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IF5 簒奪者

前の話の続きです。二章の五話付近と思っていただければ幸いです。


GW投稿四日目


4月27日,28日, 29日

5 月3日, 4日, 5日, 6日


上記の午前八時二十分投稿します

(十秒、それを凌ぎきれば体勢は立て直せるけど、)


 飛んでいった速度から計算して、十秒もすれば拓真は戻ってこれるだろう。

 

 私自身それが現実的でないことは知っている。支援や中距離攻撃をメインとする者にとって、一対一でその時間を耐えきるのはきついだろう。『口裂け女』は拓真への攻撃で失った大型のハサミを右手に生成し、構えた。


(すでに準備が終わっている()()を使うべきか?いや、もしそれで決着がつかなければ、私達に勝ち目はなくなる)


 さて、どうしようか。


 この状況を打開するには、この十秒を耐え凌がなければいけない。だがそれには唯一と言っても過言ではない切り札を使うことになる。決めきれなければまけ。だが、やらなければ今負ける。


 今この瞬間、覚悟を決めるしかない。私がこいつを倒す。


「『炎の槍』」


 神術を発動し、作り出したのは槍。刃先は赤く、そして黒く光っているように見えるそれは、私の最後の手段。詠唱必須。効果時間も短いそれは、拓真に戦闘を行わせることで発動できる私達の決め手。『無効化』という攻撃力に変換し辛いそれを効果的に運用するために編み出した戦術。

 

 炎の熱を限界まで圧縮し、刃先にそれを込めることで絶大な攻撃力を持つ。妖力の残り的に、もって十秒。ちょうどぴったし、時間稼ぎに必要な時間分だけある。


「さて、本腰入れて一気に決めないと」


 今私がこの槍を使ったことで、拓真が戻ってきたとしても状況の改善は見込めないだろう。今ここで決着をつけるしかない。槍に命令を下し、自分は新たな神術を発動させる。


「『風の槍』」


 私が持っているもう一つの神術適正。炎と風、二種類の術を使い、槍を扱う。一本は自動で攻撃を行い、その隙に私が持つ風の槍で攻撃を決める。『口裂け女』は負けじともう一つ同じハサミを生成し、両方の手で攻撃を打ち返し、凌ぐ。


 攻撃と防御が入れ替わっている。


 残り五秒。私の槍がついに正面でぶつかり合う。炎の槍と同じく、風の槍の刃先には風が集約されており、風が物体を斬り裂いていく。


 残り四秒。二本のハサミで風の槍を受け止めてしまった『口裂け女』に、決定的な隙ができた。


 残り三秒。炎の槍の刃先がついに『口裂け女』の背後から核、心臓を捉える。


 もちろんこの間も『口裂け女』は抵抗したが、紗黄はそれを封じ込める。ハサミを片方投げとばし、炎の槍を回避しようとしたが、もう片方の手でも風の槍を受け止めているためにそれは叶わない。


 残り二秒。槍が『口裂け女』の肉体に振り下ろされた。


 炎の槍はハサミを弾き、『口裂け女』の武器を奪う。


 残り一秒。二本の刃先前後からが『口裂け女』の服に傷をつけ、僅かながらその肉体に届く。


「”双方 穿て”」


 『口裂け女』と決着をつけるための最後の命令。刃が僅かにでも進めば、その切先は心臓まで届く...


 なんとなくだろうか。私は上を見た。『口裂け女』に攻撃が届き、すべて終わると油断したからだろうか。いや違う。本気で暴れる様子のない『口裂け女』に、無意識の内で反応したのだ。ただ暗闇が広がっているだけの空。なにもないはずの空を見上げた私の目まであと数センチというところに、無数のギロチンが所狭しに落ちてきているのが見えた。すべて『口裂け女』自身には当たらず、私にだけ当たるように調節されたそれを避ける時間はないようだ。


 槍が先か、断首台の刃が私の体に落ちるのが先か。


 残り零秒 


 私の目の前に当たるあと一歩、閉じたまぶたに風が当たったかと思うとすべてが壊れた音が私の耳に届く。


「だめだろう?傷をつけては」


 ...はずだった。


 私の意識は、最後誰か男の声がすぐ後ろから聞こえてきたところで途絶えてしまった。

__________________________________________

 

 元の場所にたどり着いた俺が見たものは、王子様に抱えられる姫の状態。お姫様抱っこをされた紗黄の姿。さっきまで戦っていた『口裂け女』の姿は見えない。紗黄を抱えている人物は、夏祭りで会った『強欲』のグリード。


「グリード。お前、何を……」


 ああ、信じたくない。他の男が紗黄に触れたなど。


 ああ、腹が立つ。紗黄を守れなかった自分自身に。


 憤りを隠すことなくあらわにした俺だが、グリードは淡々と話し始める。


「見て分かるだろう?俺()()()()を回収しに来ただけさ」


(俺達?切り札?回収?もしかしてだが、以前から紗黄のことを狙っていた?)

