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第36話 決着

毎日投稿継続

「やっとここにたどり着いたわ」


 橙乃は息が上がりながらも、無事に目的地にたどり着いた。ある鳥居の前、そこは拓真たちが伏見稲荷に移動したときに出てきた鳥居。


 今のわしには過去の時間の流れが見えており、その眼にはグリードが写っている。


「いかなるものも過去に戻ることはできん。しかし、この剣は別じゃ。『時間に干渉する』という性質はこの剣、そして加護を持つ以外には不可能、回避は不可能な確殺の攻撃じゃ。さらば、強欲の使徒よ」



 未来を斬ることができるのなら、過去も斬ることも可能かもしれない。それに気づいていたグリードだったが、そんな事を考えた場合対処のしようがないため、頭から放棄していた。最初から使用してこない時点、いや過去に戻るなんて事例が一度もなかったために想像の域から出ない思考だった。この技には詠唱が不可避のため、近くにグリードがいたさっきまでの状況では使用できなかった。過去に戻るとは言ってもそれには制限がある。ごく近い時間、そして自分自身の眼が見た時間以外を斬ることはできない。霊力の消費量も考えると一撃分、本当に最後のカードを橙乃は切った。



「我が眼に映る 過去の刻限 草薙剣よ 過去の実体を斬り 今との縁を結び給え『遡斬(そぎり)』」


 過去を斬る『遡斬』、過去を斬ったとしても本来は今になんの影響も出ない。しかし、この能力は肉体の情報だけを斬り、それを今に反映させる、防御不可避の一撃。それはグリードの首に命中した。


 為すすべもなく攻撃を喰らうはずだった拓真だったが、グリードが首から血を吹き出し後ろに倒れ込む。


「ががうあsっgdgdhsxhぁだjfsjfhj」


 言葉にならない叫び声を上げ、首を押さえながらグリードは悶え苦しむ。


(これが橙乃の言っていた切り札か)


 明治神宮から伏見に向かう最中、拓真は橙乃から切り札があると教えられていた。詳しく聞こうとすると鳥居に着いてしまったため聞けていなかったが、多分これなんだろう。 


(二度も助けられた。これはなにか礼をしないとだな)


 橙乃への感謝を思い浮かべたが、すぐに思考を切り替える。今はこいつにとどめを刺すのが先だ。痛みはすでに落ち着いている。もう妖力は回復した。


 立ち上がり、戦いに決着をつけに行く。






「『焚』」






 俺のできる最大限の火力。


 『消失』の効果を防御という概念自体に指定。


 刃の対象を魂に指定。


 『黒焔』をグリードの魂に指定。


 守りを壊し、魂を斬り、そして跡形もなく燃やし尽くす。この一撃ですべてを終わらせる。


「────『黒焔』:『魂斬(こんざん)』」







 グリードは何の抵抗もなく魂を斬られた。天恵を消失した今のグリードでは、二度と生き返ることができない。


「紗黄が無事だといいな」


「は!?」


 最後の最後、グリードの自我が戻り、笑いながらそう言った後、その魂は『黒焔』に包まれた。二つに断ち斬られたグリードの魂はこの世界から消失した。


 それと同時に、音の出どころが分からないラッパの音が大きく鳴り響く。周りの森からか、それとも山頂の一ノ峰からか、はたまた空か、地面からか。どこから聞こえてきたかわからないラッパの音は、最後に大きな音を奏で、鳴り止んだ。


 すると、凪を拘束していた鎖が解け、十字架は小さなネックレスとなった。俺は正面から勢いよく倒れそうな凪を受け止めて、仰向けに寝かせておく。意識がまだ戻っておらず、とりあえず落ちているペンダントを拾い上げる。


「私が作った世界でこれ以上好き勝手にはさせん」


 拓真の口から、誰かの言葉が漏れる。


(ん?なにか言ったか?なわけないか)


