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第39話 平穏な日常

明日12:00 最終話投稿



毎日投稿継続

「焼き↗肉↗焼き↗肉↗」


 焼き肉に心躍らせて、テンションが最高潮の紗黄は俺の隣で網を見つめながら焼き肉の歌を歌っている。


 俺達はあらゆる問題が解決した祝いも兼ねて、紅と約束していた焼肉に、俺、紗黄、紅、涼介、菜華、結月、橙乃、そして瑞稀さんの八人で食べ放題に来た。凪さんは瑞稀さんが誘ってくれたらしいが、仕事で断られたらしい。もう一度感謝を伝えたかったが、仕方ない。


 瑞稀さんは橙乃とお酒を飲むために来たようで、自腹参加らしく、俺の懐にありがたい…まじで。夜の焼肉屋は混んでいたが、事前に座敷を予約していたためスムーズに席につくことができた。席につくと、紅がタッチパネルを手に取り、注文を取る。


「何食べるー?」


「タッチパネルで注文とは、時代の流れは早いね〜」


 俺も焼き肉を食べに来たのは結構昔のことのため、瑞稀さんと同じことを思った。


「わしは使い方が分からんから、紅!おすすめを頼むぞ。あ、あと、生ビールを注文してくれ」


「私も同じものをよろしく頼むよ」


 橙乃と瑞稀さんの生ビールを紅が注文する。


 お酒……大人はやはり酒がメインか。


「まだ師匠たちのお酒しか注文してないし、じゃんじゃん肉頼んで元取るぞー!」


「「「「「「「「おー!!!」」」」」」」」


 紅の呼びかけに全員が応じる。大人を除いて、俺達6人はこの焼き肉に命をかけている。お昼ごはんも抜き、準備は万全だ。


「ええっとまずは、カルビ六人前、ロース六人前、厚切り牛タン六人前。他に欲しいものある人?」


「俺、米大盛りとキムチ」


 涼介のやつ、大盛りの米を食べるらしい。焼肉屋で米を食うのはなんかもったいない気がするが、まあ個人の自由だろう。そんなことを思っていると、紅の注文が終わり、全員が話し始めた。


「紗黄先輩!ひどいっすよ!私のことを忘れるなんて!」


 さっそく菜華が愚痴を言う。


「ごめんごめん!」


「紗黄先輩、寂しかったです……」


「え!?ほんとにごめん!」


 あまりそんなしょんぼりとした態度を取らないがない結月の様子に紗黄が驚いた。


 紗黄は全員に対し、謝ることしかできない。流石にみんなはいじれるときにいじっておこう精神なのは紗黄も分かっている。ノリに乗っているこの場ではそれに乗るしかない。


「悪かったって!ごめんごめん!私もここの会計半分持つから!」


 紗黄も会計の半分を持ってくれるらしい。ありがたい。


「それ、私達には関係ないですよね〜?」


 菜華のその質問を聞くと、紗黄は俺の方に耳を寄せてくる。


「んー?なになに。え!?その浮いた分、たっくんがまたなにかを奢ってくれるってさ」


「え…?いや、俺は何も言ってな…」


 予定にない出費が出そうになり、俺は戸惑う。たしかお財布は、う、う〜ん。結構ギリだったよな?


「え!?先輩奢ってくれるんですか!あざます!」


「おい、紅〜?」


 この野郎、俺にどんだけ金を使わせる気だ。こいつには焦げた肉しか食わせん。


「ところで紗黄先輩、なんで記憶を失ったのかはわかったんですか?」


「う〜ん。そうだね〜」


 話は変わり、紅が紗黄に質問したが、その原因は紗黄自身もあまりわかっていないらしい。聞いたところだとグリードのやつに負けた以降の記憶が全く無く、突然商店街で俺が戦っている状況だったらしい。


「前後の状況から考えても、グリードがしたんだと思う」


「まあ、そうだよね。あいつもそんな感じのこと言ってたし」


 俺も紗黄の発言に同意する。確実にグリードがなにかしたのはわかっている。だが、あいつの『改変』でそこまでのことができるのかどうか、疑問が残る。とは言っても、あいつはもうこの世にいない。もう何も起こらないだろう。


 俺達の話が途切れたところに、ちょうどお店の人が注文したものをカートで運んできた。


「は〜い、注文のカルビ六人前、ロース六人前、厚切り牛タン六人前、キムチ、ご飯大盛りそれと生ビール二つとサイダー六つですね」


 座敷に座っているが、頼んだ商品で机はほぼ埋まる。二つの机それぞれの網に火をつけてもらう。火がつくと、網の真上にある煙を吸う筒が降ろされた。


「ここは、色々頑張った拓真くんからの一言で、始めたいと思います!」


 いきなり言われたので何も準備できていない。やばい、瑞稀さんにグラスを渡そうとしてくる。みんなもグラスを片手に取る。こうなったらやるしかないか。グラスを手に取り、上に掲げる。