 

 今の一言でいろんな疑問を持ったが、今はそんな余裕もない。未だ異界から脱出できていないことから、『口裂け女』はまだこの場にいる。一瞬でも気を抜けば確実にやられるだろう。本来いるはずだった與嶺原さんがいればまだなんとかなったかもだが、今の俺に一対二をする実力はない。


(死ぬ気でやってやるよ)


 この状況下では任務を放置して逃げるという選択肢も俺ならできるが、そうした場合、紗黄の行方は二度と分からなくなるだろう。グリードはあの祭りの日から一度も姿を捉えられていない。今この場の勝利条件は、『紗黄を取り返して逃げる』、『全員倒す』かのどちらか。さて、どっちにしろ、グリードとの対峙は避けられない。倒したい気持ちは山々だが、俺の判断ミスですべてが終わる。


「何悩んでんの?来ないならこいつを殺すけど」


 グリードはいつの間にか右手に持っていたナイフを紗黄の首に添えながら言ってくるが、拓真はその発言に慌てる様子を見せない。

 

「だったらさっき殺してるだろう。もっとマシな嘘つけよ」


 無我夢中で紗黄を助けに行きたいが、そんなことをしても全く意味がない。むしろ最悪の状況を引き起こしかねないため、拓真は淡々と、怒りをなるべく抑えながらグリードに言い返す。


「あ〜!そうなるか。ならこいつはお前に返すよ。ほらっ、受け取れ」


 そう言ったグリードはいきなり紗黄を投げ飛ばす。いきなり投げてきたため、さっきまでの張り詰めていた意識を切り替えるのに時間がかかったが、すぐさま紗黄を受け取ろうと体勢を整えた。


 今この瞬間にグリードが攻撃してきてもいいように、俺はグリードからも視線は外さない。紗黄はまだ意識を失っているが、ぱっと見、外傷はない。


 空を舞っていた紗黄は無事に俺の腕に収ま...らなかった。腕に収まるまであと一歩というところで、俺の首と胴体で真っ二つに切断された。


 グリードに意識を向けていた拓真だが、紗黄を本当に無事に帰すような行動を取ったため、僅かながら、いや、完全に緊張が解けてしまった。紗黄を投げ渡したグリードは、意識が完全に紗黄へ移ったことを確認した後、ナイフを投げ、拓真の守りをすぐさま『改変』し破壊。待機させていた『口裂け女』に斬首台で拓真()()()殺すように命じた。守りを破壊した後に攻撃され、拓真は抵抗する間もなく死んだ。


 人の力()()ではカミに勝てない。その事実は不変の真理であった。


__________________________________________ 

 『嫉妬』『傲慢』『怠惰』『憤怒』『強欲』『色欲』『暴食』。


 七つの大罪にとっていかなる生物も道具以上の価値を持たない。


 罪の重さが低い順からこの世に現れ、消えた大罪を埋め合わせるように新たな使徒がこの地に降り立つ。


 その魂が宿る器を他の大罪が壊すことはない。


設定

・怪異を倒すには体の何処かにある核(魂)を破壊する。もしくは体を構成している妖力を無くすかの二択です。

・紗黄は炎の槍と風の槍の詠唱を同時にしていました。


作者のコメント

約一ヶ月ほど遅れたエイプリルフールネタですが、無事に投稿しました。


元々書こうと思っていた幕間と閉話は『空想世界』の中で紗黄VS強欲が戦う話だったのですが、今回の12,13で紗黄の天恵について触れることができたので、別のものを投稿する予定です。一応『空想世界』の話も考えてはあるので、書くときが来たら書きます。


2章11話で、紗黄の中から拓真の記憶だけが消えたと書きましたが、その部分を削除しました。


拓真がグリードに無抵抗で斬られた理由ですが、紅から「死の間際に能力が『覚醒』することがある」と聞いていました。ですが、それは上手くいかず、とある人の力で『覚醒』(プラスα)する事ができました。だから、あの空間で拓真は死んだのか。と、嘆いていました。

『覚醒』だけしたところで、グリードに負けていたので、助かったのは奇跡だったというわけです。

 


今後とも宜しくお願いします。

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