ピンチのときは何かが起こる?
ご都合主義です。
皐月視点。
私は一度もあの時のことを忘れることはなかった。
あの誓いもまだ心に残ってる………
なのに、
「がぁっあぁっああぁぁあ〜〜〜〜〜っ!!」
私の目の前で佑樹が苦しんでいる。
(………………った。)
私は彼の騎士なのに……
(………きなかった。)
金髪のクズが佑樹を傷つけたのに……
(何もできなかった………っ!!)
ドサッ、
佑樹が倒れる音を聞いた………その瞬間、
「貴様っ!佑樹に何をしたっ!!」
叫ぶと同時に佑樹を苦しめる要因を排除しようと駆け出した。
奴は余裕めいた口調で、信じられないことを言い放つ
「なに、魂に直接我の使い魔たる刻印をつけているのだよ。
一日もすれば終わるだろう。その頃には我の使い魔として我に仕える喜びを感じるようになる。」
ふざけるなっ!そんなことになれば佑樹は佑樹でなくなってしまう。
私はさっき錯乱している佑樹に、佑樹は佑樹だ。本質は変わらない。っと言った。いくら体が少女でも、私を救ってくれた彼に違いはなかった。
だからこそ私は、少女を受けいれるのはたやすかった。
だが、今このクズが言ったのはその本質を変えるということだ。
それはすでに、佑樹ではなくなっている。
(そんなことはさせないっ!!)
最短距離で奴の目の前まで駆け殺すつもりで腹に拳を振り抜く!
私は当たると確信していた。
それほどまでに角度もスピードも、申し分のない拳だったのだ。
だが、結果的に当たることはなかった。――――それどころか届くことすらなかった。
何か不可視の壁に阻まれていた。
「《障壁》。お戯れが過ぎますぞ。あえてこの者の拳を受けようとするなど。」
「そういうな。どれほどの力を持っているか確かめたかっただけだ………………とんだ期待はずれだったがな。」
そう言い放った直後、奴はゴミを見るような目で私を見てきた。
――――殺される。
本能的に悟った。
今の私では絶対に勝てないと。私は狩られる側だと………
(………それでも、一矢報いてみせるっ!!)
私は一度体制を整えるため奴から距離をった。
そして、それが決定的な仇となった。
「………死ね。《炎壁》」
私の目の前に炎でできた壁が広がり覆い被さってきた。
避けれない――――
(………すまない佑樹。守ること、できなかった………)
私は迫り来る死に身を任せようと――
「――――《城壁》!!」
突如私を囲うように土の壁がせりあがり炎を全て消し去ってしまった。
(何が起きた………?)
声のした方向に振り向くと、
フードを被り顔を隠した小柄な人がいた。
声から推測して女の子だろう、が私に手を差し出した。
その少女は私が展開についていけず固まっているのを見て声を発した。
「何をボサッとしてるんです!?この壁はすぐに壊されます!逃げますよ!!」
確かに今にも崩れそうだ。外ではやっきになってこの壁を破壊しようしているのだろう。
現に今でも、
「くそっ!何故侵入を許した!?貴様ら何をしている!!こんな土の壁早く壊せ!」
「「「「はっ!」」」」
なんて声が聞こえてきて、壁からはズガガガガガッ!!なんて音が響いている。
「あぁもう、早く!!」
また少女に怒られた。
でも、
「佑樹を助けていないなら私がここから逃げるなんてできない!」
これが最も重要なことだ。
「あの女の子なら先に助けました!!今頃は城のベッドで休んでるはずです!だから早く!!」
――――っそうか!
佑樹は助けられたのか。
安心した私はすぐに彼女の手をとった。
「いきますよっ!《瞬間移動》!」
永続的に続くかと思われた爆音は止み、世界が光に包まれた。
次からは佑樹視点に戻ります