第12話 誰も諦めない
ソウタ視点
コーティス戦勝利後
【コイツにはあの吸血鬼を誘い出すための餌になってもらう、あとはあの吸血鬼を始末すれば全部終わる、】
【コイツを交換条件に吸血鬼を殺す】
そしてこの男を回収して宿へ戻った
宿に戻ってコイツらの部屋を見に行くと既に荷物は無くなっていた
【コイツに結構時間使ったんだな】
と右手で引きずる男に目をやると男が目を覚ました
「ここは、?」
とまわりを見渡して俺に引きずられていることに気がつく
「まさかここまでずっと引きずってたのか?」
「?そうだが?」
「そうだが?じゃねぇよ!ケツ痛てぇんだけど!?」
「負けたんだからそれくらい我慢しろ、」
軽い会話を重ねた後リアを寝かしている部屋へ行く
「あのさぁ、体全身痛いから運んで貰えるのはありがてぇよ?」
「だけどさぁ、運び方ってもんがあるだろ!」
とこの男はキレ始めた
「じゃあお姫様抱っこでもするか?」
「え?、めちゃくちゃ嫌だ、」
そして俺はそのまま引きずりながら部屋へ向かう
「ちょ!段差気をつけ、て、痛ぁ!」
そのまま階段も引きずりながら登って扉の前に着いた
「お前鬼か!」
そしてドアノブに手をかける
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フィオラ視点
私たちは荷物を回収して宿屋の入り口が見える位置に隠れていた
私たちが隠れ始めて十数分後、
【来た、!】
宿屋と入り口にはソウタが気絶しているコーティスを引きずり入って行った、その後にクリスとクリスにおぶられたリア、そしてヨルギスとノースが順に入って行った
「コーティスは負けたみたいね、」
とサイラさんが言う
「コーティスでも敵わないのか、」
とエヴァンは静かに自分の太腿を叩く
「これからどうします?」
とマルタが皆に問いかける
そして間髪入れずに私が
「そんなの決まってます、!」
「リアを取り返します!」
と立ち上がりながら拳を握る
「コーティスもね、」
と手を頭に当ててやれやれとでも言いたげにサイラは言う
【ほんとにこの子・・、】
「それじゃあどうするか作戦会議しましょう」
「まずはどうやってコーティスとリアを取り返すか、」
テイルが立ち上がり口を開く
「そんなの堂々と真っ正面から取り返せば良いだろ!」
「却下」
「さっきの戦いを見たでしょう?今の私たちじゃ戦えても怪我人がでるわ、それに街のど真ん中でそんなことできますか!」
とサイラが一蹴するすると
ハスミが手を挙げて口を開く
「そうですね、まずは彼らを尾行して動向を探るのが良いと思います。」
「そうね。彼らの動きを把握しておくのは大事ね、」
とサイラがハスミの意見を取り入れる
「それじゃあ俺が常に見張っておこう」
とロノアが見張り役に立候補する
それに続いてマルタも言う
「それじゃあ俺も手伝いますよ!」
「いや、見張り役は多いと目立つ」
「そんなぁ、」
とマルタはしょぼれてしまった、そんなマルタを慰めるようにロノアは
「まぁ、見張ってる間に食料とか調達してくれるとありがたいがな、」
「ロノアさーん、!」
と目を輝かせながらマルタはロノアの手を取り激しく上下に握手する
ロノア視点
あれからそれぞれ別の宿屋を探すグループと見張りグループ、そして依頼グループに分かれた
依頼は主に金を集めるためだ、金はあることに越したことはないからな
そして見張り役の俺は宿屋の入り口が見える位置で隠れながらヤツらが出てくるのを待つ
待ち続けて3時間が経った頃、マルタが昼食を持ってきた
「どうぞロノアさん」
「そこの露店でパンを買ってきました、あともちろん牛乳も!」
「?なんだこの組み合わせ?」
とロノアは差し出されたご飯に疑問を抱く
「パンは良いが普通に肉串とか焼き魚とかあっただろう?」
するとマルタは自慢げに話す
「知らないんですか?見張りと言ったらパンと牛乳じゃないですか?」
「なんだそれ?」
「え!?知らないんですか!有名な小説のワンシーンですよ!街の衛兵が見張りの時にパンと牛乳を食べるんです!」
「悪い、小説は読まないんだ、」
「そうなんですか?面白いのに、」
とマルタは少しテンションが下がってしょんぼりする
「はぁ、わかった、今度何か貸してくれ」
「はい!もちろんです!」
そしてマルタが離れていく
【意外といけるな、!】
そして見張り始めて5時間後
1人の怪しい人物がローブのフードを頭に被り宿屋から出てきた
【あれは、】
目を細めて見てみると青色の髪が見えた
【あの時にフィオラを抑えてた女か、】
【ここで捕まえようとしたら騒ぎになる、それだけはやめろってサイラに念押しされてるからな、】
するとその人は足早に宿屋から離れて歩き始めた
それにロノアはついていく
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ヨルギス視点
【ふぅ、なんとかバレずに着いた〜、】
ヨルギスが周りをキョロキョロしながら向かった場所、そこは馬車乗り場だった
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ロノア視点
【ここは馬車乗り場?馬車を使うのか?】
ローブを被った人物は受付の人と何かを話している
