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第28話 沈む理性と浮かぶ獣

初めての連続投稿。


(これが瑞稀の言っていた使徒ねぇ?)


 拓真が拘束されている状況だが凪は冷静だった。瑞稀に「私の弟子がね〜先輩助けたいって言っててさ、今すぐ来れる〜?」と、酔っ払ったテンションで言われたが、妹の頼みだからとここまで来た。拓真くんを私が責任をもって守ると言った矢先にこうだ。ただ、写真を撮ってあるので一回分は耐えられる。焦らず冷静に対処を考えよう。


「死神、向こうの女をやれ」


(私狙い。まだ能力が未知数だから排除したいってとこか)


 そう考えながら『神機』を使徒にむけて構える。


(せめて、橙さん?のアシストだけでもしておかないと)


「『傷録』」 


 そう言って、カメラのシャッターをきる。


 今使ったのは、この神祝の能力で、いくつかあるうちの一つ。


 『傷録』写真を撮った相手の傷を五分間癒えないものとする。また、この能力は撮った写真が媒介になっているため、写真が壊された場合、能力が解除されてしまう。五分という時間だが、かすり傷ですら治らなくなるため助けになるだろう。


 二人が戦闘に集中できるように、私は走って距離を取る。本当なら拓真くんを助けたかったが、死神は複数の分神を作れるという。あの状況でこれ以上敵が増えるのを天秤にかけた結果、この判断を取った。


 神社の下の方に進んだ凪は、拓真たちが見えなくなったことを確認し辺りを警戒する。明かりが少ないため遠くまでは見えなかったが、見た限り私の周りには何もいなかった。


 ────上空を除いて。


 上から何かが空気を切って落ちてくる音が聞こえて直ぐに危険を察知する。上を見上げると、死神が鎌を構えながら電光石火の勢いで地面に落ちてきていた。すぐさまその場を離れ、落ちてきた死神から距離を取る。


 逃げはしない、ここで私が倒す。そう覚悟を決めたのと同時に、『闇』が私を囲んだ。


 空間の中は他の『きさらぎ駅』などの、自身が望んだ空間を作るタイプではなく、逃亡を防ぐことを目的とした檻のようなものだった。そのため、中には木などが外と変わらずに存在する。


(隔離か。まあ、これで向こうには被害が出ないね)


 自身の置かれている状況を整理する。死神に隔離されたのは良いとして、武器が今手元にない。神術は使えるが、やはり近接戦闘にも対処できるような武器がほしい。身につけていた小さめのバッグから、手帳型の写真ケースを取り出して中身をパラパラと確認する。そしていくつかの写真と霊符を取り出した。1枚の写真だけ手に取り、残りをコートの内ポケットにしまった。


「『灯火』」


 霊符を取り出して詠唱などを破棄した神術を使用する。近くに小さな火の玉が現れ、自身の周りをふよふよと漂い始めた。


(とりあえず妖力は温存する方向。危なくなったら能力で対処) 


 持っている写真をその火で燃やす。火が燃え広がると同時にそこから刀が現れた。これもまた神機の能力である。それは写真に物を閉じ込めることができ、それを燃やすことで取り出せるというもの。出てきた刀は呪具であり、子供でも名前だけは知っている『妖刀 村正』。その名は古くから恐れられており、最強とも名高い呪具となった。


 抜けば()()()()()()()となるが、それは一時的なものであり、なおかつ今は周りには敵しかいないのだから、()して問題ではない。


「『抜刀』」


 刀を鞘から抜き出すと凪の性格が一瞬にして豹変する。


(人じゃないから何も気にせず、ただぶっ潰してやる。さぁ、ショータイムの始まりだ。)


 さっきまでの冷酷やクールのような性格から凶暴性が剥き出しになり、狩りをする獣の状態となった凪。村正を持った今の凪は戦闘への飢えと引き換えに身体能力が著しく向上している。目にも止まらぬ速さで駆け出し、死神へと斬りかかる。鎌でそれを防いだ死神だが、押され気味である。


「次に来るとしたら裏だよなぁ?”」


 斬り合っていた鎌を左上へと弾き飛ばしながら、そのまま振り返り、斜め下に刀を下ろすとそこには死神の胴体があった。(やいば)がそれをするりと断つ。過去に紅が食らった挟み撃ちの攻撃に難なく対処し、反撃を入れた。


 死神は二体ではない。複数の分神を生成でき、それらは本体から指示を受けて行動する。また、それは倒したところで、さほどダメージにはならない。だが、今の凪にはそんなことどうでも良かった。ただ何かと戦い、それを斬る。それだけが幸福の凪にとって、いくらでも敵が出てくるのは願ったり叶ったりであった。それから何体もの分神と戦ったが、どれも凪に傷一つつけることはできなかった。


 この刀は斬れば斬るほど斬れ味が鋭くなるが、飢えが更にひどくなっていく。今の凪は後一歩のところで理性を保っているが正直限界であった。それと同じく死神も限界であった。何体もの死神が現れては消えるのを繰り返した。


 いくら分神だからといってダメージがないわけではない。死神はこれ以上の戦闘は避けるため、数十体の死神を複合し、更におどろおどろしい姿をした死神、『亡』を作ると、闇を解いて本体は逃走した。


