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第32話 再臨

毎日投稿続行

(やっと会えたね、神威さん)


 何度もこの人に助けられてきた俺だが、一度も見たことも話したこともなかった。いつも俺と入れ替わるようにして体を使うため、こうやって俺が主導権を握ったまま、魂だけを浮かび上がらせられたのは、俺自身が少し強くなったからだろう。魂の器に、神威さんを乗せる余裕ができたのだ。


《神威でも瑛司でも好きに読んでもらって平気だ。今はそれよりも、こいつを倒すことに集中しよう》


 そうだった、神威さ……神威の言う通りだ。今は悠長に会話していられる状況じゃない。『妖気』が使えない今、流石の神威でも一筋縄ではいかな────


《!?俺の『霊力』に飲まれるな》


 慌てた様子の神威の言葉と同時に、体の内側から燃えるような熱さを感じた。心臓が勢いよく動き始めたのを感じたかと思うと────


 熱い熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。


《落ち着け、紅。心を鎮めるんだ。熱さに意識を向けるな。己の体にまで意識を集中させろ》


 この状況下でそんなこと……いや、やるしかない。まずは心を鎮める。これは本当の熱ではない。イメージに近しいもの、つまり、幻想だ。まやかしに騙されるな。落ち着け。心を律しろ。 


 すると。さっきまで嘘のように熱かった体が急に落ち着いていった。そしてそれと同時に今までにない力が俺の肉体に流れているのが分かる。妖力とは違う、また別のエネルギーであるそれは、俺の体を今までの何倍もの力で満たしている。


《それが『霊力』。妖力よりとは比にならない強さを秘めたエネルギーだ》

 

 これさえあれば妖力がない今の俺でも簡単にあいつを────


《無理だ。そんな一筋縄でいくような相手ではない。やつは『闘気』を操っている》


 なんだそれは?初めて聞いた。『闘気』……聞いた感じだと、妖力とかそっち系の力だとは思うのだが、いまいちピンとこない。


《『闘気』とは意志の力だ。俺が生きていた時代では、強者は必ずと言っていいほどそれを身に着けていた。自分の意志の力を、エネルギーに変えるという技術で作り出されたそれは、妖力と同等のもの。使い慣らせていない『霊力』だけではやつには勝てん》


 ならどうすれば。いや、俺には神術だってあるんだし余裕なは────


────髪の毛が僅かに切れた。右の耳から少し血が出た。俺の右腕は、俺の意思ではなく、彼の意思で動かされた。それにより、俺は死を免れた。


《やつの攻撃は妖力や霊力だけでは防げん。防げたとしても、効率が悪いんだ。だから、お前には『闘気』を覚えてもらう》


 今の一瞬で理解させられた。この二人の格の違いに。あの月村とか言った男、まったく動作が見えなかった。構えから攻撃に転じるまで、瞬きの間に行われたのではないか。それほどの速さだった。


(『闘気』か。具体的にどうイメージすればいい?)

《簡単だ。自分の感情を整理してみろ。そして、お前が何をしたいのか。それを明確にすればいいだけだ。それまであいつの相手は俺がする》


 俺の肉体は、動き始めた。そして俺は、意識を自分の内側に集中させる。


 懐かしい。俺が初めて師匠と特訓したときも、こんなふうに教わったな。いきなり技を使ってみろとか、意味わかんなかったし、死んだかと思ったし。いろんなことがあったけど、ここ半年くらいは最高に楽しかった。心からそう思えた。


 俺の目的はあの日から変わらない。ただ一つだ。俺の友達が笑って生きていけること。そのために、俺は俺を奮い立たせてきた。


 戦う目的は決まっている。あとは力だ。俺に従えよ、『闘気』とやら。


 変化が起こった。最大限まで研ぎ澄まされた感覚が、更に鋭くなったのを感じる。それと同時に、自身の周りの空気に、世界に、何かがあるように感じる。決して目には見えない何かが、たしかにそこにあるように思えてならない。


《それが『闘気』だ。お前はまだまだ伸びしろがある。『霊力』を使ったところで、俺がまたいなくなれば使えない。だから、お前にはそれを身に着けてほしかった》

(なるほどね)