「みんなのおかげで俺と紗黄は助かりました。瑞稀さんと紅の足止め、橙の援護、涼介、菜華、結月の応戦、どれか一つでも欠けていたら、今こうやって食べに来ることもできませんでした。え〜〜、あ〜〜話すことなくなったな。とりあえず、みんなお疲れ様でした!乾杯!!!」


「「「「「「「乾杯!!!!」」」」」」」


 皆がグラスを合わせ、会はスタートした。

____________________________________________


 焼肉から数日経った後、俺と紗黄は遊園地に来ていた。今度遊園地に行く約束をしており、タイミングが合ったため今日ここでデートをすることになった。住んでいる街から電車で1時間ほどのここは、どこか懐かしい感じを味わわせるアトラクションが並んでいる。アトラクションは子供向けなものが大半で、子供連れが多く来ており、高校生である俺たちが来るには少し場違いな気もするが、全力で楽しむことにする。


「とりあえずフリーパス買っちゃおっか」


 紗黄が握っている拓真の手を引っ張りながら言った。アトラクションは昔ながらのチケット制で、たくさん遊ぶならフリーパスのほうが断然オトクである。


「二千円…二千円っと」


 販売所の列に並び、そう言いながら財布から二千円を取り出す。そのときなんとなく後ろを振り返ると、五つほど離れたところに並んでいる、帽子とサングラスをした四人組の姿が見える。随分厚着をしているな。


 そんなことを思っていると紗黄に話しかけられた。


「アトラクション全部乗るから、覚悟しといて」


「はいはい」


 高校二年生だというのに紗黄は子供心が全開のようだ。フリーパスを購入した俺達は近くのアトラクションに向かう。


「もうそろそろ高三なのに、こんなものが楽しいなんて紗黄は子ど────あ、やばい!同じアトラクションに向かっている人がいる!紗黄、早く行くぞ!」


「アハハハ!たっくんも楽しそうだね。Ok、走るよ!」


 全力ダッシュで、アトラクションに向かう。着いたアトラクションはペダルを漕いで空中を走る、スカイサイクリング。紗黄は奥に座ってもらい、俺は手前に座る。


「あそこの坂を登る際には、ベルトコンベアで上がりますので手前の方はブレーキを掛けないようにお願いします」


「はーい、わかりました」

 

 スタッフの案内に俺は同意し、ペダルを漕ぎ始める。


「なるべくゆっくりめでお願いね?たっくん」


「ごめん、耳が遠くて聞こえないwww」


 紗黄を奥に座らせたのは、いたずらをするためである。前回来たときに、ブレーキが手前なことを覚えていた俺は、事前に計画をしていた。紗黄は速度を落とそうにも落とせない。計画は完璧だ。ガハハハハハ、買ったぜ。


「ちょwww待ってたっくんwww」


 紗黄が止めるように言ってきているが、俺はペダルを回す速度を一気に上げる。


「キャアアアアア!!!!!!」 


 紗黄の悲鳴が隣から聞こえた。

____________________________________________


「は〜〜死ぬかと思った」


「俺は死んだことあるよ?」


 スカイサイクリングに乗り終わった俺たちは歩きながら話していた。


  紗黄との話の通りだが、本の世界で俺は一度死んだ。あのときは能力が覚醒したおかげで生き返ることができたが、本当に危なかった。というか、俺は妖力さえあれば死なないのでは?とは言っても、生き返ることができるのは天恵の保持者である俺にしか無理だ。誰かが死にかけたときに、身代わりに入れるが、もう一度生き返れるかは確定ではないため、非常時以外は絶対にするつもりはない。


「たっくんが死んだら私も死ぬから平気」


 ……何が平気なんだ?まぁ、平常運転だからいいか。


 笑いながら紗黄は言った。メンヘラみたいな発言だが、拓真は気にしない。そのような発言は拓真にとって日常茶飯事で、嫌ではなくむしろ嬉しい。


「相変わらず重いね。まあ、それは嬉しいし、死なないから安心して」


「私が守るから、たっくんこそ安心して」


「いいや、俺が守る!」


「私が守る」


(何やっているんだ、あのバカップルは)


 後ろの方からバカップル二人を眺めていた菜華は心のなかでそう呟いた。


 紗黄先輩から昨日の夜スティックで、明日遊園地に来ると聞いていた私は驚いた。四人で遊園地に行く約束を明日にしていたため、予定が先輩たちとブッキングしてしまったのだ。やめようかとも思ったのだが、面白そうなので先輩に昨日言っていない。涼介たちには、サングラスと帽子を必ず持ってくるように伝えていた。


 さっき販売所に並んでいたとき、拓真先輩にこっちを見られたのは本当に危なかった。たまたま紗黄先輩が話しかけて事なきを得たが、違和感を持たれたかもしれない。より注意するようみんなに伝えた。



