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外伝 眠り姫

二章の6.5話と思っていただけると……


・カクヨムの七楽丸井は私です。新しい世界の話を書いています。

・本編制作中。盛り上がりは最高潮!!!(多分)


「あれ?私、さっきまで本を......ん?何してたっけ」


 目を覚ますと、志島(しじま)紗黄(さき)は天蓋のついた広いベットで寝ていた。寝起きだからか、頭がスッキリとしていない。何かを忘れている気がする。


「起きましたか?お嬢様」


 扉の向こうからノックする音と、少し年老いた女性の声が聞こえてくる。


「あ~、もう来ていたのね。ルナ」


 扉の奥にいるのは、私の専属メイドであるルナだ。生まれたときから私の世話をしてくれていて、もっとも信頼できる内の一人。彼女は今日も朝が弱い私のことを起こしに来てくれた。


「起きているのですね。今日は十時から貴方様の誕生日パーティです。遅れませぬようにお気をつけくださいませ」

 

 そうか、今日は私の誕生日だ。それを忘れていたのか、な?


 時計を確認するとパーティーまで残り四時間。今から着替えて、朝食を食べて、ドレスとか諸々の準備をして……なんとか間に合いそうだ。


「着替えが終わったら食堂に向かうわ」

「かしこまりました。支度をしておきます。失礼します」


 扉の前から去っていく足音が聞こえた。


「さてと、私も準備しないと」


 ベッドから身体を起こすと、鏡に映る自分が見える。


(あれ?こんな服持ってたっけ?)


 鏡に映る私は、見たこともない服を着ていた。いつもは白く、薄いドレスを着ていたはずだった。しかし、今羽織っているのは、胸元に何かの紋章のようなものが描かれ、下はドレスのような短いフリルを履いている。


 この服どこかでみた気がする……そんなわけ無いか。初めて見たし。


 また何かを忘れているような気がした。


(そんなことより、今は着替えなくては)


 ***


 着替えて食堂に向かうとちょうど支度が終わったようで、ワゴンを押して部屋から料理人たちが去っていった。ルナはいつも通り、私の席の後ろに立っている。


「どうぞお嬢様」


 私が席に向かうと、椅子を引き、座らせてくれる。


「いつもありがとう」

「いえ。仕事ですから」


 お皿には、目玉焼きとウィンナー、それとトースト。ナイフとフォークを使い、食べていく。


「お上手になりましたね。」

「当たり前だよ。もう十五歳だよ?」

「そうでしたね……」


 なにか反応がおかしい。いつもより、声に感情がこもっているような気がする。悲しさが混じったようなそんな反応。


「どうしたの?」

「いえ。何もありません」


 私の質問に答えたときには、ルナはいつも通りの様子に戻っていた。


 ***


「はいお嬢様、これで準備が整いましたのでパーティに向かいましょう」


 ルナがそう言った。朝食を食べて部屋に戻ると複数のメイドに囲まれてあれよあれよと着替えが終わり、鏡に映る私は白いドレスを身にまとい、自分でも美しいと思うような姿だった。


「随分きれいにしてくれたわね。では、行きましょう」

「はい。お嬢様」


 部屋から出て、パーティ会場に向かう。その道中、奇妙なことをルナが言い出した。


「お嬢様、一つだけ私と約束していただけないでしょうか。失礼を承知の上、お願いします」

「珍しいわね、あなたがお願いなんて。さて、何をお願いするのかしら」


 今までそんなことを言ってこなかったルナが改まってこんな言い方をしてくるのだから、よほどのことがあるのだろう。今までのお礼をしたいし、私にできることなら可能な限り応えたい。


「どうか紡錘(つむ)にだけは近づかないで頂きたいと思います。」

「なぜかしら?」


 紡錘……なぜそんなことを?