 グリードとの戦いは新たな謎を残し、終わった。


 息を落ち着かせていたところに元の姿の橙乃が合流、そして凪さんの意識も戻った。


「顔をやられたか……」


 あざができ、所々から血が流れている凪は顔を触りながらそう言った。


(さっきので……もっと俺が早く倒せていれば)


 グリードとの戦闘を反省する俺。橙乃も申し訳無さそうな顔をしている。


 そんな二人は置いといて、写真ケースを確認した凪。1番手前には『記録』用の自分の写真が入っていた。


「一枚ある……やるか。ああ、今からすることは気にしないでいいから」


 そう言って、服のポケットにあったライターを使い、写真からナイフを取り出した凪。それで自身の首を掻っ切った。


「は?え!?」


 俺はいきなり自分で自分の首を切った凪に驚いて駆け寄る。即死だった。


「これで顔も元通りっと」


「は!?あ〜能力か」


 一瞬の出来事で焦ったが、明治神宮のときに聞いていた能力を思い出したおかけでそこまで取り乱すことはなかった。


「みんなお疲れ様」


 凪が手のひらをこちらに向け、ひらひらと揺らす。


「お疲れ!」


「お疲れなのじゃ!」


 ひとまず戦いは終わった。ものすごく疲れた。


「私は少し寝るとするよ。ふわぁあああ、眠たくなってきた」


 あくびをしながら歩きだし、近くにあった木にもたれかかると、凪は意識を落とした。


「寝ちゃった……まあいいや。それにしても、天恵を『恵渡』したところまでは良かったけど、封印解除には限界があるな」


 俺が刀を使うには封印を解く必要があり、それを解いている時間の妖力と他に、能力や神術を使うための妖力、その二つで妖力を消費している。もしもあの戦闘が長引いていたとしたら、妖力がフルにあったとしても勝てるか分からなかっただろう。ましてや橙乃と凪がいなかったら勝てる確率はゼロだった。本当に助けられた。


「お主、天恵を『恵渡』したのか!?それを無くしたらお主は二度と天恵を使えなくなるのじゃぞ!?」


 天恵の『恵渡』、まだ高校生である拓真がした行為にしては若すぎるそれ。その覚悟に驚く橙乃。


「もともとそれでもいっかな〜と思ってたんだけど、見てて」


「ん?」


 手に持っていた刀が一瞬で姿を消す。


「何をしたのじゃ?!」

「あの人が言っていた通り、この刀は神祝だったらしい。俺はこれに天恵移したから、無くさないし平気」


 空間に収納された刀は、また手の中に収まる。


「ああ、そうなのか。これで紗黄を助けられるようにはなったのか?」

「おう、多分な。まあ、天恵が無くなっちまったから、こいつなしでは使えないけど」


 だが、封印は解かずとも、この刀さえ持っていれば自分自身や他者への能力は使えるし、刀は空間にしまっておける。無くす心配は一切ない。それに、紗黄の記憶を戻すには、天恵さえ使えればいいのだから。



「随分思い切ったことをするのう」

「それで紗黄が救えるならなんでもいいよ。全員倒したことだし、早く帰らないと」


(嫌な予感がする。大丈夫か、紗黄?)


 グリードの最後の言葉が頭に響く。


『紗黄が無事だといいな』


「あやつの言葉、なにか引っかかるの〜。今からその鳥居をわし達の街に繋ぐ。早よう行け。お主一人だけなら送れる。あのグリードに乗っ取られていた依代と凪はわしがなんとかするから心配するな」


 橙乃も同じことを思っていたようだった。


 走り出し、鳥居の前に来ると、空間が歪む。


「すまん!助かった!」


「紗黄のこと、任せたぞ!言い忘れておったが、ワープをするときに時間のズレが起きておる!気をつけろ!」


 橙乃は鳥居に向かって走り出した俺に後ろから言った。


「了解!」


 条件反射というべきか、なにも考えずに返したが、時間のズレ?ここに来るまでにワープしたが、もしかして時間ロスった?


