10月にコンサートに行くねん
「まあ、あんた、少ないな」
「そうか?」
「前は、月一回は行ってたやん」
「大阪とかいかへんからな」
「ほな芸文ばっかり?」
「そうよ。あれで十分や」
「プロの演奏はきかへんの?」
「あんまりいかへんな。演奏は確かに上手いけどな」
「曲は何?」
「前に紹介したやん『シェーラザード』。他にもマーラーの2番復活もあるねんけど
あれあんまり好きではないな」
「あ、鯨の大和煮の缶詰買おうかな?」
「なんで?」
「一缶500円やで」
「なんでまた?」
「おう、NHKで捕鯨の番組やっとってん。そやからわいも食べようと思うたんや」
「反捕鯨団体とかあるやん」
「あいつらアッホやで。ポール・ワトソン白鬚ぶた、あいつら日本だけに文句言うねんで」
「ほんまかいな?」
「そうよ。捕鯨をしている国々には、ロシア、日本、インドネシア、ノルウェー、アイスランド、フェロー諸島(デンマーク自治領)、セントビンセント・グレナディーン、カナダなどが挙げられる。日本ばっかり文句言うねん。アッホやで!」
「ほんで缶詰買うん」
「うん、500円や。食べてあげないと鯨が可哀想や」
「もうすぐ原爆の日やな」
「そやな。いややな」
「俺、『原爆の子』の絵描いてん。それに対して、アメリカの絵描きの人が反論してきたので
俺も言い返したわ。」
「なんて?」
「向こうは原爆のおかげでアメリカ人の兵士沢山助かった、って言うねん。
そやから、房総沖に連合軍が集結してるから、それで負けてる、って言うてん。
それがきっかけになって絵画倶楽部から追い出されたわ」
「そらそうやわ。アメリカ人が嫌がるもん出すからや」
「いやあ、俺はこの絵気に入ってるねん。アメリカ人が嫌な思いしたやろ。それでよかったと思うわ」
「あんた、喧嘩しに行ったん?」
「いや、例えばこの『原爆の子』の映画に出るって言うたら、乙羽信子さん周囲から反対されてん。
つまり、これは汚れ役だから。普段宝塚でお姫様とかやってる人がそういう厳めしい役を
するというのが、反対されてん。でも俺が描いたこの絵は、乙羽信子さんみたいに別嬪さんやないやろ?
それがええねん。後ろの原爆ドームも歪んでるやろ?それがええねん。
だから気に入ってるわ。『原爆は正当ではなかった!』って日本人の一人として、直に訴えることができたのは、正しかったと信じてるよ」
「あ、あんた珍しく真面目な事言うなあ。信じられへんわ(笑)」
「終戦記念日も近いし、『日本のいちばん長い日』でも一緒に見ようぜ。
「さあ戦争の話もしたし、海水浴行こうか?」
「あんた、カナヅチやろ?大丈夫かいな?」
「大丈夫や」