 想像していたようなお金絡みの話ではなく、ただ一つ紡錘に近づかないでくれという願いを私は気になったのでルナに聞いてみた。


「申し訳ございません。あなたのお父上からの命で、答えることができません。」


 お父様からの命令?そこまでしてその紡錘とやらを警戒しているのだから、よほどの理由があるのだろう。


「たとえ私が命令しても?」


 だからと言って、一度気になったことを諦めるわけがない。


 私が少し意地悪を言ってみたが、ルナは慌てること無く「はい」と返した。


「分かったわ。でも、紡錘って一体どんな物?私、見たことがないのだけれど」


 今まで暮らしてきてそんな単語を聞いた覚えはないため、ルナに聞いてみる。


「糸を巻くものですので、糸に近づかないでいただければ大丈夫です」

「分かったわ!糸ね、気をつけるわ」


 意味がよくわからないけれど、まず第一、パーティー会場にそんなものあるわけない。


 ルナの発言について色々考えていると、会場の扉の前についた。


「行ってらっしゃいませ。お嬢様」


 ルナは扉を開いた後、私に頭を下げて道を開ける。


「行ってくるわ」


 扉を通ると会場にいた全員が階段の上にいる私に注目した。


 ***


「今日は私の誕生日パーティに来てくださり、ありがとうございます。このようにたくさんの方々に成長を見守っていただけていることを、とてもありがたく思います。みなさんと楽しいひと時を一緒に過ごせれば光栄です。今日はどうぞごゆっくりお楽しみください。」


 なんとか噛まずに言えた。


 私は覚えていたパーティーの挨拶を上の階から終える。


 ────会場から拍手が広がる中、一人の男が階段を登り始めた。


「数カ月ぶりだね?」

「はい?」


 意味がわからないことを男が言ってきた。


「あの痴れ者を排除しなさい!」


 参加者の女性がそう声を上げると、複数の扉から兵士が入ってくる。その間にも、男は何かを言っている。


「さて、どうするかな」

「何のこと?」


 私は目の前にいる謎の男が只者ではないことを察知した。こいつから死の気配がする。


「いや、こっちの話。てかこの天恵、前に使わなかったけど強いな」

「さっきから一体何を」 


 私と謎の男が言い合っていると、私の後ろからも兵士が来て、階段を挟むようにして謎の男を剣で取り囲んだ。しかし、全く動じない。


「無礼者、今すぐここから離れろ!」


 兵士に言われても、男は話を続ける。


「うーん。面白そうだし、夢から少しだけ覚ましてあげるよ。片桐拓真、覚えてるかな?」

「片桐拓真。片桐……拓真……たっくん!?」


 思い出した。確か私、図書室でたっくんと一緒にいたはずなのに。


 本を見て、意識を失った?


 そんなことより、まずは目の前にいる強欲(グリード)を倒さないと。

 

「おーー!思い出したんだ!なら、こいつら邪魔だな」


 私が殺気立ったのを感じたのか、男の様子が大きく豹変する。


 声のトーンが下がり、雰囲気が変わった。そして男はポケットからナイフを取り出して空を切った。


「何をしたの?」

「見ててごらん。死ね」


 死ねと言った途端、取り囲んでいた兵士全員の首から血が吹き出して倒れた。


「はい、全員死んだよ」


 会場に叫び声が響く。全員がパニック状態になり、我先にと扉から逃げ出す。


「で、どうするのかな。君は」


 あれを見せて私の戦意を消失させたかったのだろうが、そうはいかない。こいつは生かしていてはいけない悪だ。


「逃げさせてくれなさそうだし、やるしかないか」

「いいね、ちょうど君を試したかったところだ」


 強欲のテンションが上がったのを感じる。あと、私を試したいってどういうことなんだ?特に特別な力があるわけでもないし。一応天恵は持ってるけど、そこまで珍しいわけじゃない。