 もしかしたらの判断ミスに思いを巡らせながら鳥居をくぐり抜けると、そこには夕暮れ時の俺たちの街が広がっていた。


(あいつ、言うの遅いな?結構時間飛んでるぞ、これ)


 山の上にある神社、ここから学校までは走っても二十分はかかる。今は紗黄を探さなくては。階段を降りる時間すらもったいない。『神化』した能力をフルで活用し、ここから見えた自分の学校の屋上に移動する。


 校門ではみんなが下校しようとしている。だが、そこに紗黄の姿は見当たらない。この時間なら、もう紗黄は帰ってしまっている。いつも下校しているルートを探してみると、そこには山崎と一緒に帰っている紗黄の姿を発見した。その後ろの方向に、古河(こが) 涼介(りょうすけ)篠本(しのもと)菜華(さいか)綾西(あやにし)結月(ゆずき)の三人がいる。


 人通りの少なくなってきた時間帯に、紗黄と山崎の二人は寂れてしまった商店街に向かっている。嫌な予感しかしない。


 そして、その予感はやはり的中した。二人が商店街に入るとすぐに黒塗りのバンが4つある出口付近に全て止まる。菜華たちは中に入ろうとするが、車に邪魔されてそれを拒まれる。車から黒い覆面を被ったやつらが中に入っていくのがかろうじて見えた。


(これはまずい)


 そう思った俺は商店街の入口に止めてあった車の上に転移する。


「拓真先輩!?どうやってここに。いや、それよりも中に紗黄先輩が────」


 いきなり現れた俺に動揺している涼介と二人だが、今はそれにかまっている時間すらもったいない。


「三人とも、こっちだ」


 俺は手を差し出し、すぐさま来るように言う。 


「もう時間がない!早く」


 車を乗り越えて四人で商店街に入ると、出口に止めてあった車で逃げ道を失った紗黄と、山崎がそれに近づく姿。そして逃げ道を無くすために横に一直線に並んで立っている十人の男たちがいた。


(刀を使えるのは残り数秒だけ)


 残り僅かな妖力を使い、紗黄以外の全てに狙いを定め、斬撃を放つ。横向きに振った刀から放たれたその斬撃だが、それはたった一人の者だけを気絶まで追い込んだ。全員が背中を見せていたというのに、一人以外全くと言っていいほど油断も隙もなく、それを回避してきた。


 残った妖力は正真正銘、斬撃を一度か二度飛ばす分だけだ。封印の解除とは別に妖力を使うため、もう刀を長時間は使えない。


「私達が雑魚どもを片付けます」


 俺から見ても、雑魚とは思えない者たちを雑魚と言い切る菜華。能力は知らないが、腕に自信はあるようだ。


「任せてよ!先輩」


 相変わらず結月は軽い雰囲気だが、菜華と同じく手伝ってくれるみたいだ。


「拓真先輩、早く紗黄先輩、助けてあげてくださいよ!」


 涼介は俺にグッドを見せつけて言った。 


「────応!」


 ここでうじうじしてるのは、男じゃないな。


 紅も、橙乃も、涼介も、菜華も、結月も、瑞稀さんも、凪さんも。全員が俺に力を貸してくれている。みんなを信用してここまでこれた。最後の締めは俺がやる。

設定:

・橙乃のワープで本来すぐさま伏見稲荷には行けましたが、飛ぶ距離や人数に応じて必要な妖力が変わるため、最初は使えませんでした。

・拓真が最後に放った斬撃は、速度が遅かったため反応された。

作者のコメント:


さよならグリード。ついに決着が着きました。完全にやつは死んでます。実は生きてましたとかはありません。


約四ヶ月かけてここまでこれました。ご愛読ありがとうございます。こんな事書いてますが、まだまだ続きます。


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