 さすがは最強の陰陽師。先を見据えている。ありがとう。あなたのお陰で、俺はまだまだ強くなれる。


《礼はいいさ。勝とうぜ》


(応)


 妖力と同じように、体に『闘気』を纏わせる。イメージしろ、もっと鮮明に。この力を俺は使いこなす想像をするんだ。 


「ほう。オメェさんも使えるのかい?」


 俺が『闘気』を纏い始めたのを見て、月村は目を見開いた。面白いものが見れそうだ、ってところか?いいだろう。 


「ああ、見せてやるよ。俺()の戦い方を」


 俺は戦いの構えを取る。一瞬たりとも気を抜かない。そして俺はこの戦いで、また一歩成長してみせる。 


(行くぞ、神威)


《アシストは任せろ》

 

 挑むのは格上。だが、自然と恐怖はなかった。今この状況に、俺はひどく取り乱しているわけでもない。ただ、気分がいい。なぜだかわからないが、体が、心が、満たされている。見せてやるよ、俺達の全力ってもんをよぉ。


 足で地面を蹴る。速度は以前と段違いに向上しており、間合いに一瞬にして入り込む。『闘気』は近接戦闘がメイン、だろ?


《正解》


 『闘気』を右手に込める。練り上げて精度を高め、そのまま拳を叩き込む。それは両手でガードされたが、今までの戦いよりも威力が向上している。月村の体は大きく吹き飛ばされた。ダメージは決して少なくないだろう。これが、『闘気』。すさまじい性能だ。


「やるじゃねぇか、ボウズ。だが、遊びはおしまいだ。『居合 太刀』」


 月村は腕を構え、太刀を放つ。紅は何が起きたのかが見えていた。月村の手から放たれたエネルギーが、刃の形となり、自分自身に迫ってきている。威力、速さともに申し分はない。


《『闘気』は変幻自在だ。いいか?限界まで薄くそれを凝縮させろ。そして放て》


 神威の指示に従い、俺は右手を刀のようにしまい込む。


 イメージは、『風刃』のように、薄く、早く、そして強い攻撃。


「『居合 一閃』」


 俺の手から放たれた斬撃は月村の放った太刀よりも素早く、そして鋭かった。互いがぶつかり合い、そして斬撃が月村の腕を掠る。


「チッ。俺ぁ、けがをするのが嫌いなんだ。ここからは全力で行くぜ?『闘術 空歩』」


 月村の右足が地面から離れたかと思うと、それは空中で止まる。それに続くように今度は左足が。両足が地面から離れた。空間を自由自在に動き回りながら、月村は俺に近づいてくる。何度も技を打てればよかったのだが、俺の『闘気』はそろそろ底がつきそうだ。


《初めてにしては上出来だな、ここからは俺がやる。お前はその感覚を覚えておけ。妖力然り、闘気然り、流れを一度分かれば全てが成長する。流れというのは、こうだ》


 俺の肉体が、神威によって動かされた。俺がした『一閃』の構えと同じものを取った。だが、体に流れる『闘気』が凄まじい練度で練り上げられていくのが分かる。


「技とは本来こういうものだ。『居合 瞬光』」


 なんと言葉で表せばいいのか。俺の右腕から放たれた高密度の斬撃は、目にも止まらぬ速さで飛んだ。だが、それを感じ取ったのか、月村は手を突き出し「『封印』」と唱えたかと思うと、先程まであったはずの斬撃が一瞬にして消えた。


《これも防ぐとは、やつは相当な使い手だぞ。申し訳ないが、ここからは全力で活かせてもらう》


「『神装』天照大神(あまてらすおおかみ)


 自分自身の身体がなにかに変化したのが感じられた。人ではないなにか。それは俺の技量では未だたどり着けていない陰陽師の極みであり、最強が見せてくれた最高の技でもある。