「さっきから、意味の分からないその発言は何なの?」

「さぁね?」


 さっきからこの強欲、私の質問に一切答えようとしない。


「はぁ。ぶっ倒して答えてもらうよ!」


 そうは言ったものの、さっきの兵士たちを倒したあれが分からない限り、迂闊に手を出せない。臨戦態勢を取りながらも私はその場を動けずにいた。


「あれ?来ないんだ、なら僕から行くとするよ」


 地面を蹴り、ナイフを構えながらこちらに飛んでくる。


 武器がない。仕方ないから、逃げながら探すとするか。


 後ろを振り返り、真正面の扉を蹴破ると、全速力で廊下を駆け抜ける。


「おいおい!?逃げんのかよ」


 ***


「ふ~。とりあえず武器庫の場所まで来てみたけど」


 暗闇の中を見回すと、剣や銃らしきものが置かれている。私の天恵と相性がいいやつばっかりね。


「『浮きなさい』」


 そう言うと、すべての剣と銃が浮く。逃げる途中に考えていた策の準備に取り掛かる。


 これはここ。一応ここにこれを置いておいといてっと。


 こんなものかな。


 準備を終え、一つしかない扉を警戒していると、扉の向こうから足音がした。そして足音は扉の前で止まる。


 その足音の人物が扉を開けようとして明かりが漏れたのと同時に私は待機させていた武器達に命令を出す。


「『攻撃しなさい』」


 銃撃音や何かを刺す音、切る音、様々な音が部屋に響く。


 倒れる音と同時に扉が完全に開き、光が足音の正体を照らす。


 ────それは会場の外で警護していた兵士だった。


 つまり。こいつは囮!?


 そう気づいたときには、強欲が私を蹴り倒していた。逃げようとするが更に脇腹を蹴られる。


 こいつ、どこから!?


 抵抗する間もなく、攻撃を喰らい続けてしまい、私は反撃できなくなるほどのダメージを負ってしまう。


「僕の勝ち」


 強欲はトドメを刺そうと空をナイフで切る。


 また、謎の技をする気か?いや。まずは殺すことを最優先。


 紗黄が扉の上に隠れるようにして浮かせておいた武器に命令をしようする前に、男が口を開いた。


「はい、その武器禁止」


 そう言うと、さっきまで浮いていた武器が粉々に破壊される。 


「くっ……一体どうやって」

「言うわけ無いでしょ?あほなの?じゃ、とりあえず寝てもらお────」

「撃ち殺せ」


 男が言葉を言い切る前に、私は残りの部屋に隠していた武器に命令する。


 銃声が何発もした。男に銃弾が命中し、死んだ。そう思った。しかし、実際には違った。


「はい、ざんね〜ん。二度も同じことしないでよ、めんどくさい」


 銃弾は男に残り数センチのところで止まっていた。


「危ねー。あれだけ壊せばもうないと思ってたのに隠し持っていたとは。流石だね〜。ま、見た感じ銃しか残してなかったみたいだね」

「撃────」


 命令をもう一度出そうとしたが、その前に男は何かを私に投げる。


 一体何を投げた。この距離で爆発物はないはず。あれは……糸?いや、紡錘か!?


「強いけど、よく考えるべきだったね。ここはどこなのか、なぜここにいるのかとか。ま、さようなら。目が覚めたときには、終わってるよ。」


 強欲のその言葉で私はこの世界について理解した。


 なるほど。ここは本の世界か。多分、内容はいばら姫。なら、たっくんはどこにいるのかな。王子様はたっくんだといいな。


 ()()が私の体に当たると、意識が落ちていく。そして全身からいばらが広がった。


「あと一人」


 楽しそうにそう言うと男の姿は部屋から消えた。


 武器庫はすぐに茨に埋め尽くされ、そのまま廊下へと侵食を続けると、城がまるごと包まれてしまった。


 後は、頼んだよ。拓真。


 紗黄は全てを託し、長い眠りについた。

どうも、お久しぶりです。七楽です。


また外伝ですね。割り込み投稿にどこか違和感を感じるので、最新話に投稿いたしました。


少し余談ですが、本編の制作が着々と進みつつあります。構想は終わっているので、後は私の執筆が終わり次第投稿できますね。今は十二話付近です。漫画のようなテンポ感をそちらの方では意識して書いていますので、ぜひそちらもいずれ読んでいただければ……

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