プロローグ 真紅の中の吸血鬼
真夜中のとある森の中に静かに佇む貴族のそれは大きな白と赤を基調とした屋敷。しかしその日はいつもと違い、真紅の炎が屋敷全体を包んでおり、中に取り残されていた使用人や屋敷の主人、そしてその妻とお腹にいる子供がいた。
屋敷が煙と炎で満たされている中、そこに一つの新たな命が誕生した。
産声とともに目を覚ました彼女の名前はフィオラ・アストーリ。母親譲りの白い髪の毛と赤い目をした吸血鬼だ。
「ありがとう・・・ありがとうっ・・!」
黒い髪に赤い目をした顔の渋い男は目の前で出産での体力消耗に加えて毒である煙を多く吸って息絶えた美しい妻の手を取り感嘆の涙をながしているのか涙腺が崩壊したのか、その両方の涙を妻の手に零す。
使用人たちは主人の肩を叩く、男は妻の赤いネックレスを手にとり、産まれ落ちたフィオラをつれて主人と使用人はその部屋を出て行った
一行は炎と煙に包まれた長いカーペットの敷かれた果ての見えない廊下をハンカチで口を塞ぎながら駆けていく。そしてとある部屋の前で全員が立ち止まり、その部屋に入っていく。
その部屋の中は誰かの寝室のようでその部屋に住んでいる浅紫色の長い髪とキリッとした目つきをした若い女性が出迎えた。
「私たちはもう終わりだ。彼らに目をつけられた以上、逃げてもどうにもならない。私はもういいんだ・・・」
娘を抱えた男は目元に涙の跡を残し能面のような顔をしながら崩れ落ちる
「ただ、私と妻が生きていた証を、私たちの娘だけは自由になって欲しい!この子は自分の人生があるんだ!」
と目の前の女性に泣きながら懇願する。
すると女性はそれに応えるようにその娘を取り上げて窓から外へと飛び出していく。
それと同時にまた扉が開かれ、目隠しをした青紫色の髪をした装束の1人の男が部屋へと入ってくる
「はじめまして。私は未来の信徒、悲哀のオロバス・ペコハーと申します」
「悲しいかな、あなたは我々の目的の邪魔をしてしまいました、挙げ句の果てにあの吸血鬼を死なせてしまうだなんて!」
「なんてあなたは罪深いのでしょうか!?」
と男は興奮しながら話していたが深呼吸をしてさらに続ける
「しかし私はとても、とても慈悲深く、あなたのような罪人にも平等に終着点へと導かれる権利を与えましょう」
そうして男は2つの長いハンマーを取り出して男と使用人に一歩ずつ歩いて近づいてくる
使用人たちは主人の前にたち、懐からナイフを取り出して男に襲いかかるも、目の前の男に一斉に刺した傷が自らの体にも現れ、その跡からは血が吹き出し、全ての使用人は地面へと倒れてしまった
主人である男は目から光を失い、膝立ちをしながら目の前の男にハンマーを振り落とされて一撃でその頭は原型を伴うことはできなくなり、その男は即死した。