗り遺跡の近くの村を目指している
ナーラの町を出で北へと向かう街道を通り少しずつ道が左へと逸れていく、馬車で移動して4時間ほど時間が経った頃
湖の綺麗な村が見えてきた
「なにか見えてきましたよ!」
窓から外の景色を見ていたリアが同じ馬車内にいたフィオラ、ハスミ、テイル、ロノアに呼びかける
テイルは馬車の外に顔を覗かせてロノアに聞く
「あの村が?」
ロノアは地図を確認しながら
「あぁそうだろうな」
「俺たちが向かうウィンパラという村に違いない」
そんなことを話していると馬車は村に到着し、コーティスたちは村人から情報を聞き出しにいった
リアとフィオラは2人一緒に村を見てまわることにした
「僕たちはどうする?」
「うーん、さっき湖が見えたからそこに行ってみない?」
「ん、だったら行こうか」
2人が湖に向かって歩いていると重そうな鎧を着た人達が村人と話しているのを見かけた
どうやら村の人からなにか聞いているみたいでその手には地図が握られていた
【うわぁ、あんな鎧着てて疲れないのかなあ、】
【きっと滅茶苦茶鍛えてるんだろうな、】
【僕も結構鍛えてるんつもりなんだけどなぁ、】
そんなことを考えていると
「リア!着いたよ!」
フィオラの声に我にかえり顔をあげるとそこには水色の美しく大きな湖が広がっていた
「わぁ、遠くから見た時も大きいと思ったけど実際に近くで見ると圧巻だねー!」
「もう少し近くまで行こうか」
「うん!」
さらに湖に近づくと突如1人の鎧の兵士に呼び止められた
「ちょっと君たち!」
声のした方を見ると男性の兵士が走ってきた
フィオラはフードを深く被ってリアの後ろに隠れる
「どうかしましたか?」
「あぁ君たちはこの村の子供じゃないのかな?」
リアは質問を質問で返されたが特に怒ったりせずに受け答えする
「ええ、そうですけど、」
「今、水の権者 ヘイス・クライン様がこの湖に生息しているサルコンスクスという巨大ワニを掃討中なんだ」
「危険だから湖には近づかないよう村の人たちには知らせてあるんだけど、君たちは今この村に来たのかな?」
「はい僕たちは仲間たちと一緒にこの村の近くの遺跡に行くためにこの村に来ました」
「遺跡?あぁそれなら我々も同じだ」
「我々は本来、件の遺跡についての調査が任務だったのだが、」
兵士が話していると突如湖の水面が大きく動いた
そして湖から網を引っ張る青髪の兵士とは違う、騎士の制服を着た男性が出てきた
「ふぅー、」
「お疲れ様です!クライン様!」
兵士は男に敬礼をした
「お疲れ様もうワニは全部倒したよ」
「はいこれ」
そういうと男から巨大な水の手が出現して湖から網を引っ張り出して地面に置いた
その網はとても大きく、中に入っているワニはそのどれもが5m以上ありそれが何十匹もその網の中に入っていた
「あとは、」
さらに水の手を作り出して湖の中に入れると何かを引きずりそれを地面に寝かせた、そのワニは全長が20メートルを超えており、その体には傷が多く目立っていた
兵士は他の兵士を呼び巨大な荷車を持ってきてそのワニたちを運び出した
「すまないね、君たち、」
「私はこれから湖にまだ残ってるワニがいるかもしれないので確認に行く必要があってね、」
「それが終わるまでは湖には近づかないで欲しいかな、あぶないから」
「わかりました、がんばってください!」
リアは笑顔でヘイスに応援の言葉をかえす
ヘイスはウインクをして再び湖の中へ入っていった
「ふぅ、」
リアがため息を吐き後ろに隠れていたフィオラを見る
【権者・・・.】
【それに、青髪、?】
フィオラがそんなことを考えているとマヤとテイルが呼びかけてきた
「おーい!2人ともー!」
「情報は揃ったから一旦集合!」
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宿屋に着いて荷物を部屋に置き、全員が揃って報告会が始まった
長方形の長い机に村周辺の地図を広げてコーティスが司会を執る
「それじゃあまずは遺跡の場所について、ロノア頼む」
ロノアが指名され、席から起立し地図を指差す
指差した先は密林地帯のど真ん中だった
「俺が実際に遺跡を見たという村人に話を聞くには」
「手負いの獲物を追いかけて偶然見つけたらしい、詳しい場所まではわからないが植生的に密林地帯なのは確かだと言っていた」
「うんありがとうロノア」
そういうとロノアは着席し次の話題へと移り変わる
「明日は密林地帯まで行き、遺跡を捜索する」
「この密林地帯はさほど大きくないらしいから半日くらいで見つけられるだろう」
「見つけ次第準備を整えて遺跡に入る」
「遺跡の規模もわからないからキャンプセットは必須だな」
「そのための買い出しはもう終わらせてあるから良いとして、」
「大きな問題がある。」
そういうとコーティスはため息をついて頭を抱えてテーブルに手をつく
「みんなも村で見かけたと思うが、王都から兵士が来ている、」
「それってあの鎧を着た人たちのこと?」
ハスミが挙手しながら質問する
「ああそうだ、話をしたんだがどうやらアイツらも遺跡が目的らしい」
「それで未知の遺跡っていうのとお互いの利益のために共同して攻略することになった」
「俺らからしたらまぁありがたい話だが、問題は、」
もういうとコーティスはフィオラの方を向く
「私・・」
「ああそうだ、流石にフィオラのことを話すわけにはいかないし、万が一バレたら捕まるだろうし、フィオラがどうなるかも、」
「それに権者が相手となると・・」
そのときフィオラが机を両手で叩き真剣な眼差しで話す
「お願いですコーティスさん、私はなにがあっても、もうなにもできないままで居たくないの!」
【フィオラ、】
リアは感動で泣きそうになるもなんとか堪える
コーティスはハハッと笑いながら腰に手を当てて話しだす
「まぁそういうと思ったさ」
「だから、フィオラは遺跡内では常にフードを被ること、血の魔法を使わないこと、血を吸わないこと、あとはリアに関しても言えることだがあまり強い魔法は使うなよ」
「子供で魔法使えるなんてそうそうできるもんじゃねぇしな」
「お前たちは見習いってことにして行動してもらう、いいか?」
「わかりました」
「うん」




