表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/55

第18話 最強の天恵

「そして補足だが、紗黄は僕に敗北した」


 俺はその発言の真偽を淡々と理解してしまった。それは嘘ではなく、ただ、すでに起こった変えることの出来ない事実であると。


「紗黄は、最後に、なにか、言って、たか」


 今にも目から流れ落ちそうになるものをぐっとこらえ、精一杯の声を出してグリードに問う。事実を受け止めて前に進まない限り、俺は何もできなくなってしまう。その実感から逃れようと俺は声を出した。


「教える義理はないね」


 堪えていた感情が、悲しさや寂しさというものではなく、怒りや憎しみという感情が。俺の心から溢れ出す。そのときわずかに心臓から温かい何か、妖力に目覚めたときに感じたものと同じような力が流れ出した気もするが、それはすぐに消えた。


「俺はお前を”許さない”。ここで殺す」


 俺は強欲に言った。


「我らが主、『カミ』のために、『拓真』、君のことはここで殺させてもらう」


 強欲は『拓真』に言った。『人』という、種族を示すものではなく、一個人として相手を認識していることの現れがそこに出ていた。


 『人』は本来『カミ』の使徒である自分たちに攻撃も、防御もなにも出来ないと思っていた。だから、取るに足らない存在で相手にする価値もない、はずだった。


 ただ、目の前の『拓真』という男には何か可能性を秘めている、そんな自分自身さえも気づいていない予感からグリードは名前を覚えていた。


 決闘が始まる。


 俺は怒りで我を失いそうになるのを抑え、全神経を集中させる。紗黄を失った俺に残っているのは、この胸から全身に広がる怒りと悲しみだけ。


 ただそれも今の俺には不要だ。意味も、理由もいらない。俺はただ、今この瞬間も動く気配のしない男、グリードを倒すだけだ。


「お先にどうぞ?」


 右手でこちらを誘うような動きをし、挑発をしてくるグリード。先手をもらえるというのなら、それを受け取らない理由はない。


 グリードの後ろに『瞬間移動』をし、概念的な防御を『無効化』してグリードに殴りかかった俺だったが、その右手は無抵抗のグリードに届く前に”何か”に阻まれる。壁、というよりは近づけない”何か”がある。痛みはなく、風船のような”何か”。それに攻撃が防がれたことを脳が認識するよりも早い速度で回避を取った俺。


 また俺の頬には傷がついていた。その前に見えたのは、手元でナイフをわずかに動かしたグリードの姿。

 

 またも俺の攻撃の『無効化』を通り抜け、グリードの攻撃は俺に届いたらしい。だめだ、相手の天恵が予測できない。


 紅に奴の天恵を教えてもらった記憶はあるが、あれは数ヶ月前の夏祭りのもの。怪異に初めて触れたときに聞いたため、色んな初めてを味わいすぎて、思い出すことが出来ない。


「僕の天恵が分からないって顔だね。教えたところで僕の勝利は変わらないし、僕は優しいから教えてあげるよ」


 グリードは俺に自身の天恵について、教えるという。今から殺す男に言ったところで自分の勝利は揺らがないという絶対の自信からきた慢心。今の俺ではグリードの攻撃から逃れることも、そう何度もできないだろう。わざわざ自分から教えてくれるというのだからと、俺は大人しく話を聞くことにする。


「僕の、いや俺の能力『改変』は、この世界に直接干渉できる最強の天恵!」

 

 この世界そのものに干渉するグリードの能力、それに勝てるのか俺は自信をなくす。それと、紅に聞いた言葉をなんとなく思い出しかけたが、あと一歩というところで出てこない。


「いつも周囲の攻撃を『改変』して、当たらなかったという結果に書き換えている。それと、この能力はお前達『人間』の天恵では対処が不可能。お前の攻撃は俺に絶対に届かない。そして、俺の攻撃は絶対に届く。つまり、君に勝ちはない」


 そうだ。そうだった。グリードの話を聞いて思い出した。俺はこいつに勝つことが出来ない。


 紅が言っていた、グリードの守り、そして能力を突破することは自分でも不可能だと。害をなす全てのものを無条件に弾くその守りは突破できない。紅の師匠は特殊な方法で攻撃ができたらしいが、それが可能なのは世界を探しても少ないらしい。


 勝てないと悟った俺は体制をすぐに立て直し、『瞬間移動』を行った後、すぐに駆け出した。


「そうか……。さてと、鬼ごっこだ」


 グリードの声が後ろから聞こえた。地獄の鬼ごっこが始まった。 


 俺が勝つための手段は、()()ない。 


 あのとき紅から聞いていた、確証のない方法。それに頼るしか今の俺には残されていなかった。

設定:

・ただの天恵では『使徒』のもつ天恵に対処できないです。

・紅から聞いたという方法は一か八かの賭けです。失敗すれば命を落とします。(まぁ、拓真は一度それには成功しているのですが)

・天恵の強化の段階

『覚醒』『神化』の予定です。

・グリードの一人称が僕から俺に変わっている=自分自身の欲をすべてむき出しにしている状態


作者のコメント:

ネタバレみたいなものですけど、グリードの天恵は神化したものではないと対抗できません。いやぁ、いつになったら神化を出せるのやら。


拓真の精神的な移り変わりは、紗黄に危害を加えられた怒りでグリードに攻撃しようとしたけど、実力差を悟って諦めたという感じです。


毎週金曜日、午前7時20分ごろ(起床時刻)に投稿します!楽しみ待っていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