 俺達はスカイサイクリングから降りた後、ジェットコースターに乗って、迷路に入って、他にも様々な動きのあるアトラクションをご飯前に乗り終えた。


 二度目のジェットコースターを乗り終えると、ちょうどお昼時の時間だったため近くのショピングセンターで食事がてら店内を見ることにした。一階の中央、建物が少し飛び出た部分にフードコートがあり、ご飯を食べている人で賑わっている。そこで二人で話しながら席を探していると奥の方に席が空いているのが見えた。


「あ、あそこ空いてる」


「ほんとだ。取られる前に行くよ!たっくん」


 急いで向かったお陰で、その席を取られる前に座ることができた。


(なんか隣から知ってる気配がするような…)


 気になった俺は隣の方にバレないように観察する。男女それぞれ二人の計四人。サングラスをしている謎の集団。


「ねえたっくん、そんなに驚いた顔してどうしt────」


 小声で紗黄が話しかけてきたが、俺の向いている方を向くと、言葉が詰まった。俺と紗黄、同時にその集団の一人が誰なのかに気づく。


「紅!?」


「菜華ちゃん!?」


 俺は紅、紗黄は菜華に驚きながらも、二人の腕を掴んだ。


「「あ、やべ。見つかったぞ」」


 紅と菜華が焦った様子を見せる。


(ん?見つかった?驚くのではなく見つかった…)


 俺たちと違った反応を見せたことに、疑問を持つ。こいつらまさかだが、俺たちと同じタイミングで遊園地に来てて、こっちを観察してたか?


 向こうの残りの二人、涼介と結月は「やべっ、バレた」と言いながら逃げ出そうとしたが、紅と菜華がその腕を掴みかかる。


「「死なばもろとも!」」


 紅と菜華は二人の腕をつかんで言った。


「くっそ、外れねえ」


 涼介は何とか振りほどこうとするが、紅はつかんだ腕を一向に離さない。菜華に掴まれた結月は諦めた様子で、抵抗をまったくしない。


「よし、お前ら一旦そこ座れ」


 俺は一旦こいつらから話を聞くことにした。


「「「「はいぃ……」」」」


 俺の言葉には、覇気のない返事が四人分返ってきた。

____________________________________________


 事情聴取が終わった俺たちは、フリーパスを使ってもう一度遊園地に戻ってきていた。


「それにしてもさっきは驚いたね」


 微かに笑いながら、観覧車のゴンドラの中で紗黄は言った。紅たちと鉢合わせした後の話だが、まだお昼ごはんを食べておらずとりあえず昼食を取ることになった。そして注文をして頼んだものが来た後、事情聴取をした。その結果わかったことは、結月のやつが俺たち、主に紗黄のことを能力を使って隠し撮りしていたらしい。菜華が指示したらしく、いつかこれで煽ろうとしたようだった。


 写真をみせてもらったが、結構うまく撮れていたので、その写真を俺に送るかわりに結月の罪だけは不問とする内密な契約を結んだ。紗黄が紅、涼介、菜華をシメてもらい、結月は俺がシメタということにしておいた。あのあと店内を見たがめぼしいものはなく、暗くなってきたため最後に観覧車を乗りに来ていた。


「だね。でも、あいつら流石に帰ったよね?」


 ゴンドラから下を眺めてみるが、見た感じ怪しい人は見えないため、紗黄に伝えておく。


「うん、いなさそう」


「なら良かった」


 紅たちがいないため二人だけの時間が過ごせるから良いのだろうか。気になった俺は聞いてみた。


「なら良かったとは?」


「そんなことは置いといて。ねぇたっくん、観覧車のジンクスって知ってる?」


 いきなり紗黄は聞いてきたが、俺は見当がつかない。

 

(観覧車のジンクス?はて、子供の頃に何かを聞いた気がするが…あ!?)


 なんとなくだが予想はついた。


「アレのこと…?」


「多分それ」


 ほんとにアレ、なのか。もう一度聞く。


「アレ、だよね?」


「アレ、だよ?」


「今言うってことは…?」


「口に出すのは野暮じゃないのかな?」


 少しいたずらっ子のような顔をこちらに見せながら紗黄は言った。


(まじかよ…)


 このやり取りをしている間にもゴンドラは頂上に近づいてきている。俺は、大きく息を吐いた後、深く息を吸う。


「こんなところでするのか…俺初めてなんですけど…」


「それは私もだよ」


 ゴンドラは頂上に辿り着こうとしていた。


 観覧車のジンクス、俺はそれが本当であることを祈ったとだけ言っておこう。

作者のコメント:


スティックはメールです。


観覧車のジンクスですが、調べたらでてきたーってやつで合ってると思います。

なお、このジンクスが本当だったかは、次の話で分かります。


あと二〜三話?で話としては完結になると思います。私の思いといたしましては、一度ここで完結させ、また気が進み次第、この話。もしくは本編を投稿しようと思います。ですので、いつか投稿される本編の方とこの話をブックマークに入れてもらえると励みになります。どうかよろしくお願いいたします。


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