馬車の中で
場面は急に変わります。
ちなみに今回もグダグダですよ。
それではどうぞ!
――――というわけで俺達はルグリムと途中で合流した蒼髪蒼眼の少女と草原の中、馬車に揺られてます。イェイ。
………申し訳なさそうにしていた割りに拒否権はありませんでした。
ちなみにこんな感じのやり取り。
〜〜〜〜回想〜〜〜〜〜
「断ったら「断られたらついつい封印を解いてしまいそうです。………いやそれはもったいないですね。こんなかわいい娘、むざむざ手放すのはいささか惜しいですし、ここは皐月様だけ勇者として祭り上げて佑樹様は私が一生愛で「はい、一緒に逃げましょう!!」
「………ちっ……冗談ですよ。そんなことするわけないじゃないですか。」
「今、ちっ、て言ったよね!?」
「空耳でしょう。」
〜〜回想終わり〜〜〜〜
うん、何というかルグリムはいろいろ危ないと思う。まぁ、白昼堂々と出奔できたのはルグリムのおかげなのだが、ある意味それも俺の貞操の危機に拍車をかけている。何故だって?ルグリムがどんな魔法が得意と言ったか思い出すがいい。そう、気配を絶つ魔法だ。いや、あれは気配を絶つなんて生半可なものじゃない。正門から出たのに誰も反応しなかった。なんでも気配を絶つ魔法に、光の屈折を利用して姿を完全に消し去る魔法を合わせたそうだ。そんな恐ろしい組み合わせで夜、迫られでもしたら身長差も相俟って確実に押し倒され、大人の階段を一段飛ばしで駆け上ることになる。
ぞっとしない想像だ。
あぁ………ちょっと早まったかなぁ。
俺は遠い目をしながらゆっくりと流れている夕日に染まった景色を見た。異世界といっても何もかもが珍しいわけじゃなく、現にさっきからいつまで経っても代わり映えのしない草原を馬車は走っている。
というか、この馬車はどこへ向かってるんだろうな。きっと何処かしかの町に向かってるんだろうが………よく考えたらやばくね?
「なぁ、ルグリム。」
さっきから俺の顔をニコニコしながらずっと見ているルグリムに声をかけた。
「何ですか?」
あぁそういえば、皐月と蒼髪蒼眼の少女は御者台でずっと談笑している。
むぅ………何か知らんがイラっとくる。
まぁいいやそれよりも聞かないと、
「俺の「刻印のことなら大丈夫ですよ。一緒に逃げてくれる、私の好み直球ど真ん中の仲間をあんな男に渡すつもりはありません。確かに封印だけなら居場所はおのずとバレたかもしれません。ですが、さっきも言いましたでしょう?私は気配を絶つ魔法が得意だって。流石に離れていると無理ですが、私の傍にいる限りはあの男に見つかる心配はありません。そんなことより私達のこれからについて話しましょう!」
俺はこの世界に来て何回台詞をかぶせられたんだろうか。
つーか話を聞く限りどうやら最初っから俺はルグリムと離れられない運命だったようだ。そんな大事なことを言わなかったことに怒るよりも、それを“そんなことより”で済ませたルグリムに呆れてしまった。“私達”に皐月と少女は入ってればいいんだが。まだ質問は残って――――
「目的地ですか?目的地は『自由貿易都市フレード』です。あそこなら人の出入りが盛んですから怪しまれることなく入ることができるでしょう。そんなつまらないことより自己紹介しませんか?お互いのことを良く知ることが交際への第一歩だと思うんですよ!」
「自分の目的を、つまらないことで片づけた!?」
先手を打たれたことよりも、自分の目的を一蹴したことにつっこまざるをえなかった。
「何を言ってるんですか?私の目的は佑樹様を落とすことですよ。」
呆れ顔で言われた。
「………もういいです。」
ルグリムは城をでてからずっとこんな調子だ。自由になった反動で今だけだと願っておこう。ずっと監視をつけられてたそうだし。――全部魔法で欺いてたそうだけど。ん?てことはこれがデフォルメなんだろうか?でも城でのあの嗤い方は演技じゃなさそうだし。
あぁ、考えるのが億劫だ。今日はいろいろなことがありすぎてそろそろ頭がオーバーヒートしそうだ。
それに…何だ、か…ね……む………い
「あれ?佑樹様、眠られたんですか?――あぁ眠った姿もかわいらしい。」
俺は貞操の危機を感じながらも抗い難い眠気に負けた。