彼女が彼を好きな理由
少しの間は皐月視点になります。
今回は少しキャラクターを掘り下げました。
ちなみに文章がいつも以上に残念です。
彼はよく私に、俺を好きな理由がわからないと言うが、私には何故彼がわからないのかがわからない………
彼は知っているはずなのに。私が人気が出始めたのは彼と一緒にいるようになってからだというのを………正確には彼が影でフォローしてくれるようになってからだと
むしろ私は嫌われていたということを………
当時、家が剣術を教えていたため、力を持っていた私は、
本当に愚かで浅はかで馬鹿だった。
弱い者が強い者に虐げられているのを見たとき、その場をさらに強い力で治めれば解決するなどと本当に思っていた。
もちろん解決などするはずがなかった。
むしろ私に気付かれないようにより悪質に、より陰湿にへと悪化していった。
それに気づかないない愚かな私は、現場を見つけるたびに力でもって制裁を繰り返していた。
気付けば、私は学校で一人になっていた。
強い者からは邪魔な奴と言われ、私が助けていたと勘違いしていた弱い者からは、お前のせいだと睨まれた。
私と関わっていない者からも余計なことをする奴と陰口を叩かれた。
昔の私には何が起こっているかなどわからなかった………………いや、わかろうともしなかった。
自分が正義だと本気で信じ込んでいた私には、弱い者を虐げていた奴等となんら変わりのないことをやっていることに気付けるはずがなかった。
だから私はいつかわかってくれると、からっぽの正義を振りかざし続けていた。
ついにある日、私は助けていたと思っていた人から初めて面と向かって文句を言われた。
「お前がしているのは、ただの自己満足だ。お前は自分の正義を振りかざし気持ち良いかもしれないがそれで迷惑しているのは僕達なんだ。もう関わらないでくれ。」
そして彼は淡々と私がいない所で何が起こっているのかを話してくれた。それは私が余計なことをした日から悪化しているのだ、と。彼は最後に、どうせ助けるのなら最後まで助けろと言い残し、
それができないなら初めから助けようなどとするなといって去って言った。
私はその時確かに頭をガツンと殴られた気がした。
今まで自分の正義に酔っていた私は、初めて自分の愚かさを知った。
………気付いた時にはもう手遅れだった。
私がそれを言われた時には学校では既にあからさまな私への悪口と、私のものがなくなることが日常茶飯事になっていた。
当時、自分の正義を信じられなくなっていた私はその状況を甘んじて受けていた。………あの時の私なら何をされていても受け入れていたと思う。
それほどまでに私は自分の正義を否定されたのが堪えていた。
なのに、
事態は唐突に収束を迎えた。
休日明け学校に来た私を、私のいじめに関与していると思われる人達が全員で謝ってきたのだ。
目を白黒させている私に彼らは次々に声をかけてきた。
曰く、自分の馬鹿さに気がついた
曰く、人として間違っていた
曰く、君のしてきたことに惚れた
本当に意味がわからなかった。これも新手のいじめかとも思った。
でも、そんな考えは彼らの真摯な目を見たら霧散した。
だとしても、
すぐには信じられなかった。
当たり前だ。休日前にはいつも通りのいじめが行われていたのだから………
だから私は、当然の質問をした。
なぜ、と
そしたら驚くことに皆が一様に同じことを口した。
井上佑樹に教わったから、と
当時の私は井上佑樹という男を知らなかった。恐らく、ほとんどの人が私と同じだと思う。
何故なら彼は普段から目立たないようにしていて満足に友人を作っていなかったのだから………
そんな彼から突然話しかけられ説教まがいのことをされた彼らの恐怖は計り知れない。
私は必死に彼を捜しているとあることに気がついた。
ひとつもないのだ。
あれほどやっても無くならなかった、いじめが。
私がいじめを受けていた時も当たり前だが他のいじめも存在していた。
それがひとつも見つからないのだ。
私は直感的に理解した。
これも全て彼の仕業だと………
私ができなかったことを簡単にやってのけた彼に私は軽い畏怖を覚えた。
だからかも知れない。
彼を見つけた私がすぐにこの質問をしたのは、
なぜ、こんな私を助けてくれたんだ?
もしかしたら見返りを求められるとでも思ったのだろうか。
でも、彼は私の想像の斜め上の答えを言った
君の正義が気に入ったから
信じられなかった。
今まで散々否定されたのだ。
だから、
そんな馬鹿な。私が正義を振りかざしたせいで傷ついた人がいるんだ。そんな正義を気に入るはずがない
と、こう答えるのも必然だろう。
彼は少し思案した後、こう答えた。
「君の正義は間違っていない。弱きを助け、強きを挫く。これほどわかりやすい正義はないと思う。ただ、君が助けた人達は君に助けられるのを当然としていた。だから、君がいないと当然のように君に怒っていた。そして、役に立たないと勝手に見切りをつけ君を迫害し始めた。なのに君は、君を迫害する愚か者共を助け続けていた。
そんな君の正義が間違っているはずがない。」
きっと今の佑樹はもう忘れているといると思うが、私はずっと忘れることはないと思う。それほど佑樹の言葉は嬉しかった。
私を認めてくれる存在が本当に嬉しかったのだ。
だから私は心に密かに誓った。
私の正義を肯定してくれた彼の剣となり盾となることを………
それからも彼は私のフォローをしてくれるようになった。
私がやり方を間違えても影から助けてくれた。
気付かれていないつもりなのだろうが、バレバレだ。
何故なら、大概のことなら全てが後腐れなく終わってしまうからだ、それはもう不自然なくらい。
私が関わったことが全部解決するもんだから、私の人気もうなぎ登りだ。
わずか半年で親衛隊なんてものができた時にはかなり驚いた。
――――――困った。
私は彼の側にいたいのに。
だから私は、
彼にもっと近づいて、彼の騎士になるために必要なことをする。
彼の驚く顔が目に浮かぶ………
っと、彼が来た
用意していた言葉を彼に言おう
「好きだ!私と付き合ってくれないか?」
なんか佑樹のキャラが違うけど猫被ってるだけです。
告白されてから今の性格になっていきます。