センチメンタル俺
朝俺が目を覚ますと馬車の中には誰もいなくなっていた。
少し不安になったが外から皐月たちの声が聞こえてきてすぐに安心することができた。
俺はすぐに体を起こすと、昨日突然眠ってしまったバツの悪さもあり馬車の中から外を覗きこむように見た。そこには、火の燃えた跡を囲むように座って仲睦まじく談笑している男女3人の姿があって、
―――不意に自分が今ここにいないのではという錯覚を受けてしまった。
それはきっとこの感情のせいで
〝寂しい〟
という、とうに捨て去ったはずの感情。
(馬鹿馬鹿しい。女になって心まで弱くなったか?)
頭ではそう考えても、心はどんどん締め付けられるように苦しくなっていく。
一人しかいないこの空間が、周囲から切り離されてしまった場所のようで、
あの中に自分が入っていないのが、まるで――――――皐月から捨てられてしまったようで。
(おいおい………いくらなんでも弱すぎじゃないか?)
頭とは裏腹に心は悲鳴をあげ続ける。
ヒトリニシナイデ
ステナイデ
イウコトキクカラ
オネガイ
―――ヒトリニシナイデ
幼少期のころの記憶が、感情が勝手に呼び起され心を蝕んでいく。
一人なのはもう慣れたはずなのに。
この世界に来て初めて一人になって、
自分の心が独りに耐えられなくなっている事に気がついた。
外に出ればきっと三人は暖かく迎えてくれる。
でも〝きっと〟だ。
もし拒絶されたら?
そう考えるだけでとたん足が竦んでしまう。
―――だから
少しでも独りでいることを意識しないように、皐月たちの会話に耳を傾け静かに目を閉じた。
「私は佑樹のかわいさは、容姿もさることながらあの口調がいいと思うんだ。」
「ちっちゃい子が背伸びしてプルプルしてる感じですね。わかります。」
「元男のだらねぇ。無防備すぎるのがちょっと心配だけど。」
「「そこがいいんじゃないか(ですか)!」」
「……だから不安なんだよ。」
……………………………………………………………………………………………………………はっ!?
………オーケー。状況を整理しよう。
俺、センチな気分になる。寂しいけど外に出て拒絶されるのが怖くて恐ろしくて、会話を盗み聞く。
あまりにもアホウな会話に思考が止まる。覚醒。結果、冷静になる。←今ココ
ボフンッ
―――――――ヤバイ。恥ずかしさで悶え死ぬ………っ!
現在俺は、自分でも分かってしまうほど顔を赤くしてOTLの格好をしている。
な、何だよ寂しくてって!外に出るのが怖い?拒絶されたらどうしよう?
俺は恋する乙女かっ!?
こんなに恥ずかしいと思ったのは初めてかも………いや、割と最近あったな、てか昨日。
初めてじゃないからといっても恥ずかしいという感情が消えるはずもなく、結果
「~~~~~~~~~~~っ!!」
声にならない叫びを押し殺して顔をブンブン振る変態が出来上がった。
しかも、だ。
ないが一番恥ずかしいかって、俺のことを話してくれてるのを、
うれしいと思っちまってることがだよ!!
話してる内容がどんなにアホウなことでも、
忘れられてなかった、と
捨てられてなかった、と
ひとりじゃなかった、と
口を押さえてないと思わず笑顔になってしまいそうで………
―――だから、
皐月には俺の照れ隠しのために殺ら……やられてもらおう!
そもそもあいつが俺のそばにいれば俺が寂しいなんて感じなかったわけだし?
普段うっとおしい程ひっついてくるのに居て欲しいときにいないからなお悪い!!
そうと決まれば早速ば馬車から出て皐月の死角へ回り込まねば!
幸いなことに馬車を使えばいくらでも死角を作れる。
きたっ!
皐月が何か思案している。
今なら俺の拳も届く!
―――殺った!
な!振り向いただと!?
パシッ! ←パンチを止められた音
ポスンッ! ←皐月の膝に乗せられた音
カァァーーーーーーーーッ!
「な、なななな、何をっ!」
「甘いなっ!そう簡単に私が隙を見せるとでも?好きなら見せるがな!」
「だからどうした!?たいして上手くないし――――――というか離せ!離してっ!離して下さい!!」
ジタバタジタバタ
必死に皐月から顔を逸らしつつ逃げようと足掻く。
「離して欲しければ私の目を見てお願いするん「嫌だ!」早っ!?」
「………お願いじゃなくていいからせめて目をm「嫌だ!」何でさっ!?」
見せられるわきゃねぇだろ!
こんな真っ赤に染まって、
泣きながら笑ってる顔なんて//////
(どんだけ俺は一人が寂しかったんだよ?)
見ろよっ!ルグリムとシーファなんて驚いて固まってるぜ!
皐月には死んでも気付かせないがな!
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ルグリム達のフリーズがとけた後はさらに場は混沌としていった。
ルグリムだけでなくシーファまで俺の権利を主張してきた。
あぁ、俺の権利っていうのは、俺を抱っこする権利だそうだ。
俺の意見?初めから聞かれなかったよ。
……あれ?目から塩水が………
それにしても、男に抱かれても気持ち悪いだけなはずなのに………何故か安心する。
このとき皐月の目を見ていれば、気がついただろう。
皐月の目に暗い光が宿っていることに…
この文章は二回消えたZE☆
しかも一回は完成した後、二回目は完成寸前で………
他の作者さんがたまに文章が消えたって書いてあるのを何回か見たことがありますが、まさかわが身にふりかかろうとは………
次の話は皐月視点です。