「逃げんなよ”」


 本体を追いかけようとした凪であったが、目の前に瞬時に現れた亡に後ろへと吹き飛ばされ、15メートル先の木に衝突する。


「痛”ってぇな」


 死神からの一撃を初めて受けたが、傷は一切ない。それも『神機』の能力のおかげである。


 『記録』、拓真に使ったものと同じものを必ず凪は使用している。同時に使えるのは最大二枚の2人までであり、今は拓真と自分に使用している。『記録』は死亡するダメージを受けると破壊されてしまうが、それまでのダメージは写真が引き受ける。『傷録』と同じで写真が媒体となっているため、壊された場合も能力は解除される。


 ポケットに入れている薄型のケースの中を確認すると、灰だけがある。もともとそこに『記録』用の写真を入れていたが、たった一度で壊れたらしい。


「まずは一死か。とりあえず写真」


 写真を撮り、使い終わったカメラを空間にしまった。飢餓により情緒がおかしくなってきている凪だが、戦闘に関しての思考は正常であった。推測するにあの新しい死神の能力は触れた者の即死、遠距離技はないと信じたいが可能性はある。頭の中でここまでの言語化はできてはいなかったが、そのような考えを持っていた。


「斬りたい」


 そう口ずさみながら、凪は亡に狩人の目を向けた。


 亡は凪に視線を向ける。自身の能力を乗せた即死攻撃を食らったというのに何故か死なず、傷もない。しかし、攻撃は確実に当たっているため効果はあるはず。そのことを理解した死神は、新たな攻撃を画策していた。


 ベルを取り出した亡、それよりも早くポケットから写真を取り出した凪はそれを火の玉に当てて燃やす。写真から取り出したのは、5本の投げナイフ。凪は色々なものを写真に閉じ込めている。能力の対象外は、写真、写真をプリントアウトする紙、生物、重いもの、そして大きいものであり、同じものであれば複数を一枚の写真に入れられる。印刷用の紙はあと十枚といったところ。


「させるか」


 亡に向かって走り出しながら投げた5本のナイフは、ベルに向かったが今にも命中するというところでベルの音が鳴る。音が聞こえたのと同時に自分を写真に撮る。写真ケースの中で何かが崩れた音がした。写真が灰になったのだ。


 私はポケットに撮った写真をしまう。投げたナイフも手元にちょうど戻ってきたが、邪魔なため写真にしまい、戦闘に集中する。亡がベルの音に能力を使用し、私が音を聞くことで即死してしまうが、身代わりで耐える。亡はその後も何度か同じようにベルを鳴らしたが、『記録』の前ではなんの効果もなかった。


「オマエのベルは特別なだけだよね?だったらこれで終わりにしてあげる”」


 鎌の間合いに入り、片手で刀を横に薙ぎ払う構えを取る。村正を右手で持っているため、左手で呼び出したカメラをキャッチする。レンズをベルに合わせて、ボタンを押す。


「これでもうベルは鳴らせない」


 『神祝』などの特殊な物でなければ、『空録』はほぼすべての物を強制的に写真に閉じ込められる。邪魔となったカメラは印刷途中の写真とともに投げ捨てられ、空間にしまわれた。


 片手で構えていた刀を両手で握る。


「あんたの出番はこいつで終わり 斬れ、村”正”!」


 ベルに気を取られて反応が一歩遅かった亡は、まともな回避や防御もできず、胴体を真っ二つにされた。万が一の保険として、亡の写真を撮ったときに凪は『傷録』を使用しているため、こいつは回復ができない。案の定、回復することもなく、亡は祓われた。


 斬りたい、何かを無茶苦茶にしたい、戦いがほしい。飢餓が理性を塗りつぶすまであと一歩のところで、凪は刀を鞘に収めた。


「あぶないあぶない」


 後わずかでも遅れていたら、もう自分の意思では鞘に戻せないところだった。本体には逃げられてしまったが、何はともあれ生き残った。


 『村正』は斬れば斬るほど飢餓は強まるが、鞘から抜いている間も飢餓は進む。飢餓状態は時間経過か、刀を鞘に戻すことで進行は止まり、徐々に回復するため、一旦は落ち着いた。理性は戻っているが、今すぐにでも使えば飢餓状態は限界一歩手前なため、刀は使えない。だが、さっきの場所に戻る間にまた使えるようになるだろう。


「それよりも、早く戻らないとまずい」


 凪は拓真たちを目指して闇の中を走り出した。

設定:

『妖刀 村正』

・人々に呪われて呪いとなった呪具。

・戦闘に飢えた獣=戦闘狂。敵味方関係なし

・斬れば斬るほど鋭さが増す


『神機 空録』

・『憶録』写真に撮ったものや場所に共通する自身の記憶を写真に込めることができる。

・『閉録』撮った物を写真に閉じ込める能力。写真を燃やすことで取り出せる。対象外:「写真、写真をプリントアウトする紙、生物、重いもの、大きいもの」 

・『傷録』5分間、傷の回復が行われなくなる。写真が壊された場合解除。

・『記録』ダメージを一定以上(死)を受けると写真が壊れ、能力が解かれる。


・『型録』生物を撮ると----------------。妖力を込めれば込めるほど持続時間は強化、妖力次第で抵抗可能


・凪が投げたナイフ-呪具。投げると帰って来るが……



作者のコメント:


まだ内緒。


溜めたものはいつかは吐き出される。そう、この連続投稿のように。

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