~点呼確認~
“扉”がそこかしこに乱立する、白い空間――“部屋”。
【調律師】が導いてきたものたちは、ここで一堂に会する。
「全員、揃ったー?」
【虚の逃亡者】
一人称:俺
『逃亡結果』からやってきたひと。
家族や友人たちから逃げて旅しているうちに死んでしまったらしい。
……ところで【観測者】には【逃亡者】はどう写っているだろうか?
ファンタジックな旅人の装いだろうか、それとも現代的なバックパッカー?
どっちでもいいよ? そういうものだから。
【世界に仇為した世界樹】
一人称:ぼく
『天然素材の人形遊び』から連れてこられたひと。
植物を操ることのできる不思議なチカラを持っている。
……植物との対話、ではないらしい。
【世界樹】と、植物の関係性がどうなるのか?
答えはトーガと同じ色をした、“部屋”で齎されるだろうか?
【純粋渇望のアポロ】
一人称:オレ
『ツクヨミ・ユースフル』から飛び込んできたひと。
認められる感覚を持てなかった中坊の末路である。
……本当にそうだろうか?
どちらにせよ、和装の【アポロ】は“部屋”に居る。
これから起きる出来事が、答えを照らし出すと信じて。
【純白の剣】
一人称:
『不変と変遷』から持ってこられた剣。
遺骨からつくられ、血を吸って吐く、真っ白な魔剣である。
“調律”によって、吸い尽くすということはなくなったらしい。
……この剣には、意志があるのだろうか?
もしそうなら、この剣を振るうのにふさわしい者は――
【愚盲の兄】
一人称:僕
『たからもの』から訪れてきたひと。
良くも悪くも直情的、かなり大雑把なところがある。
その性格の所以は、海の男だからなのか?
妹のためなら何でもすると決めているからなのか?
……それでも、行動力だけは抜群にある。
【露出狂】
一人称:俺、自分、コッチ、etc……
『露出狂の部屋』から来たらしいひと。
……誰だコイツ!?
一応、こんな名前ではあるが、服は着ている。
キャップにパーカー、ジーンズにスニーカー。普通の格好。
「1人だけ順番飛ばすのもなんか変かな? って」
【待ち焦がれる兎】
一人称:私
『鉄と真綿の少年少女』から連行されてきたひと。
[兎]の蔑称は、媚薬によるものだ。
その蕩けた理性で、ふたりを繋ぐ真綿は破かれた。
だが新しい鉄の約束が、【ウサちゃん】を繋ぎとめるだろう。
……心を燃やすための料に、何を差し出すか?
【最終兵器】
一人称:私(博士に対してのみ)、当機
全高:2m
『完全無欠の大義名分』より突入してきた人型兵器。
平たく言えば、博士が人類だけの抹殺を目的に造ったロボット。
5000年による感情の芽生え、それは即ち従順な兵器の死。
しかし、その感情が、まだこの機体を稼働させる。
……ところで、この機体はアンドロイド? それとも超合金ロボ?
【偽物の神】ヤルダバオト
一人称:私
『タペストリーとしゃべる蓄音機』から運ばれてきた蓄音機。
ターンテーブルに回るレコードなど、パッと見はただの蓄音機だ。
だがホーンから繰り出されるクリアな声が、意志あることを示している。
そしてその名の通り、【偽の神】として図らずもふたりを陥れた。
……金のメッキこそ剥がれたが、1:√3に基づいたホーンは美しい。
【境界線上の九十九神】
一人称:
『タペストリーとしゃべる蓄音機』で邂逅したひと。
片割れである五十嵐を食べ、境界線の上に立った四ツ葉。
そして言うまでもなく、【観測者】のことでもある。
その為に、ふたりには性別の無いからだで居てもらったのだから。
……【観測者】を逃がしはしない。最後まで付き合ってもらう。
【調律師】クレイジア
一人称:アタシ
金髪ポニーテールに首に引っ掛けたヘッドホン。
白いヘソ出しチューブトップの上に、黒地で金ラインの上着。
金の留め具がついた黒いスリットスカートの下に、白いプリーツミニスカ。
そして黒と金のリボンのピンヒールサンダル。
「【アイツ】の趣味全開ってワケ」
そして……
【神】
【命のデザイナー】
【脚本家】
【運命を定める者】
【恣意的な因果律の策定者】
【本能達を弄ぶ者】
【逆説的アカシックレコーダー】
……などと、目される者。
その姿は1人の老人であり、物言わぬ黒いモノリス1枚であり、ペンを握る手首の群体でもある。
――それが、“部屋”の中心で鎮座する、すべての造物主。
“扉”を、“世界”を、“物語”を、創った張本人。
赤子とも老人とも、男とも女とも、人とも機械とも取れぬ、すべてを内包した声音で、其れは問う。
「感想を、訊かせてもらおうか」
作者名にもこだわってたんですよ?