そしてその人物はしばらく話してその場から離れて元の宿屋の方へと歩き出した
【聞くしかないか、】
とロノアは受付の人の元へ行く
「こんにちはー。移動ですか?運送ですか?」
「いや、1つ聞きたいことがあるのだが、」
「さっきのフードの人はなにをしに?」
と質問するが受付の人から返された言葉は
「それは言えません、他のお客様の情報は教えられないんです」
【それもそうか】
「すみません、時間を取らせてもらってありがとうございます。」
と礼をいいさっきのフードの人物をバレないように追いかける
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フィオラ視点
【リア、】
私は新しい宿の部屋に1人、ベッドで横たわっていた
私がリアのことを好きになった理由、それは初めての出会いに遡る
あの時の私は人を傷つけられようとも傷つけたくはなかった、一度傷つけてしまえばそれこそ化け物になってしまう
だから私は誰にも会わないようにある道具を使って大樹を生やして幹の中で暮らしていた、だけどどうやら近くに村があったらしく、興味を持った子供たちがやってきて私を見るや否や化け物だと言い石を投げつけてきた
ここで反撃したら村の人たちが一斉にやって来るだろう
そうならないためにも私はただ耐えるしかなかった、なにもしなければ興味を失って立ち去ると思ったから、だけど一向に終わる気配はない、もう逃げよう、ここじゃないどこかへと思った瞬間、声が聞こえてきた
顔を上げるとそこには私とそう年齢の変わらない子が立っていた、その子は石を投げる子供を一瞬で撃退して私に近づいてきた、目の目があった瞬間、私の中でなにかが変わった、あの時のリアの顔を今でも鮮明に覚えてる、リアはそれからも私のことを助けてくれた、自分のことを顧みず暴走した私を止めてくれた、人とのコミュニケーションも教えてもらった、字やいろんな知識も教えてもらった、私はリアから貰ってばっかりでなにもあげられてない
そんな事を考えていると夕飯を食べよう、とマヤが私に話しかけてきた
【待っててねリア、私いつもあなたに貰ってばっかりでなにもしてあげられなくて、それでもあなたのためになにか、してあげたいから、】
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ご飯を食べていざ夜になっても私は寝れずにいた
見張りはロノアさん、エヴァンさん、テイルさん、マルタさんが交代で見張ってるらしい
【私も、なにか、何かできることは、】
そんな事を一晩中、考えていた
ふと顔を見上げると
【あれ、もう外が明るく、】
そう思っていると勢いよく扉が開けられてロノアさんが入ってきた
「ヤツらが動いた!馬車乗り場に向かってる!今すぐ準備しろ!」
【来た、!】
そこでサイラが口を開く
「わかったけど女性の部屋にいきなり入るのはどうかと思うわよ、てか鍵は!?閉めてたはずでしょ!?」
「あ、悪い、壊したみたいだ、」
「はぁ、」
とため息を吐きながらも急いで準備を整えてロノアには先に行ってもらいフィオラたちも合流した
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馬車乗り場前
「来ると思ってたぜ」
リアの父親が私たちを見つけてそう言った
「気づいてたのか?」
のエヴァンが言う
「あぁ、どうせお前らはまた奪おうとするからな」
「だけどなもう争う気は無いんだ」
そんな言葉にフィオラは問いかける
「なんで?あなたの目的は私でもあるでしょ!?」
「最初はそうだったが、今は違う、」
「リアが大人しくついてく代わりにお前を見逃して欲しいって言ってきたもんでな」
そう言うと馬車の中にはリアの姿が見えた、下を向いていて私が呼びかけても横目で見るだけだった
「そういう事だ、お前らのリーダーは返してやるからもう俺たちに関わるな、以上だ、出せ!」
と言いながら馬車からコーティスを下ろして私たちに突き出した、そして間髪入れずに馬車が走り出した
「待って!」
気づいたら私は走っていた
「私はまだあなたに、」
全てを言い切る前に道の段差に足をつまづかせて転んでしまった、馬車はどんどん遠くなっていく
「嫌だ、嫌だ、そんなのいや、!」
私は再び立ち上がって走り出そうとするもロノアさんに止められる
「離して!私は!わたしは!」
「落ち着け、誰も諦めるとは言ってない」
「え?」
後ろを振り返るとそこには馬を二頭連れたコーティスが馬に乗っていた
「追いかけるぞ!」
私は馬のもう片方に乗り、サイラさんも同じ馬に乗る、コーティスのほうにはロノアが乗り、二頭の馬は馬車を追いかける
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「行っちゃったね、」
「あぁ」
マヤとマルタは一瞬の光景に呆気に取られていた
「あの馬は?」
とテイルがエヴァンに問いかける
「さっき、サイラが今借りれる馬を借りたんだよ」
「もちろん、金はさっき俺が払った」
マルタが言う
「どうする?」
「追いかけるか?」
「人の足で?だけど行かない理由はないよね、お兄ちゃん?」
そして残された組も馬と馬車を追いかけて走り始めた