《最後はお前がやってみせろ》


 神威はそう言って俺に肉体の主導権を戻してきた。神の羽衣を身にまとった俺の肉体は、熱いのに熱くない。なぜだか心が安らいでいく。


「月村、次の一手で決めるぜ?」


「そうかい。なら、受けて立とう」


 互いに出し惜しみはしない。最大高速度と最大威力で技をお見舞いする。


 俺も、月村も構えを取った。俺達の間に恐ろしいエネルギーが放たれているのを感じる。恐ろしく研ぎ澄まされた殺意と、研ぎ澄まされた感覚から、


「『居合 八華閃』」


 月村が一瞬の間に八つの太刀を空を踏み込みながら放った。先程までの斬撃を飛ばすのではなく、腕にまとわせた『闘気』で切り刻む攻撃。                    


「『居合 陽閃撃』」


 俺は迎え撃つようにして、一撃を放った。限界まで力を圧縮し、瞬間的にそれを放出することで威力を極限まで上げた一太刀。


 ────その結果は、


「ボウズ、お前ぇさんの勝ちだ」


 月村はそう言った後、血を吐いて地面に倒れた。そして、研ぎ澄まされていた感覚が徐々に落ち着きを取り戻し始めた。


 神威、また消えるのか?


《ああ、まだ起きれない。もう少しすればちゃんと起きるさ》


 そうか……今回も、ありがとな。


《いいさ、俺はお前の体に住まわせ────!?避けろ!!!!!!!紅》


 なんだいきなり!?慌てて俺は横に飛び出した。すると、避けたと同時に背後から凄まじい音と気配が感じ取れた。振り返るとそこには女がひとり立っていた。年齢は大学生くらいの女で、右手で月村の首を掴んでいる。


「殺されてくれればよかったのに」


 女は言った。


 誰が殺させるかよ。曲がりなりにも師匠の恩人だ。戦いはしたが、命を奪う気はなかった。だが、あの女は違う。殺す気だ。奴の気配がそう語っている。なんとかしねぇと、まずい。


《俺に任せておけ》


 俺の体はまたひとりでに動き出した。そして、俺が月村の間合いに入ったときよりも早く動いた体は、瞬時に女から月村を取り返して何らかの術を発動させた。


《紅。こいつ、やはり『改変』の影響がある》


 この人もグリードの影響下にあったらしい。自分の弟子を本心で殺しに来たわけじゃなかったことに俺は安心できた。だが、それと同時にグリードの天恵が思考にまで作用できることが確定した。これは厄介だ。正常化の判断は神威以外できないというのに、数が未確定。解除方法は


《その心配はない。この精神の『改変』は結構特殊らしい。試行錯誤した跡があった。多くて二人から三人が対象ってところだ。俺なら解除もできる》


 なら、ある程度心配しなくていいな。だが、これで一つ確定した。グリードは今すぐにでも殺さなければならない。もしもこれ以上被害が拡大すればもう誰にも止められなくなる。とりあえずこの人のは治ったんだなよな?


《ああ。触れれば治せる》


 神威でも近づかなきゃだめなのか。厄介だな。


「ねぇ、なんで邪魔するの?」


 女は視線をこちらに向け聞いてきた。手には何も持っていない。何を仕掛けてくる?


「まぁいいや。帰ろ。面倒くさいし。()()()()()()


 女はそう言いながら、背を向けて歩き始めた。


 は!?どういう意味だよ!?


「おい、待ちやが────」

 

 また一気に『闘気』で距離を詰めようとしたが、もう『闘気』が切れた。先程ので消費しすぎたらしく、駆け出すことしかできない。神威もまた沈んでしまったらしく、表面から消えたのを感じる。女まであと一歩のところで、その姿は瞬時に消えた。


 決着はついたが、謎は残った。


「あとは頼んだぞ、拓真」


 遠い地で今もなお己の望みのために力を振るう後輩の無事を紅は祈った。

設定:

・月村燿

-天恵『封印』

・手で触れたものの何かを封印する。能力を封じる場合は自身が使えるもののみを封印できる。

・空間に触れることで効果範囲を拡大でき、触れずに天恵を使用できる。

・神術などの、物理的に存在しないものであれば無条件に消滅できる。


作者のコメント:


これにて紅たちの戦いは終わりです。今後は最終決戦へと移ります。


もともと三章で終わろうと思っていたのですが、拓真と紗黄について少し書き残したことがあるので、四章で終わります。


謎の女はいずれ書く本編の方で出すキャラです。ぶち込みたかったので、最後にぶち込みました。

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[気になる点] 俺には神術だってあるんだし余裕なは これ の語尾(はな)?じゃない??
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